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第27話 曖昧な力は、最後に自分を守れない
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第27話 曖昧な力は、最後に自分を守れない
本音が出たあとの空気は、
奇妙なほど澄んでいた。
怒号もない。
説教もない。
ただ――
距離が、はっきりした。
重臣の一人が、
私を避けるようになった。
別の一人は、
目を合わせなくなった。
それでいい。
立場が見えたということは、
もう“話し合う必要がない”という意味でもある。
その日の朝。
王宮に、小さな通達が回った。
《聖女業務の判断基準について、
各部局の責任者は、
署名の上、運用報告を提出すること》
「……来たね」
私は、紙を見ながら呟いた。
署名。
つまり――
責任の所在を、名前で固定するということ。
今まで、
一番避けられてきたやつ。
昼過ぎ。
医務局の副長が、
少し困った顔でやってきた。
「聖女様……
署名の件ですが」
「不安?」
「正直に言えば」
私は、うなずく。
「でも、
やれる?」
「……やれます」
副長は、少しだけ背筋を伸ばした。
「判断基準は、
もう共有されています」
「なら、
問題ない」
彼は、
意を決したように言った。
「今まで、
誰かの影に隠れていました」
「今は?」
「……前に出ます」
それでいい。
夕方。
侍女長からも、
同じ報告が来た。
「現場は、
覚悟ができています」
「覚悟?」
「署名する覚悟です」
私は、
小さく笑った。
「大げさ」
「いいえ」
侍女長は、
静かに首を振る。
「曖昧な力に守られていた時代が、
終わっただけです」
その言葉は、
重かった。
夜。
王太子ステルヴィオが、
いつもの場所に現れた。
「……父上が、
署名制度を認めた」
「うん」
「かなり、
迷ったそうだ」
「そりゃね」
私は、窓辺に寄りかかる。
「曖昧さは、
王権にとっても
便利だったから」
「でも」
彼は、
静かに続けた。
「本音が出た連中を見て、
決めたらしい」
「何を?」
「“守れない力”は、
いずれ王権も裏切る、と」
私は、少しだけ目を細めた。
「正しい判断」
王太子は、
苦笑した。
「君が、
そこまで見ていたとは思わなかった」
「見てないよ」
私は、即答する。
「ただ、
生活を守ろうとしただけ」
「結果、
権力構造が
見えてきただけ」
彼は、
しばらく黙ってから言った。
「……曖昧な力って、
持ってる側を
強く見せるが」
「最後には、
守らない」
「そう」
私は、はっきり言う。
「責任を取らない力は、
責任を取ってくれない」
王太子は、
静かに息を吐いた。
「板挟みだった頃の自分が、
少し恥ずかしい」
「成長した証拠」
私は、肩をすくめる。
「恥ずかしいと思えるなら、
もう大丈夫」
その夜、
王宮の灯りは、
いつもより少し落ち着いて見えた。
騒がしい反対は消え、
曖昧な圧も消え、
残ったのは――
署名と、現実。
誰が決めたか。
誰が責任を持つか。
それが見える世界は、
不安でもある。
でも――
守られる。
少なくとも、
曖昧さよりは。
「さて」
私は、書類を閉じる。
「これで、
サブスク生活の
“保守運用フェーズ”かな」
安定とは、
動かないことじゃない。
責任を、
動かせる場所に置くこと。
それを理解した人だけが、
次の段階へ進める。
この国は、
静かに――
でも確実に、
前に進んでいた。
本音が出たあとの空気は、
奇妙なほど澄んでいた。
怒号もない。
説教もない。
ただ――
距離が、はっきりした。
重臣の一人が、
私を避けるようになった。
別の一人は、
目を合わせなくなった。
それでいい。
立場が見えたということは、
もう“話し合う必要がない”という意味でもある。
その日の朝。
王宮に、小さな通達が回った。
《聖女業務の判断基準について、
各部局の責任者は、
署名の上、運用報告を提出すること》
「……来たね」
私は、紙を見ながら呟いた。
署名。
つまり――
責任の所在を、名前で固定するということ。
今まで、
一番避けられてきたやつ。
昼過ぎ。
医務局の副長が、
少し困った顔でやってきた。
「聖女様……
署名の件ですが」
「不安?」
「正直に言えば」
私は、うなずく。
「でも、
やれる?」
「……やれます」
副長は、少しだけ背筋を伸ばした。
「判断基準は、
もう共有されています」
「なら、
問題ない」
彼は、
意を決したように言った。
「今まで、
誰かの影に隠れていました」
「今は?」
「……前に出ます」
それでいい。
夕方。
侍女長からも、
同じ報告が来た。
「現場は、
覚悟ができています」
「覚悟?」
「署名する覚悟です」
私は、
小さく笑った。
「大げさ」
「いいえ」
侍女長は、
静かに首を振る。
「曖昧な力に守られていた時代が、
終わっただけです」
その言葉は、
重かった。
夜。
王太子ステルヴィオが、
いつもの場所に現れた。
「……父上が、
署名制度を認めた」
「うん」
「かなり、
迷ったそうだ」
「そりゃね」
私は、窓辺に寄りかかる。
「曖昧さは、
王権にとっても
便利だったから」
「でも」
彼は、
静かに続けた。
「本音が出た連中を見て、
決めたらしい」
「何を?」
「“守れない力”は、
いずれ王権も裏切る、と」
私は、少しだけ目を細めた。
「正しい判断」
王太子は、
苦笑した。
「君が、
そこまで見ていたとは思わなかった」
「見てないよ」
私は、即答する。
「ただ、
生活を守ろうとしただけ」
「結果、
権力構造が
見えてきただけ」
彼は、
しばらく黙ってから言った。
「……曖昧な力って、
持ってる側を
強く見せるが」
「最後には、
守らない」
「そう」
私は、はっきり言う。
「責任を取らない力は、
責任を取ってくれない」
王太子は、
静かに息を吐いた。
「板挟みだった頃の自分が、
少し恥ずかしい」
「成長した証拠」
私は、肩をすくめる。
「恥ずかしいと思えるなら、
もう大丈夫」
その夜、
王宮の灯りは、
いつもより少し落ち着いて見えた。
騒がしい反対は消え、
曖昧な圧も消え、
残ったのは――
署名と、現実。
誰が決めたか。
誰が責任を持つか。
それが見える世界は、
不安でもある。
でも――
守られる。
少なくとも、
曖昧さよりは。
「さて」
私は、書類を閉じる。
「これで、
サブスク生活の
“保守運用フェーズ”かな」
安定とは、
動かないことじゃない。
責任を、
動かせる場所に置くこと。
それを理解した人だけが、
次の段階へ進める。
この国は、
静かに――
でも確実に、
前に進んでいた。
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