王子の本命~無自覚王太子を捕まえたい〜

オレンジペコ

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第三章 戴冠式は波乱含み

57.報告と牽制

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無事に城へと帰還すると、カリン陛下達が飛んできてディア王女をギュッと抱きしめた。

「ディア!無事で良かった」
「カリンお父様!」

親子の感動の再会だ。

「ディオ、ありがとう。よく見つけてくれた」
「ルーセウスのお陰です。俺ではあそこは見つけられませんでした」
「ルーセウス王子。ありがとう」

俺を嫌ってたはずのカリン陛下だけど、素直にお礼を言ってくれた。
嬉しい。

「ロキ陛下は?」
「ロキはディオの代わりに今俺と交代でパーティーで来客対応をしてくれている。俺がソワソワしてたから代わってくれたんだ」

どうやらディア王女を保護したと聞いて、居ても立ってもいられなくなってしまったらしい。

(ディア王女は愛されてるな)

なんだかんだとディオ同様、皆に愛情を注がれながら育てられたんだなと感じて、なんだか胸が温かくなった。

「詳細は別室で聞こう。ディアは着替えてゆっくり休むといい。殴られたとも聞いている。医師もすぐに手配するから無理はするな」
「ありがとうございます」
「ブラン皇子は取り敢えず隔離しているから、望むなら明日にでも会わせよう。どうする?」
「勿論会いますわ。踏んでやらないと気が済みませんから」
「そうか。わかった。伝えておこう」

そしてディア王女は礼をとり、自室へと戻っていく。
それを見送り、俺とディオはカリン陛下に促され、別室で犯人達について知る限りのことを詳しく話した。

攫った相手はバロン国の近衛騎士団長をはじめとする一団。
その場に居合わせた28名を全員無力化。捕縛済み。
但し他に仲間がいるかはこれから取り調べる予定。
動機は戦争を回避するために首謀者を事故死に見せかけて暗殺された故の復讐とみられる。

「バレないようにやったつもりなんですが、時期が時期だけに疑いの目が向いてしまったようです」

ディオが溜め息混じりにそう口にする。

「ニッヒガング国とバロン国の戦争を仕掛けようとしている者達が、ここ数ヶ月で全員死んだら確かに怪しまれるな」
「戴冠式の準備をしつつ遠方の国の企みを完璧に潰すのは少し無理があったようです。まだまだ未熟者で申し訳ありません」
「いや。戦争が起こればゴッドハルトは確実に犠牲者も多く出ただろうし、下手をしたら友好国としてブルーグレイまで動いて大変なことになっていたかもしれん。セドリック王子が益々恐れられるのは別に構わないが、一気に二カ国がブルーグレイの属国にでもなれば反発を抱く国も出てきた事だろうしな。よくやってくれた」

なるほど。戦争が起こっていれば他にも色々と問題が生じていた可能性もあるんだな。
自国もそうだが、他国も巻き込む可能性があったと考えると、戦争回避に動いてくれたディオには感謝しかない。

「ディオ。ありがとう」
「ルーセウス…」

二人で見つめあってたら現実に引き戻すように咳払いが割り込んできた。

「取り敢えず、その件は引き続き対応を取ろう。ニッヒガングの残党と、バロン国の残党を調べさせておく。ミラルカのブラン皇子については明日双方で話し合いの席を持つつもりだ。被害者であるディアの意思を尊重して処断しようと思う」
「はい」
「それで、だ。言っておくが、俺はまだお前達二人の結婚は認めていない。今回の件でルーセウス王子に助けられたことに関しては感謝しているが、他国の王太子が王配だなんて前代未聞な事が認められるはずもない。一度冷静になるためにも双方の結婚式と初夜を済ませるまでは一切会うことを禁止する。いいな?」

その言葉に俺は頭を殴られたようなショックを受けた。
つまり俺とディア王女、ディオとヴィオレッタ王女がそれぞれ結婚して、初夜を済ませるまで会うなと言うことらしい。
どんな拷問だ。
あまりにも酷過ぎる。
そんなこと、俺が耐えられるとはとても思えなかった。
でもここで救世主であるロキ陛下が来てくれる。

