モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり

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四章 家族一緒に

第17話 マリーの試練②

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 浅海さんの役に立ちたかった。
 だからあたしは、浅海さんに掃除や料理の仕方を習った。

 浅海さんはどんな失敗をしても笑い飛ばしながら、いろんなことを教えてくれた。

 4年生になった時、浅海さんはカレーの作り方を教えてくれた。

「ねえ、おいしいカレーの作りかったって知っている?」

 あたしは首を傾げた。

「おいしいカレーの作り方と、小説の作り方って実は一緒なの」

 小説の作り方? 売れる小説って……。わかった!

「オリジナリティを出すこと!」
「残念。ここを見て」

 カレールゥが入っっている箱の後ろを私に見せた。

「ここに書いてある通りにつくることよ。出来上がるまで勝手なことはしない。基本にのっとって材料を集め、順番通りに作業するの。簡単でしょ」

「だって、それじゃあ誰が作っても同じ味になるじゃない。小説と一緒なんでしょ。おんなじ小説なんて価値がないよ」

 あたしはわけがかからなかった。

「そう思うでしょ、でもね、同じに作ったつもりでも、各家庭でなんでか味が変わるのよ。お肉の部位がちがったり、切り方が違ったり、ちょっとしたことや癖で本当に変わるの」

「そうなの?」

「それに、思いも込めるからね」

「思い?」

「そう。面取りっていってね、お芋が煮崩れて小さくなってしまわないようにひと手間かける。そこまでしなくても、材料の大きさをそろえる。それだけで味は愕然と変わる。おいしいものを食べて欲しいって思ったら、なるべく新鮮な野菜やお肉を選ぶ。適当に作ったものと違うと思わない? 焦げないように注意するとかね」

「そうですね」

「思いは形に現れるの。感情は料理の味に響く。そして基本は道を外さない絶対の真理よ」

 そう言って、半箱分の材料を用意した。

「じゃあ、ジャガイモを水であらって。あたしは玉ねぎを切るから」

 浅海さんと一緒に作る時間は幸せだった。コトコトと沸騰する鍋のあくを取る。

「ルゥを入れる時は必ず火を止めてね。火をかけると小麦粉のデンプンが変化始めるからダマになるの。溶け切るまでゆっくりかき混ぜて」

 ゴムベラで具材を崩さないように丁寧に混ぜる。
 おいしくな~れ、と思いを込めた。

「上手よ。心がこもっているのが、すごくわかる」

 ほめられ続けながら作ったカレーができた。

「これが、丁香家特製、基本のお家カレーよ。さてと、ここからがオリジナル。辛いの苦手な麻里のために、辛さを控えめにして見ましょう」

 そう言って浅海さんは、牛乳とハチミツとバターを出してきた。

「ハチミツは甘味。バターはコク。牛乳は辛さを抑える成分が入っているの。基本がしっかりしたおいしいカレーだからこそ、アレンジしてもおいしいのよ。小説のオリジナリティも一緒。スポーツも一緒。勉強も一緒。人生も一緒よ」

「人生も?」

「そう。素敵な人生の基本は笑顔で生きることよ。つらい時や迷った時は、おいしいカレーを食べて思い出しなさい。基本が大事。アレンジはそれから。笑顔が生きていくための基本なんだよ」

 出来立てのカレーを半分別の鍋に移して、浅海さん特製甘口カレーが作られていった。

「さあ、食べましょう。ご飯よそって」

 熱々の真っ白なご飯に、熱々の茶色いカレーがかかる。

「「いただきます」」

 甘口カレーは、懐かしくて甘ったるい、とっても幸せな味がする、我が家のお家カレーだった。



 ………………浅海さんの事、本当は「お母さん」って……呼んでみたかったんだよ。
 本当に、大好きで……大切な人だった。



 浅海さん、ありがとう。


 そうして、つらく、幸せな記憶と共に、もとの場所に戻っていた。
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