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こっちも本物お貴族様
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翌日は王都を観光して、セデル村にお土産を買うことにした。明日にはもう帰る予定だ。王都に来たのは嬉しいけれど、あまり長居しても何が起きるかわからない。うち、田舎貴族ですから。
街はまるで祭りの日のような賑わいだった。行商人の声、焼き菓子の甘い匂い、どこからか聞こえる楽器の音。王都って、見ているだけで忙しい。
「うおー! あれ見てリナ! でっかい串肉!!」
「兄様、まだ食べたばかりですのに……」
カイル兄様はいつも通り食欲全開だ。父様はそんな兄様に呆れながらも、どこか楽しそうに微笑んでいた。
そのときだった。
「あれ、教会……すごい人ですね」
王都中央聖堂――例の“永遠の慈愛の聖環(セラフィック・サークレット・オブ・エターナル・グレイス)”が安置されている場所だ。人が押し寄せ、押し戻され、列は大通りまで伸びている。
そして、群衆の中でひときわ騒ぎを起こしている一団がいた。
「私は“侯爵家”の者であるぞ! この私が見たいと言っているのだ! 十分な理由だろう! さっさと通せ!」
声変わりしきっているのかしていないのか曖昧な少年の怒鳴り声。赤茶の髪に、宝石をこれでもかと貼り付けた服。年は……兄様より少し上くらいだろうか。しかし態度は三歳児の駄々っ子のまま成長したようなもので、しきりとこめかみから頭部を押さえながら喚き散らしている。
「申し訳ありません、聖環は本日すでに……」
神父が困った顔で宥めようとしているが、少年は聞く耳を持たない。
「黙れ下民! 私を誰だと思っている!? 『見る』と言ったら見るのだ!! 私の機嫌を損ねたいのか!? んん!?」
護衛まで神父を睨んでいる。やりにくいにも程がある。
父様はすっと目をそらし、私と兄様の襟首をつまんだ。
「カイル、リナ、関わるな。あれは絶対に面倒なやつだ」
「はぁーい……」
兄様は後ろ髪引かれながらも歩き出した。しかし、騒ぎの中心の少年は追い出された腹いせか、周囲の人々を乱暴に押しのけながら、こちらへと歩いてくる。
「どけどけどけぇ! 私に道を開けろ!」
「うわっ!」
突然兄様が突き飛ばされ、後ろにいた商人のおじさんにぶつかった。
「いってぇな! 人にぶつかっておいて謝りの一つもないのかよ!」
「黙れ下郎! 私が通るのに邪魔をするほうが悪い! お前らは地を這う虫だろうが!!」
うわぁ……
虫……虫呼ばわり……。
性格の悪さが、もう清々しいレベルだ。
ここまで堂々としていると、もはや芸の域である。いや、褒めてないけど。
「いっ」
カル兄様も、少年の護衛に突き飛ばされて、後ろにいた人にぶつかってしまった。
「何なのお貴族様」
全くもって迷惑な少年だ。どうしたらあんなに性格が悪くなるんだろう。お貴族様だからだろうか。それとも親の性格が悪くて、子供の性格も悪いんだろうか。お貴族様だから、親に育てられたのではなく、育てた乳母の性格が悪いんだろうか。あの年ならまだ矯正できるだろうか。もう難しいかな。性格の悪さって治らないのかしら。
なんてことをつらつら考えていたからかもしれない。
「!」
ぼんやりしていたら、少年の進路をちょうどさふいでいたらしい私を少年がどんと突き飛ばした。その瞬間、なんと
「そこだ! 道を開けと言っているだろうが、愚図がああああ!!」
ドンッ!!
