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第26話 本音が出ると、立場が見える
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第26話 本音が出ると、立場が見える
裏口が通じないと知った人間は、
だいたい二つに分かれる。
引くか、
――本音を出すか。
そして本音を出した瞬間、
その人の立場は、
驚くほどはっきりする。
「……聖女殿、
少し率直な話を」
そう切り出してきたのは、
以前は“空気”で済ませてきた重臣だった。
場所は、小会議室。
正式な場でも、
非公式でもない。
逃げ道を残したい人が、
よく選ぶ場所。
「どうぞ」
私は、座ったまま促す。
「我々は、
聖女という存在に
“特別性”を求めてきた」
来たな。
「特別であるからこそ、
従わせやすかった、と」
一瞬、
相手の表情が歪む。
「……言い方を選んでいただきたい」
「選んだよ」
私は、淡々と答える。
「今までのやり方を、
そのまま言っただけ」
沈黙。
「制度が整ってしまうと、
“お願い”が通らなくなる」
「……」
「つまり」
私は、少しだけ前に身を乗り出す。
「困ってるのは、
国じゃなくて、
あなたたちの裁量でしょ」
重臣は、
しばらく黙り込んだ。
そして――
本音が出た。
「……我々は、
王権を支える立場だ」
「支える、
って言葉、便利だね」
「だからこそ、
多少の柔軟性が――」
「裁量?」
「……」
また、沈黙。
私は、深く息を吐いた。
「裁量がなくなるのが、
そんなに怖い?」
「……怖い」
ようやく、
正直な答え。
「なぜ?」
「責任を取る場面が、
増えるからだ」
ああ。
それか。
「今までは、
聖女が曖昧だったから、
責任も曖昧にできた」
「でも今は?」
「線が引かれた」
私は、静かに頷く。
「それ、
悪いこと?」
「……我々にとっては」
「分かった」
私は、立ち上がる。
「じゃあ、
ここからは私の本音」
重臣が、
こちらを見る。
「責任を取りたくない人が、
権限を持ち続ける方が、
国にとっては怖い」
その言葉は、
きつかったかもしれない。
でも――
事実だ。
「あなたたちは、
もう選んだ」
「曖昧な力を守ることを」
「私は、
選ばなかった」
小会議室を出るとき、
重臣は何も言わなかった。
言えなかった、
が正しい。
その夜。
王太子ステルヴィオが、
いつもの場所に現れた。
「……聞いた」
「早いね」
「小会議室で、
本音が出たらしい」
「出た」
私は、短く答える。
「で?」
「立場が、
はっきりした」
王太子は、静かに頷いた。
「父上も、
同じことを感じている」
「なら、
もう迷わない」
「……迷わない、
か」
彼は、少しだけ遠くを見る。
「板挟みは、
終わった」
「次は?」
「選別だ」
その言葉を、
私は否定しなかった。
選ばなかった人。
選び直そうとした人。
本音を出してしまった人。
全員、
もう同じ場所には立っていない。
「さて」
私は、軽く伸びをする。
「これで、
話は分かりやすくなった」
声が大きいかどうかじゃない。
役職が高いかどうかでもない。
何を怖れているかで、
人の立場は決まる。
責任を怖れる人は、
曖昧さにしがみつく。
でもこの国は、
もう――
曖昧さで回る段階を、
静かに終えようとしていた。
安定したサブスク生活は、
思いがけず――
権力の正体を、
あぶり出す装置になってしまったらしい。
裏口が通じないと知った人間は、
だいたい二つに分かれる。
引くか、
――本音を出すか。
そして本音を出した瞬間、
その人の立場は、
驚くほどはっきりする。
「……聖女殿、
少し率直な話を」
そう切り出してきたのは、
以前は“空気”で済ませてきた重臣だった。
場所は、小会議室。
正式な場でも、
非公式でもない。
逃げ道を残したい人が、
よく選ぶ場所。
「どうぞ」
私は、座ったまま促す。
「我々は、
聖女という存在に
“特別性”を求めてきた」
来たな。
「特別であるからこそ、
従わせやすかった、と」
一瞬、
相手の表情が歪む。
「……言い方を選んでいただきたい」
「選んだよ」
私は、淡々と答える。
「今までのやり方を、
そのまま言っただけ」
沈黙。
「制度が整ってしまうと、
“お願い”が通らなくなる」
「……」
「つまり」
私は、少しだけ前に身を乗り出す。
「困ってるのは、
国じゃなくて、
あなたたちの裁量でしょ」
重臣は、
しばらく黙り込んだ。
そして――
本音が出た。
「……我々は、
王権を支える立場だ」
「支える、
って言葉、便利だね」
「だからこそ、
多少の柔軟性が――」
「裁量?」
「……」
また、沈黙。
私は、深く息を吐いた。
「裁量がなくなるのが、
そんなに怖い?」
「……怖い」
ようやく、
正直な答え。
「なぜ?」
「責任を取る場面が、
増えるからだ」
ああ。
それか。
「今までは、
聖女が曖昧だったから、
責任も曖昧にできた」
「でも今は?」
「線が引かれた」
私は、静かに頷く。
「それ、
悪いこと?」
「……我々にとっては」
「分かった」
私は、立ち上がる。
「じゃあ、
ここからは私の本音」
重臣が、
こちらを見る。
「責任を取りたくない人が、
権限を持ち続ける方が、
国にとっては怖い」
その言葉は、
きつかったかもしれない。
でも――
事実だ。
「あなたたちは、
もう選んだ」
「曖昧な力を守ることを」
「私は、
選ばなかった」
小会議室を出るとき、
重臣は何も言わなかった。
言えなかった、
が正しい。
その夜。
王太子ステルヴィオが、
いつもの場所に現れた。
「……聞いた」
「早いね」
「小会議室で、
本音が出たらしい」
「出た」
私は、短く答える。
「で?」
「立場が、
はっきりした」
王太子は、静かに頷いた。
「父上も、
同じことを感じている」
「なら、
もう迷わない」
「……迷わない、
か」
彼は、少しだけ遠くを見る。
「板挟みは、
終わった」
「次は?」
「選別だ」
その言葉を、
私は否定しなかった。
選ばなかった人。
選び直そうとした人。
本音を出してしまった人。
全員、
もう同じ場所には立っていない。
「さて」
私は、軽く伸びをする。
「これで、
話は分かりやすくなった」
声が大きいかどうかじゃない。
役職が高いかどうかでもない。
何を怖れているかで、
人の立場は決まる。
責任を怖れる人は、
曖昧さにしがみつく。
でもこの国は、
もう――
曖昧さで回る段階を、
静かに終えようとしていた。
安定したサブスク生活は、
思いがけず――
権力の正体を、
あぶり出す装置になってしまったらしい。
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