【完結】シロツメ草の花冠

彩華(あやはな)

文字の大きさ
15 / 36

15、アルト視点

しおりを挟む
 少年に要求されて渡した後、治療院から離れ大通りに出た。

「ちょっとここで待ってろ」
「おい!!」

 そう言って、少年は離れ人混みに紛れていく。
 どういうことだ?

「物乞いだったのですかね?」

 信用してよかったのだろうかと不安になる。でも少年の眼差しは本当だったと思いたい。

「しばらく待ってみよう」

 10分ほどしてもまだ帰ってこないのでアリナ嬢が形のいい眉を顰めた。

「アルト様。やはり待つのは無駄じゃありません?」
「あと、少しだけ」

 信じたい。

「お待たせ」

 背後から声をかけられ、慌てて振り向くと、少年が手に布を持って立っていた。

「おまえ・・・」
「はい、これを着て」

 手渡して来たのは少し汚れた生成りのマントだ。

「その姿は流石に目立つからな。そっちのお姫様は頭まで被った方がいいぞ。俺の知ってるお嬢様は気にしないけど」

 アリナ嬢は少し抵抗があるのかマントを着る動作がゆっくりになっている。

「今からいくとこはあんまり治安はよくないから、喋んなよ。俺が頑張って聞いてやるから、聞いていたらいい。納得したら後でしっかりと払いは弾んでもらうぜ」
 
 少年は嬉々としていいのける。

 そして連れられてやって来たのは裏路地の酒場だった。
 中は蝋燭をケチっているのか薄暗くジメジメしている。

「よぉ!」
 
 少年が入るなり挨拶をすると、カウンターにいたガタイのいいの男がダンっとテーブルを叩いた。

「なあにがよぉ・・・だ。ガキがこんな場所に来るんじゃねぇって何度言わせんだ!!」
「ひっ」

 大きな声にアリナ嬢が肩を振るわせた。

「おっちゃん、声が大きい。今日は冷やかしじゃねぇよ。セイジョサマ様の噂を知りたいっていう人を連れて来たんだよ」
「聖女様?・・・あぁ?・・・ああっ・・・、ーが言ってた・・・?」

 男が小さく少年に呟く。

 なんなのであろうー?

「じゃねぇ?よく知らんけど。っか、俺もそろそろ大人の仲間入りしてぇんだけど?」
「ぬかせ。まだガキはガキだ。いけねぇ、
客人すまんな。こっちに座んな」

 そう言われ、怖くて動けなくなっているアリナ嬢を支えるようにしてカウンターへと導いた。

「ここは小僧任せた」
「たっく。こんな時は俺にたよるんだから」
「こういうのは適役だろ」

 男は少年の頭を豪快になでまわす。

「わかったよ!」

 パシリと男の手を振り払うと、少年はその場にいた者や入ってきた者たちにあの女について知っていることはないかと聞き回ってくれた。
 この場に慣れているのか大人たちは少年を邪険にするどころか気さくに話をしている。無駄話も多かったが、的確に聞いてくれるのでありがたい。

 彼らは僕らのことは眼中に内容だった。
 話される噂をただ耳にしていくだけ。あの女のことだけでなく、ありとあらゆる知らない話を聞く羽目になったのだが、それは貴重なことであった。

 2時間ほどして少年は戻ってくる。
 
「こんなもんでいいか。じゃあ、おっちゃんいくわ」
「おうよ!兄ちゃん、お代はあんたが奢ってくれ」
「・・・」

 僕は懐に手を入れたまま固まった。

「すまない。こういうところの相場はいくらくらいなんだ?」
「うそっ!はははっ!真面目に聞いてくるなんて笑ける!!んなこと聞いたら吹っかけてくるだろ!」

 少年が腹を抱えて笑う。

「うるさい」
「小僧笑ってやるな。そうさな、大事な人に小さなプレゼントするくらいの気持ちでいいさ」

 曖昧だが、なんとなくわかった気もした。
 お金を払い、男に声をかける。

「ありがとう」
「いや。・・・幸運を祈ってるよ」

 男はニヤリと笑い軽く手を振ってくれた。

  酒場をでると、再び大通りにむかう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お望み通り、消えてさしあげますわ

梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。 王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。 国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。 彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。 この国はより豊かになる、皆はそう確信した。 だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)

【完結済】ラーレの初恋

こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた! 死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし! けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──? 転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。 他サイトにも掲載しております。

さようなら、私の初恋

しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」 物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。 だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。 「あんな女、落とすまでのゲームだよ」

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。

As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。 例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。 愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。 ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します! あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 番外編追記しました。 スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします! ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。 *元作品は都合により削除致しました。

本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**

鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、 突如として現れた「本物の聖女」。 空中浮遊、瞬間移動、念動力―― 奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、 王太子はその力に目を奪われる。 その結果、 王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、 一方的に婚約を破棄されてしまった。 だが、聖女の力は―― ・空中浮遊は、地上三十センチ ・瞬間移動は、秒速一メートル ・念動力は、手で持てる重さまで 派手ではあるが、実用性は乏しい。 聖女の力は、見世物レベル。 少なくとも、誰もがそう判断していた。 それでも人々は喝采し、 権威は少女を縛り、 「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。 そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、 ある違和感に気づき始める。 ――奇跡よりも、奪われているものがあることに。 派手な復讐はない。 怒鳴り返しもしない。 けれど静かに、確実に、 “正しさ”は明らかになっていく。 見世物にされた奇跡と、 尊厳を取り戻す少女たちの物語。 ---

母を亡くした公爵令嬢は、虐げられないが、今日も願いが叶わない

春風由実
恋愛
「何故お前が生きた?」 それは怪我をして長く眠っていたエルリカが、目覚めた直後に父親である公爵から掛けられた言葉だった。 「お前こそが、女神の元に行くべきだった!」 父親から強い口調で詰られたエルリカ。 普通の令嬢は、ここで泣くか、その後立ち直れなくなるという。 けれどエルリカは違った。 「あなたこそ、何をのうのうと元気にしているのですか?」 そうしてこの日父娘は、それぞれに絶縁を宣言した。 以来、母方の祖父母に引き取られ、侯爵領で過ごしてきたエルリカ。 ところが公爵は、いつまでもエルリカを除籍する手続きを実行しなかった。 おかげで名ばかりの公爵令嬢のまま、エルリカが王都へと戻る日がやって来てしまう──。

たのしい わたしの おそうしき

syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。 彩りあざやかな花をたくさん。 髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。 きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。 辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。 けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。 だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。 沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。 ーーーーーーーーーーーー 物語が始まらなかった物語。 ざまぁもハッピーエンドも無いです。 唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*) こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄) 19日13時に最終話です。 ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*

処理中です...