婚約破棄されたのでサブスク聖女始めました ―平民がダメ?なら侯爵令嬢にしますが、だから何?―

ふわふわ

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第25話 声が届かないと、裏口を探し始める

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第25話 声が届かないと、裏口を探し始める

 

 声の大きな反対は、
 思ったより早く息切れした。

 理由は単純。
 誰も困っていないから。

 だから次に来るのは――
 正面突破を諦めた人の、裏口探しだ。

「……最近、
 直接じゃなくなったね」

 私は、宰相から渡された報告書を読みながら言った。

「ええ」

 宰相も、苦い顔で頷く。

「公の場での反対は減りました。
 代わりに――」

「個別に、
 圧をかけ始めた」

「その通りです」

 医務局。
 文官。
 侍女部門。

 それぞれに、
 “助言”
 “忠告”
 “昔話”

 要するに――
 元に戻せ、という空気。

「遠回しなのが、
 一番厄介だね」

「ですが……」

 宰相は、少し意外そうな表情をした。

「現場は、
 あまり動じていません」

「でしょ」

 私は、あっさり言う。

「裏口って、
 通れる人しか使えない」

「今の現場は、
 もう通らない側」

 その日の午後。
 医務局の副長が、
 少し困った顔で訪ねてきた。

「聖女様……」

「来た?」

「ええ」

 私は、先を促す。

「“昔はこうだった”
 “前例が”
 “空気を読め”」

「フルコースだね」

 副長は、苦笑した。

「ですが……
 正直、
 今さら戻れません」

「理由は?」

「現場が、
 もう覚えてしまったからです」

 私は、その言葉に少しだけ笑った。

「楽なやり方」

「はい」

 副長は、きっぱり言った。

「効率の良さと、
 責任の明確さを」

 ――覚えた人は、
 戻らない。

 夕方。
 王太子ステルヴィオが、
 いつもの場所に現れた。

「……父上が、
 直接動く気配はない」

「代わりに?」

「周囲が、
 勝手に気を利かせている」

「一番、
 厄介なやつ」

 私は、肩をすくめた。

「でもね」

 私は、窓の外を見ながら続ける。

「裏口からの圧って、
 成功するときは、
 必ず“困る人”が出る」

「今は?」

「困ってるのは、
 圧をかけてる側だけ」

 王太子は、静かに頷いた。

「……止めた方がいいか?」

「ううん」

 私は、首を横に振る。

「むしろ、
 やらせておこう」

「どうして?」

「裏口は、
 長く使うと
 必ずバレる」

「正面で言えない主張は、
 裏でも弱い」

 王太子は、少し考えてから笑った。

「……君、
 本当に争わないな」

「争うと、
 正面が目立つから」

 私は、淡々と答える。

「裏口は、
 放っておくと
 自分で潰れる」

 夜。
 王宮の灯りは、
 静かに揺れていた。

 大きな反対も、
 正義の叫びもない。

 代わりに、
 小さな圧と、
 それを無視する現場。

 その繰り返しが、
 少しずつ――
 “戻れない現実”を固めていく。

「さて」

 私は、書類を閉じる。

「次は、
 裏口が通じないと知った人が、
 どう動くか」

 声が届かないと、
 人は裏口を探す。

 でも――
 裏口が塞がれたとき、
 本音だけが残る。

 それが出てくるまで、
 もう少しだ。
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