【完結】シロツメ草の花冠

彩華(あやはな)

文字の大きさ
26 / 36

マヤの告白3

 領地に帰りついたミリア様は部屋に閉じこもりました。

 ずっとそばでついていたくても、わたしにはミリア様からの調べ物があったので、そちらを優先することにしたのです。

 わたしはもともとは孤児でした。ミリア様に出会わなければもしかすればこの身を売って今も生活していたでしょう。
 わたしの友人たちや弟も「普通」の生活は送れていなかったかもしれません。
 ミリア様の支援があったからこそみんな「普通」の生活をしているのです。

 そんなミリア様に感謝しているので、協力を惜しみませんでした。

 わたしはミリア様から離れ、王都へ行きいつものように彼らに会いました。行くと、みんな「聖女」の噂を集めて待っていてくれたのです。
 
 誰も調べる理由を聞いてこようとしません。ミリア様を信用しているからです。
 
「ありがとう」
「何言ってるの。お嬢様の役に立つならなんだってするさ」
「そうだぞ。お嬢様がいなけりゃぁ、俺らは餓死してるか凍死してるわ」
「手に仕事をくれたしねぇ」

 笑いながら言ってくれました。

「マヤ。お嬢様によろしくね」

 泣きたかったです。
 ミリア様のことを話したくなりました。
 ですが、これだけはいえません。

 領地に帰り、ミリア様にまとめた報告書を渡します。
 
 みんなが集めた情報を読んだミリア様は目を輝かせました。
 久々の笑顔に嬉しくなります。

「これだわ」
「ミリア様?」
「彼女に加担して聖女でないことを暴くの」
「はい?どういうことですか?」

 意味が全くわかりません。
 
「おそらく彼女の「聖女」の力は失われつつあるのだわ」
「失われつつ・・・そんなことがあるのですか?」
「もともと「聖女」は信仰心のある女性から生まれるものなの。それは文献にも記載されているほどのことよ。でも今の彼女は金銭に目がくらんでいる・・・」

 そういえば、お布施によって態度が変わると、みんな言っていました。

「ですが、文献にも書かれているなら・・・、気づかれるのではないのですか?」
「たしか・・・彼女は田舎出身よね。田舎では教義なんて関係ないわ。生きていく中で当然のように神を崇めるものだもの。純粋に神を思い、祈っていたのでしょう。そんな彼女がいきなり王都にでてきて、贅沢を知れば・・・」

 神様なんて関係なくなってしまう・・・。

 わたし自身、お金で苦しんだ覚えがあるからわかります。お金があればあるだけ嬉しくなりました。目に見えない神様ではなく目先の利益が全てになるのです。

「戻れないものですか?」 
「その人にもよるわ。司祭様に確認しないとなんとも言えないけどで ・・・彼女は無理かも知れないわね・・・」

 集めた情報には聖女の家族についても少しありました。

 以前までしていた仕送りがすでにされていないと・・・。

 大事にしていた家族さえ忘れて、自分の欲を優先しているのでしょう・・・。

「このまま「聖女」として置いておくのは危険だわ。養子縁組をしたエレスト伯爵も王室に取り入ろうと前々から黒い噂がある方だし・・・。阻止すべきね」

 嫌な予感しかしません。

「ミリア様。どうなさるおつもりですか?」

 ミリア様は腫れた目でにこりと笑われました。

「聖女様にとりいって注目を集める。この私が彼女のそばにいれば嫌でも誰もが注目するでしょう?そうすれば、アルト様が彼女を調べると思うの」

 何で楽しそうに語るのですか?

「聖女様の悪事がバレると同時に私はアルト様に嫌われる!!そして婚約破棄ををされるの。ねっ!いい考えでしょう」

 にこやかに笑わないでください。余計に泣いているように見えます。

「何を言っているのですか!正直にお話になればいいじゃありませんか!」

 ミリア様は困ったように眉を寄せ首を振ります。

「そうでもしないと、アルト様は納得しないわ。きっとわたしが死ぬまでそばにいてくれるでしょう。弱っていく私を見て欲しくないわ。それに死んでしまった後、彼の方はどうなってしまうの!?抜け殻?後追い?そんなのは嫌なの。私はアルト様には幸せになってほしいの。だから・・・だから私を、・・・っ、嫌ってもらいたいのっ。」

 ポタポタと涙が溢れてきていました。

 きっとミリア様を大切に想っているアルト様ならありえることに思えてしまいます。

「本当にそれで・・・いいのですか?嫌われる覚悟があるの、ですか?」

 わたしもたまらず涙が出てきます。

 アルト様がお好きなのに。嫌われるなんてお辛いはずなのに、そこまで決心しているなら、わたしは従うしかないじゃないですか。

「・・・いいの。アルト様に私を嫌いになってもらわないと・・・」

 ミリア様は泣きながらまた笑いました。
感想 0

あなたにおすすめの小説

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。 恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。 アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。 側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。 「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」 意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。 一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。