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連載
熱烈歓迎
しおりを挟む「まあ、皆様そんなに迫ったらシン君が驚いてしまいますわ。個人のサロンでお譲りする予定ですので、お待ちになっていただけるかしら?」
ミリアの言葉に、再びマダムたちの目がぎらつく。ざわめきが広がり、目配せが行われる。どうやって、ミリアのサロンに参加しようかと画策しているのだろう。
周囲の熱気についていけず、シンは猛獣の檻に入れられた小動物の気分だ。
同じく小鹿のように身を縮めているのがエリシアだ。こそこそとシンに話しかける。
「シ、シン。貴方の作るものってこんなに人気だったの?」
「ミリア様に聞いたことはあったけれど、ここまで熱烈だと思わなかったよ」
ミリアが喜んで使っており、知り合いの貴婦人に羨ましがられる肌の張り艶を手に入れているのは聞いていた。レシピが大金になり、需要の高さに驚いたものだ。
だがそれらは、書面の数字や人づての報告でしかなかった。実際目の当たりにすると、怖いくらいである。
「……誘拐されないようにね」
「されないよ」
エリシアにはそう答えたが、確かにされそうである。
神子としてではなく、シンの状態でも狙われるのは遠慮したい。
捕まったら最後、はめ殺しの窓のついた狭い部屋に閉じ込められて労働を強いられるのだろうか。
絶対嫌だ。それは新手のブラック案件だ。相良真一時代に、労働基準法が意味をなさないブラック就労は懲り懲りだ。
正直、シンは強いほうだと思う。だから、よほどの手練れでないと遅れをとらないはずである。不本意ながら、魔力ゴリラなのでゴリ押し可能だ。
(若干コントロールに不安が残るけどね)
魔力量が多い分、フルパワーで使うことがない。一定以上の出力で魔法を行使すると、安定しないのだ。魔法は発動するが、威力が想定以上になってしまう。
タニキ村にいたとき、、一度山を盛大に焼いてしまった。樹木に擬態するトレント系の魔物で、思いがけず盛大にウェルダンにしてしまったのである。
かといって、練習できるような場所はそうそうない。
少なくとも王都近郊では、どこに人の目があるか分からない。街の外を出ても、草原や山、森林に冒険者がいてもおかしくない。誰かを巻き込んでしまう恐れがあるのだ。
誰か師を探そうにもシンの身の上は難しい。
神子というのは本当に厄介だ。
ふと、そこで気づく。
(エリシアにもエリシアの事情があるもんな。変に詮索するのも失礼だし、本人の気が向けば話してくれるだろう)
エリシアの心境が変わった理由が自分にあるとも知らず、シンはのんきに日和るのであった。
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