婚約破棄されたのでサブスク聖女始めました ―平民がダメ?なら侯爵令嬢にしますが、だから何?―

ふわふわ

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第24話 条件が通らなかった人ほど、声が大きい

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第24話 条件が通らなかった人ほど、声が大きい

 

 再検討の話が出てから、
 王宮の空気は、少しだけ騒がしくなった。

 ただし――
 動いているのは、
 “制度を使っている人たち”ではない。

 条件を出したのに、
 思った通りにならなかった人たちだ。

「……最近、
 声がでかくなってきたね」

 私は、回廊の柱にもたれながら、
 小さく呟いた。

 遠くの応接室から、
 聞き覚えのある声が響いてくる。

「前例がない!」
「聖女の権威が軽んじられている!」
「国の格式が――」

 ああ、
 テンプレだ。

 その日の午後。
 宰相が、やや疲れた顔で訪ねてきた。

「……反対派が、
 正式に発言を始めた」

「うん」

 私は、紅茶を差し出す。

「再検討の場で?」

「いや。
 その“前段階”だ」

「つまり、
 場に出る前に
 空気を作りたい」

 宰相は、苦笑した。

「よく分かるな……」

「条件が通らなかった人ほど、
 準備運動が長い」

 私は、肩をすくめる。

「中身じゃなくて、
 雰囲気で押そうとするから」

 宰相は、少し真面目な顔になった。

「“聖女の在り方”を
 問題にし始めている」

「来たね」

 私は、静かに息を吐いた。

「制度じゃ勝てないから、
 役割論に逃げる」

「……対応するか?」

「ううん」

 即答だった。

「放っておいて」

 宰相は、目を瞬かせる。

「いいのか?」

「いい」

 私は、紅茶を一口飲む。

「役割論は、
 数字が出ない」

「数字が出ない議論は、
 現場に届かない」

 その夕方。
 王太子ステルヴィオが、
 少し不機嫌そうな顔で現れた。

「……父上が、
 また“聖女像”の話を始めた」

「で?」

「“国の象徴として、
 常に王宮にあるべきだ”と」

 私は、ため息をついた。

「それ、
 何回目?」

「三回目」

「学ばないね」

 王太子は、苦笑した。

「……だが、
 言葉としては強い」

「うん」

 私は、認める。

「だから、
 声が大きい」

「でも――」

 私は、指で机を軽く叩いた。

「使ってる人は、
 もう戻りたくない」

 王太子は、黙って頷いた。

「医務局も、
 侍女長も、
 文官も」

「全員、
 “今の方が楽”って
 顔してるでしょ」

「……してる」

「それが答え」

 夜。
 私は、自室で書類を整理しながら考える。

 条件が通らなかった人たちは、
 自分たちの“影響力”を
 過信している。

 でも――
 声が大きいのと、
 必要とされているのは、
 別だ。

「さて」

 私は、書類を閉じる。

「次は、
 声の大きさが
 どこまで通用するか、
 試される番」

 制度は、
 もう机の上だけのものじゃない。

 人の手に渡り、
 生活に組み込まれ、
 “当たり前”になった。

 それを覆すには、
 正論でも、
 理念でも足りない。

 必要なのは――
 “困る人”が出ること。

 でも今のところ、
 困っているのは――
 声の大きな人たちだけだった。

 私は、静かに灯りを落とす。

 この国は、
 もう少しだけ騒がしくなる。

 でもそれは、
 壊れる前兆じゃない。

 変われなかった側が、
 最後に出す音だ。
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