【完結】シロツメ草の花冠

彩華(あやはな)

文字の大きさ
27 / 36

マヤの告白4

しおりを挟む
 一度ミリア様の様子を見に王都から領地にお帰りになってきた旦那様や奥様には現状を話しました。
 ショックでミリア様を抱きしめておられました。

 そして、長い話の末、ミリア様の好きなようにしても良いとおっしゃったのです。
 旦那様は治療のためにベラニージ国行きの予定を立てるように指示してきました。
 同時に「聖女」のことも深刻にとらえ、国王陛下に進言するようです。

 どちらも内密に進めることにしました。

 サシャが「聖女」として大々的に公表されて一年もしていないのに、すでに「聖女」でなくなっているならば、それを認可した国王陛下の失墜にもなりかねません。
 ならば表向きは王太子殿下が解決すれば、王家の面目もたもたれるとか・・・。

 わたしにはよくわかりませんが、それが一番いいらしいです。

 ミリア様のお兄様であるバード様にも内緒な上、侍女やメイド、使用人のほとんどにも周知しないことになりました。
 全てミリア様が望んだことです。
 
 アルト様に知られるきっかけを作りたくないという気持ちが一番大きかったのでしょう。

 やると決めたミリア様の表情は瞼を腫らしたものでしたが、凛としたものでした。

 約束より遅れながらも王都に戻ると、内緒で再び聖女様の元へ行きます。

 治療を施してもらいましたが、ミリア様からは痛みは少しだけなくなったものの変わりがないと言われました。

 そして、ミリア様は聖女様・・・サシャに近づいたのです。
 さすがアルト様の婚約者でもあり、淑女としても認められているミリア様はすんなりとサシャの懐に入りました。

 治療院にも度々顔を出して、お手伝いします。
 伯爵令嬢が・・・遊び半分だと思う人もいましたが、ミリア様は深窓の令嬢というのではありません。
 やる時はやるお嬢様です。汚れ仕事だってこなします。
 なので、すぐに治療院にも馴染みました。

 学園も始まり、予定通りミリア様はサシャの隣にいました。

 学園内のことは学生同士のこととしてわたしは関与できません。
 そばでいたくても無理です。
 なので、帰りの馬車の中で一日にあったことを聞くしかありませんでした。

 帰ってくるミリア様は疲れ切っていました。
 馬車の中で泣きます。
 
 アルト様の声が聞きたい。触れたい・・・と何度も呟いていました。

 屋敷にアルト様が来ても追い返します。
 ミリア様はアルト様が帰るのを部屋でじっと耐えるです。わからないように窓からアルト様の姿を見送ります。震える身体を抱えて泣いていました。
 会いたいはずなのに、我慢しているのが可哀想でなりませんでした。

 でも自分が決めたことだからと、必死に押さえ込んでいるのです。


 そして、頭痛がひどくなっているようでした。
 わたしには隠していましたが、わずかに眉を顰めたり、額をさわったりする頻度が多くなっていました。

 この頭痛はミリア様を不安にもさせていたに違いありません。
 気丈に振る舞っていても時折、布団の中で涙を流されていたのを知っています。

「ミリア様・・・」

 ある時、制服に着替えてを手伝っている時に気がつきました。
 腰回りの服のサイズが合っていないのです。

 明らかにやせていました。

 病気で?いえ一番は精神的なものが一番大きいとは思います。

 優しい方です。悪役などできるはずがありません。
 それなのに、必死になって悪役になろうとしているのですから、ストレスになっているのでしょう。

 食べる量は・・・ベラニージ国で病状がわかった時にショックで一時的に食欲が落ちたのもあり気にかけていなかったので、見落としていたのかもしれません。

「わからないようにしてくれる?」

 気づかなかったことに落ち込んでいるわたしに気遣ってか優しくミリア様は言いました。

 わたしはミリア様の胴に布を巻いてからコルセットをつけます。
 コルセットはウエストを細く見せるためのものです。なのに、逆に詰め物をするなんてあり得ません。
 細い腰が痛々しく思えて、手が震えました。
 翳りを見せる顔色を明るくするためチークを濃いめにおき、口紅を鮮やかなものにしてゆきます。
 けばくならないように最新の注意をしました。


「もう少しよ」

 微笑むミリア様にわたしは何も言えませんでした。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結済】ラーレの初恋

こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた! 死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし! けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──? 転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。 他サイトにも掲載しております。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。

As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。 例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。 愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。 ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します! あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 番外編追記しました。 スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします! ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。 *元作品は都合により削除致しました。

本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**

鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、 突如として現れた「本物の聖女」。 空中浮遊、瞬間移動、念動力―― 奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、 王太子はその力に目を奪われる。 その結果、 王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、 一方的に婚約を破棄されてしまった。 だが、聖女の力は―― ・空中浮遊は、地上三十センチ ・瞬間移動は、秒速一メートル ・念動力は、手で持てる重さまで 派手ではあるが、実用性は乏しい。 聖女の力は、見世物レベル。 少なくとも、誰もがそう判断していた。 それでも人々は喝采し、 権威は少女を縛り、 「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。 そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、 ある違和感に気づき始める。 ――奇跡よりも、奪われているものがあることに。 派手な復讐はない。 怒鳴り返しもしない。 けれど静かに、確実に、 “正しさ”は明らかになっていく。 見世物にされた奇跡と、 尊厳を取り戻す少女たちの物語。 ---

母を亡くした公爵令嬢は、虐げられないが、今日も願いが叶わない

春風由実
恋愛
「何故お前が生きた?」 それは怪我をして長く眠っていたエルリカが、目覚めた直後に父親である公爵から掛けられた言葉だった。 「お前こそが、女神の元に行くべきだった!」 父親から強い口調で詰られたエルリカ。 普通の令嬢は、ここで泣くか、その後立ち直れなくなるという。 けれどエルリカは違った。 「あなたこそ、何をのうのうと元気にしているのですか?」 そうしてこの日父娘は、それぞれに絶縁を宣言した。 以来、母方の祖父母に引き取られ、侯爵領で過ごしてきたエルリカ。 ところが公爵は、いつまでもエルリカを除籍する手続きを実行しなかった。 おかげで名ばかりの公爵令嬢のまま、エルリカが王都へと戻る日がやって来てしまう──。

たのしい わたしの おそうしき

syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。 彩りあざやかな花をたくさん。 髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。 きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。 辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。 けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。 だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。 沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。 ーーーーーーーーーーーー 物語が始まらなかった物語。 ざまぁもハッピーエンドも無いです。 唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*) こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄) 19日13時に最終話です。 ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...