モンド家の、香麗なギフトは『ルゥ』でした。~家族一緒にこの異世界で美味しいスローライフを送ります~

みちのあかり

文字の大きさ
16 / 21
四章 家族一緒に

第16話 マリーの試練①

しおりを挟む
「ようこそ、転生者」

 なんで? 何であたしが転生者って知っているのよ。

「早速だがお前への課題を与える。『記憶の解放』さぁ、始めよう」

 どういうことよ。
 その瞬間、あたしの意識が飛んだ。



 小学2年生のあたし。今のリューくらい。部屋の中でうずくまっている。
 あたしは、目の前にいる小さなあたしの体に取り込まれた。

 少しだけ思い出した。大人のあたしの感情が、どんどん子供に戻っていく。


 わたしのおとうさんは、さいていなひとだった。
 おこる、どなる、すぐになぐる。

 そしておかあさんを、かってに



 お葬式もあげないまま、お父さんとお母さんの体はどこかに行って無くなった。
 親戚が集まって、私を誰が育てるか話をしている。
 あたしは二階に閉じ込められたけど、声が大きいからほとんど聞こえていた。

 この家を売って、両親の保険金を足せば、借金は無くなりそれなりの金額が残る。
 だけど、あたしを引き取るのは体裁が悪いし、子供に影響しそうだ。

 大人の私ならそんなことがわかってしまう。あの時は、みんなに嫌われたって思っただけだった。


 おかあさんがいなくなってつらい。おとうさんがいなくなってうれしい。
 あたしは、みんなにいらないこだっておもわれている。
 いなくなりたい。きえてしまいたい。


 そんなことしか考えられなかった。



 もらえる金額と無用なトラブルを秤にかけたのだろう。金はあきらめ施設に送ろうと決まったら、今度はお父さんとお母さんの悪口が始まった。


 ききたくない。ききたくない。ききたくない。


 その時、お母さんの妹の浅海《あさみ》さんの怒鳴り声が聞こえた。

「いい大人がグダグダ悪口大会ですかぁ! 姉さんは男運が悪かっただけ! なんであんたらにそこまで言われなきゃいけないんだ! 葬式だって出してやりたかった。それなのに、みんなで反対しやがって。麻里だっていい子だよ。あんたらのガキに爪の垢でも飲ませた方がいいんじゃねえのか! もういい、麻里はあたしが引き取る。あんたらとは金輪際関係しないでやるよ。親子だろうが親戚だろうが、まとめて縁切ってやる。だから麻里をあたしによこしな!」


 わたし、いきていても、いいの?


 浅海さんは、「どうせ金が欲しいんだろ」とか、「作家なんか目指して、現実を知らないから」とか、「子育てなめてる。すぐに音を上げるさ」などと散々になじられたが、どかどかとあたしのところに来て、「行くよ、麻里」とあたしの手を引いてこの家から連れ出してくれた。



 浅海さんは、保険金とお父さんの家と自分の家を売って、南関東から遠く離れた、東北の日本海に近い小さな町に引っ越した。

「新興住宅街のお家だから、よそから引っ越してくる人も多いし、ここでは誰もあなたの事を知らないから、あたしと一緒に楽しく生きていきましょう」

 浅海さんと養子縁組をし、苗字は丁香に変わった。

「お母さんってよんでもいいんだよ~」

 浅海さんは笑って言ったが、お母さんより5歳も若いまだ20代で独身の浅海さんをお母さんっては呼べなかった。

「浅海さん? ま、いいか。最近名前で呼び合う親子も多くなったしね」

 浅海さんは、ネット小説を書いてデビューしたばかりの、新人小説家だった。

「小説なんかどこでも書ける。打ち合わせもネットで充分」

 そう言って、私に付き合ってくれた。せっかくだからと軽自動車でお出かけもした。古い洋風建築の博物館や、クラゲがいっぱいの水族館。長い石段を登って神社をお参りしたり、温泉に行ったり。海、山、映画、芋煮会。色々連れ出してくれた。

 私がいじめにあった時は本気で怒ってくれた。相手の親に怒鳴り込みに行って、二度といじめが起きないように学校とも交渉してくれた。



 浅海さんはあたしに言った。

「いじめられたり、馬鹿にされたり、大嫌いな人が『お前はダメな奴だ』とか『そんなの夢だよ』っていって攻撃するだろう。そんな時はどうしたらいいと思う?」

 いじめられていたわたしは「わからない」って答えた。

「そんなときはね、『復讐してやる』って思って頑張る気持ちを奮い立たせるんだ」
「復讐はだめって先生が言ってたよ」

 浅海さんは笑いながら言った。

「確かにいじめ返したりいじわるしたりする復讐はダメだよ。でもね、いじめた人が一番嫌がるのは、いじめていた人が、楽しく幸せに暮らしている事なんだよ。成功して人気者になることなんだ。それこそいじめっ子が近寄れないくらいにね。いじめの事はあたしら大人が止めてやる。二度といじめられないように、笑っていなさい。幸せになりなさい。あたしだって今は復讐の最中なんだ。麻里を引き取った時に文句を言っていたヤツらに復讐してやるんだ。作家で成功して、麻里が幸せに笑って暮らして、二人で幸せに暮らす。そのために麻里が笑えるように何でもする。だから協力して。私の復讐、一緒に頑張らない?」

 浅海さんが笑いながら言っているのに、私は泣いていた。
 ぽろぽろぽろぽろ、涙が流れた。

 うん。浅海さん。泣くのは今だけにする。だから、今は泣いていていいよね。

 浅海さんは、私を優しく抱きしめてくれた。


 わたしは、浅海さんのようになりたかった。だから、浅海さんのように「あたし」って自分を呼ぶことにした。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界ショコラティエの甘い革命~チョコレートが存在しない世界でカカオを育ててバレンタインを流行らせます~

黒崎隼人
ファンタジー
【2月14日はバレンタイデー!】 現代日本でパティシエを目指していた記憶を持つ少年ルカは、貧しい農村の三男坊として異世界に転生した。しかし、そこは「チョコレート」が存在しない世界だった! 砂糖はある、ミルクもある。けれど、あの芳醇で甘美な黒い宝石だけがない。 「ないのなら、作るしかない」 ルカは森の奥で嫌われ者の「オニノミ」がカカオの原種であることを見抜き、独自に栽培を開始する。発酵、乾燥、焙煎――前世の知識と魔法を駆使して、ついに完成した「ショコラ」。その味は、粗悪な菓子しか知らなかった異世界の人々に衝撃を与え、やがて頑固な父、商魂たくましい商人、そして厳格な領主や宗教家までも巻き込んでいく。 これは、甘いお菓子で世界を変える、少年のサクセスストーリー。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ
ファンタジー
「君のような無能な掃除係は必要ない!」 勇者パーティーからゴミのように捨てられた雑用係のハル。だが彼女には、前世で培った【家事のプロとしてのライフハック】があった。 ​移り住んだのは、誰もが恐れる『呪われた魔王城』。しかしハルにとっては、ただの「掃除のしがいがある大型物件」に過ぎなかった! 重曹とクエン酸で呪いを浄化し、アルミホイルで魔物を除け、ジャガイモの皮で伝説の鏡を蘇らせる。 ​魔法より便利な知恵で、お城はいつの間にか世界一快適な聖域に。 一方、ハルを失った勇者たちは、汚部屋と化した拠点と自らの無知に絶望することになり――。 ​これは、一人の「掃除好き」が知恵と工夫だけで異世界に革命を起こし、最高のスローライフを手に入れるまでの物語。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...