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第23話 選び直したい人は、必ず条件をつける
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第23話 選び直したい人は、必ず条件をつける
臨時評議から三日後。
王宮は、表向きは静かだった。
でも私は知っている。
この静けさは――
**「諦め」ではなく、「算段」**だ。
選ばなかった側が、
ようやく「選ばなかった代償」を理解した。
次に来るのは決まっている。
――選び直し。
ただし、
彼らは必ず条件をつける。
「聖女殿。
少し、お時間を」
呼び止めてきたのは、
財務卿だった。
珍しい。
この人は、
問題が数字にならない限り動かない。
「どうぞ」
私は足を止めた。
「新指針による支出の件だが……」
「増えてないよ」
即答すると、
彼は一瞬だけ言葉に詰まった。
「……いや、
それは確認している」
だろうね。
「だが、
このままでは
前例として扱いづらい」
「つまり?」
私は、続きを促す。
「“特例”として、
一定期間での再検討を
明文化してはどうかと」
来た。
選び直しの条件。
期限。
再検討。
――保留。
「再検討って、
何を?」
「制度の是非を」
私は、少しだけ首を傾げた。
「是非は、
もう出てるよ」
「……しかし」
「困ってないでしょ」
財務卿は、黙った。
「数字、
悪化してない」
「……」
「むしろ、
予算管理しやすくなってる」
「……」
沈黙が、
答えだった。
「再検討したい理由は、
制度じゃないよね」
私は、静かに言う。
「“自分たちの立場”でしょ」
財務卿は、ゆっくり息を吐いた。
「……否定はできん」
「じゃあ」
私は、条件を返す。
「再検討するなら、
現場と一緒にやろう」
「机の上だけじゃなく」
「使ってる人、
困ってない人、
得してる人も含めて」
財務卿は、
少し驚いた顔をした。
「……それでは、
結論が変わらないのでは?」
「そうだね」
私は、あっさり頷く。
「だから、
再検討してもいい」
彼は、しばらく考え込んだ。
「……分かった」
去り際、
ぽつりと言う。
「君は、
交渉が上手いな」
「違うよ」
私は、微笑む。
「逃げ道を、
用意してるだけ」
その夜。
王太子ステルヴィオが、
例の場所に現れた。
「……財務卿と話したそうだな」
「うん」
「再検討?」
「したいらしい」
王太子は、苦笑する。
「やはり、
そう来たか」
「当然」
私は、窓辺に寄りかかる。
「選び直したい人は、
“戻せる余地”を
残したがる」
「で、
君は?」
「残してあげた」
王太子は、目を丸くする。
「いいのか?」
「いいよ」
私は、指を鳴らす。
「戻れない余地を、
ちゃんと塞いだから」
「どういう意味だ?」
「再検討には、
“困ってない現場”が
必ず同席する」
「それって……」
「再検討すればするほど、
戻れないってこと」
王太子は、
しばらく黙ってから笑った。
「……相変わらず、
容赦がない」
「容赦はしてるよ」
私は、淡々と答える。
「嘘はついてないし、
選択肢も与えてる」
「ただ――」
一拍置く。
「選び直した結果に、
責任が伴うだけ」
窓の外。
夜の王宮は、
静かに明るかった。
制度は、
もう“特別”じゃない。
条件をつけてでも、
選び直したいと思われた時点で、
それは標準だ。
「さて」
私は、小さく呟く。
「次は、
“条件が通らなかった人”が
どう出るか」
でも、
もう焦らない。
だって今、
誰もが分かっている。
選び直すという行為そのものが、
この仕組みを認めた証拠だと。
臨時評議から三日後。
王宮は、表向きは静かだった。
でも私は知っている。
この静けさは――
**「諦め」ではなく、「算段」**だ。
選ばなかった側が、
ようやく「選ばなかった代償」を理解した。
次に来るのは決まっている。
――選び直し。
ただし、
彼らは必ず条件をつける。
「聖女殿。
少し、お時間を」
呼び止めてきたのは、
財務卿だった。
珍しい。
この人は、
問題が数字にならない限り動かない。
「どうぞ」
私は足を止めた。
「新指針による支出の件だが……」
「増えてないよ」
即答すると、
彼は一瞬だけ言葉に詰まった。
「……いや、
それは確認している」
だろうね。
「だが、
このままでは
前例として扱いづらい」
「つまり?」
私は、続きを促す。
「“特例”として、
一定期間での再検討を
明文化してはどうかと」
来た。
選び直しの条件。
期限。
再検討。
――保留。
「再検討って、
何を?」
「制度の是非を」
私は、少しだけ首を傾げた。
「是非は、
もう出てるよ」
「……しかし」
「困ってないでしょ」
財務卿は、黙った。
「数字、
悪化してない」
「……」
「むしろ、
予算管理しやすくなってる」
「……」
沈黙が、
答えだった。
「再検討したい理由は、
制度じゃないよね」
私は、静かに言う。
「“自分たちの立場”でしょ」
財務卿は、ゆっくり息を吐いた。
「……否定はできん」
「じゃあ」
私は、条件を返す。
「再検討するなら、
現場と一緒にやろう」
「机の上だけじゃなく」
「使ってる人、
困ってない人、
得してる人も含めて」
財務卿は、
少し驚いた顔をした。
「……それでは、
結論が変わらないのでは?」
「そうだね」
私は、あっさり頷く。
「だから、
再検討してもいい」
彼は、しばらく考え込んだ。
「……分かった」
去り際、
ぽつりと言う。
「君は、
交渉が上手いな」
「違うよ」
私は、微笑む。
「逃げ道を、
用意してるだけ」
その夜。
王太子ステルヴィオが、
例の場所に現れた。
「……財務卿と話したそうだな」
「うん」
「再検討?」
「したいらしい」
王太子は、苦笑する。
「やはり、
そう来たか」
「当然」
私は、窓辺に寄りかかる。
「選び直したい人は、
“戻せる余地”を
残したがる」
「で、
君は?」
「残してあげた」
王太子は、目を丸くする。
「いいのか?」
「いいよ」
私は、指を鳴らす。
「戻れない余地を、
ちゃんと塞いだから」
「どういう意味だ?」
「再検討には、
“困ってない現場”が
必ず同席する」
「それって……」
「再検討すればするほど、
戻れないってこと」
王太子は、
しばらく黙ってから笑った。
「……相変わらず、
容赦がない」
「容赦はしてるよ」
私は、淡々と答える。
「嘘はついてないし、
選択肢も与えてる」
「ただ――」
一拍置く。
「選び直した結果に、
責任が伴うだけ」
窓の外。
夜の王宮は、
静かに明るかった。
制度は、
もう“特別”じゃない。
条件をつけてでも、
選び直したいと思われた時点で、
それは標準だ。
「さて」
私は、小さく呟く。
「次は、
“条件が通らなかった人”が
どう出るか」
でも、
もう焦らない。
だって今、
誰もが分かっている。
選び直すという行為そのものが、
この仕組みを認めた証拠だと。
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