「きゃっ――」
突き飛ばされた。体がぐらりと揺れる。
その瞬間、
――ぱちん。
ほとんど反射的に、体の奥から魔力が跳ねた。
(……あ、やば)
光が一瞬、弾けた。誰にも見えない、ほんの瞬きほどのきらめきだったかもしれない。
けれど、効果は――はっきりと出てしまった。
「……!? 何だ、この……っ、頭が……!? 頭が!? なんだ!? か、痒い……っ!? 熱い!? 熱いんだがぁぁぁ!!?」
少年は頭を押さえ、のたうち回り始めた。
周囲がざわめきに変わる。
「な、なんだ!?」
「呪いか!?」
「いや、天罰では!?」
「いや普通に自業自得では?」
兄様が小声で、
「リナ……やった?」
「……ええと、少し……反射的に、ですね……」
父様が口元を押さえながらぼそりと呟く。
「まじか……」
街はまるで祭りの日のような賑わいだった。行商人の声、焼き菓子の甘い匂い、どこからか聞こえる楽器の音。王都って、見ているだけで忙しい。
「うおー! あれ見てリナ! でっかい串肉!!」
「兄様、まだ食べたばかりですのに……」
カイル兄様はいつも通り食欲全開だ。父様はそんな兄様に呆れながらも、どこか楽しそうに微笑んでいた。
そのときだった。
「あれ、教会……すごい人ですね」
王都中央聖堂――例の“永遠の慈愛の聖環(セラフィック・サークレット・オブ・エターナル・グレイス)”が安置されている場所だ。人が押し寄せ、押し戻され、列は大通りまで伸びている。
そして、群衆の中でひときわ騒ぎを起こしている一団がいた。
「私は“侯爵家”の者であるぞ! この私が見たいと言っているのだ! 十分な理由だろう! さっさと通せ!」
声変わりしきっているのかしていないのか曖昧な少年の怒鳴り声。赤茶の髪に、宝石をこれでもかと貼り付けた服。年は……兄様より少し上くらいだろうか。しかし態度は三歳児の駄々っ子のまま成長したようなもので、しきりとこめかみから頭部を押さえながら喚き散らしている。
「申し訳ありません、聖環は本日すでに……」
神父が困った顔で宥めようとしているが、少年は聞く耳を持たない。
「黙れ下民! 私を誰だと思っている!? 『見る』と言ったら見るのだ!! 私の機嫌を損ねたいのか!? んん!?」
護衛まで神父を睨んでいる。やりにくいにも程がある。
父様はすっと目をそらし、私と兄様の襟首をつまんだ。
「カイル、リナ、関わるな。あれは絶対に面倒なやつだ」
「はぁーい……」
兄様は後ろ髪引かれながらも歩き出した。しかし、騒ぎの中心の少年は追い出された腹いせか、周囲の人々を乱暴に押しのけながら、こちらへと歩いてくる。
「どけどけどけぇ! 私に道を開けろ!」
「うわっ!」
突然兄様が突き飛ばされ、後ろにいた商人のおじさんにぶつかった。
「いってぇな! 人にぶつかっておいて謝りの一つもないのかよ!」
「黙れ下郎! 私が通るのに邪魔をするほうが悪い! お前らは地を這う虫だろうが!!」
うわぁ……
虫……虫呼ばわり……。
性格の悪さが、もう清々しいレベルだ。
ここまで堂々としていると、もはや芸の域である。いや、褒めてないけど。
「いっ」
カル兄様も、少年の護衛に突き飛ばされて、後ろにいた人にぶつかってしまった。
「何なのお貴族様」
全くもって迷惑な少年だ。どうしたらあんなに性格が悪くなるんだろう。お貴族様だからだろうか。それとも親の性格が悪くて、子供の性格も悪いんだろうか。お貴族様だから、親に育てられたのではなく、育てた乳母の性格が悪いんだろうか。あの年ならまだ矯正できるだろうか。もう難しいかな。性格の悪さって治らないのかしら。
なんてことをつらつら考えていたからかもしれない。
「!」
ぼんやりしていたら、少年の進路をちょうどさふいでいたらしい私を少年がどんと突き飛ばした。その瞬間、なんと
「そこだ! 道を開けと言っているだろうが、愚図がああああ!!」
ドンッ!!
「きゃっ――」
突き飛ばされた。体がぐらりと揺れる。
その瞬間、
――ぱちん。
ほとんど反射的に、体の奥から魔力が跳ねた。
(……あ、やば)
光が一瞬、弾けた。誰にも見えない、ほんの瞬きほどのきらめきだったかもしれない。
けれど、効果は――はっきりと出てしまった。
「……!? 何だ、この……っ、頭が……!? 頭が!? なんだ!? か、痒い……っ!? 熱い!? 熱いんだがぁぁぁ!!?」
少年は頭を押さえ、のたうち回り始めた。
周囲がざわめきに変わる。
「な、なんだ!?」
「呪いか!?」
「いや、天罰では!?」
「いや普通に自業自得では?」
兄様が小声で、
「リナ……やった?」
「……ええと、少し……反射的に、ですね……」
父様が口元を押さえながらぼそりと呟く。
「まじか……」
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