「兄上。そんなできもしない無茶な話をするのはやめてあげてください」
「ロキ!パーティーはどうした?!」
「え?兄上と一緒にいたくなったので、抜けてきました。アンヌに押しつけてきたので平気ですよ?」
「またお前は!」

側妃のアンヌ妃に丸投げしてここへやってきてくれたらしい。
でもそのせいでカリン陛下はお怒りだ。
ロキ陛下は全然動じていないけど。

カリン陛下の隣に座って、ツイッと指で唇を撫でると意味深に笑ってそのまま口づけてしまう。

「聞き分けのない口は塞ぐに限りますよね?」
「んんんっ?!」
「はぁ…この後どう言い聞かせれば良いか、考えるだけでゾクゾクします」

そのままロキ陛下はうっとりしながら愛撫までやり始めてしまい、カリン陛下はすっかり涙目だ。

「ロキ父様。ルーセウスの前なので、カリン父様を味わいにきたならお部屋にお戻りを」
「ああ。勿論この後連れて行くよ。ここにいるのも後少しだし、今日は兄上を初めて抱いた部屋で楽しもうかな。楽しみだな。どうやって虐めよう?」

どこか浮かれた様子のロキ陛下と、淡々とした態度で告げるディオの落差が激しい。

「待て、ロキ!俺はこの二人にまだ言いたい事が…!」
「言っても無駄ですよ。だってディオはルーセウス王子に快楽堕ちしちゃってるので。離れられるのは精々二週間が限度じゃないですか?」
「…は?」
「下手に拗れられて戴冠式までに別れられたら退位できなくなって困るなと思って、別れられないように予め手を打っておいたんです。ディオもあれこれ考え過ぎて悩まずに済みますし、ルーセウス王子もディオが離れて行くような心配をせず安心していられるし、俺もこうして無事に退位できましたし、みんな良いことづくめでしたよ?」
「な、ななな…っ」

戦慄きながらカリン陛下がロキ陛下へと向き合う。

「お前!なんて余計な事を…!」
「兄上が二人の仲を反対するのは目に見えてましたから。快楽堕ちした気持ちは兄上が一番わかってあげられるでしょう?」
「うぐぅ…っ」
「まさか何も悪くない愛し合う二人を引き離したりはしませんよね?」
「そ、それは…っ」
「わかったら無駄なことは考えず、俺の事だけで頭をいっぱいにしてください。ディアの件も、兄上が気になるなら俺がちゃんと手は打ちますから」

どうやらロキ陛下は、カリン陛下に他の事を考えず、自分の事だけで頭をいっぱいにしてほしいらしい。

「じゃあディオ。この後は連絡がつかなくなるから、何かあればリヒターかカークに伝えてくれ」
「わかりました。良い夜を」

どうやら先程のカリン陛下の言葉は無効になったらしい。
本当に良かった。

「じゃあディオ。着替えてパーティー会場に戻るか?」

その言葉に頷いてもらえたから一旦部屋へと引き返し着替えは済ませたものの、部屋を出る間際にクイッと袖を引かれ引き止められた。
振り向くと少し俯き加減のディオが俺の袖を摘んでいる。
それを見てちょっと嬉しくなって、思わず抱き寄せてしまった。

「ディオ…」
「ルーセウス。パーティーが終わるのはもう少し先だし、今日は色々あって疲れてるかもしれないけど…」
「うん」
「…………ちょっとだけでいいから、寝る前に愛してほしい」

遠慮がちに抱いてと言われて、天を仰いでしまう。

(俺の嫁が可愛過ぎる…!)

「ルーセウス?」
「ああ、いや。平気だ!ちょっとと言わずいっぱい可愛がりたい」
「…うん。じゃあ後一仕事、頑張るよ」

これはもしかして俺がご褒美になってるパターンか。
なんて愛しいんだろう?
ディオが好き過ぎてもうどうしようもない。

「今日はディオも疲れてるだろうし、ベッドの上では全部俺に任せてくれていいからな?」

そう言ったら、グイッと引き寄せられて、思い切りディープキスをされてしまった。
照れ隠しなのが見て取れて思わず笑ってしまう。

「行こうか」
「ああ」

そしてもう隠す必要のないディオとの関係を嬉しく思いながら、俺は笑顔でパーティー会場へと戻ったのだった。



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