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有能令嬢は、息をする
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「「「わあー」」」
メンバーの女生徒たちが、わたしのドレスアップした姿に感嘆の声を出してくれた。
「ありがとうございます」
素直に笑うことができた。
「アイスグリーンのドレスが、黒髪のロングヘアーにとてもにあってますわー!」
この国では、グリーンが国の色になっていて、今日はメンバーたちは、緑をあしらった礼装をしている。今日は、エスコートのペアを作って、ゾーリュックと、ペアを変えて踊ったり、話をしたり、食事をとるというものだ。
「今日は、頑張りましょうね」
わたしは、自然と言葉が出てきた。
「ええ、もちろん」
「素敵な殿方はいるかしら」
「こら、なにをいうの」
「ふふ」
わたしは、笑顔になっていた。
「ティアさん、今日はよろしく」
アリスラン……と、アロイヴが、現れた。
「すごい、元からきれいだけど、今日はすごいね!」
アリスランが、また、表面だけ満面の笑みを浮かべている。
「ごめんって。でも、そうでしょ?」
「ぼっ……ぼくは……」
「……変ですか?」
さすがに不安になる。
「そんなことない、きれいだ!」
周りがびっくりしている。
「遊び過ぎたね、ごめん」
アロイヴは、やりすぎたと反省しているが……
「ありがとうございます、殿下も、お似合いですわ」
わたしは、また、にっこりと笑えた。
「うん……」
アリスランも、笑ってくれた。
「じゃあ、行こうか」
わたしのパートナーはアリスランだ。
◇◇
「ティア、ドレス似合っていないか……?」
「やっぱり、美少女だっていわれてただけあるな」
ホールの上の閲覧席の生徒たちは、ざわざわしていた。その中で、カロリーヌは、おもしろくない顔をしないようにするので必死だった。
(絶対に、この後、あやまらせた時に、わたしが、上だって認めさせるんだから……)
「なにか、失敗しないか心配ですわ」
「まあ、カロリーヌ様はやっぱりおやさしいですわ」
「本当に慈悲深いお方ですわ」
「そんなことないですわよ」
カロリーヌは取り巻きのいうことを聞きながら、隣にいるフレデリクをちらりと見た。連れてこさせたのだ。
「ティア……」
何か言ったようだったが、音楽で聞こえなかった。しかし、この男がいれば、わたしは上になれる。謝らせるときは、隣に、この男も連れて行こう。
◇◇
パーティー会場に出る。ゾーリュックの生徒たちも、ホールにいる。今は乾杯のドリンクが配られている。
「怒られるとか、考えなくていいからね、そんなこと考えなくていいくらい、君は」
飲み物をわたしに手渡す。
「誠実な人だから、きっと、それは相手に伝わる」
「ありがとうございます」
わたしは、ほほえむことができた。アリスランは、中央に立って挨拶をはじめる。
「本日は、遠いところから、お越しいただき、誠にありがとうございます。両国の繁栄を願って、乾杯」
出席者たちが、みなグラスに口をつけ、そして拍手をする。
「皆様、本日はお楽しみください。生徒たちも、楽団も、ゾーリュックのダンスや楽曲を学んでおります」
そういって、アリスランは、会釈し、中心から離れる。楽団は音楽をはじめる。
「じゃあ、行こうか」
こちらに来たアリスランに連れられて、一番豪勢な服装のゾーリュックのペアのところに行く。わたしと、アリスランは決まったお辞儀をする。
「本日は、よろしくお願いします。わたしは、第一王子、アリスラン、こちらは、男爵令嬢のティアといいます」
アリスランが挨拶をする。相手の男子生徒は、金髪でカスミ色の目をしている。隣の女生徒も、金髪で青色の目をしている。わたしは、笑顔が硬くないか気にしていた。
「わたしはゾーリュックの第二王子リードアです、一曲願えますか?」
優美なふるまいだった。
「喜んで」
わたしも、ほほえんで応えた。
(今が、一番自然でいられている気がする。あまりにも、非日常なのに)
ゆったりめの曲が流れる。
「ふふ、他国に来て、自国の曲をおどるなんて、不思議だ」
リードアは、笑う。気さくな人なのかもしれない。
「ふふ、メンバー一同、懸命に練習しましたのよ。それに……」
出過ぎたことを、言ったことにならないだろうか?相手の文化だっていろいろある。
「どうされたのですか?」
「それに、実際におどってみて、そして、曲を聞いてみて、教科書では分からないものを知ることができたと思うんですの」
リードアは嬉しそうな顔をした。
「わたしも、こうやってくる中で、街道や建物や食べ物をとおして、同じことを思っていました」
「恐れ入りますわ」
気づくと曲も終わっていた。
「また、お話ししましょう」
リードアは、嬉しそうに、パートナーと去っていった。
「ティア、すごいね。どうやってあんなに打ち解けたの?」
アリスランは、びっくりしたように話す。
「ふふ、誠実に、ふるまっただけ……かもしれませんわ」
「そうか」
アリスランは笑った。
◇◇
「パーティーも、惜しいですが、お時間となりました」
残念そうにアリスランは、また、ダンスホールの中心で言う。
「わたしは、人と人が手を取りあうことは素晴らしいことです。しかし、手をつないだままでは、他のことはできません。ですから、やはり、こうやって、手を取り合ったという事実がまず大事なのではないかと思います。今日のことが、未来の礎になりますように、願います、ありがとうございました」
リードアと握手して、パーティーは終わった。
(未来の礎……か)
「みごとな演説でしたわ。……殿下が考えられましたの?」
「ああ、そうだよ。決めてあったんだけど、きみと、リードア様を見て思って変えたんだ」
「まあ」
嬉しくて、体温が上がった。
(手をつないだままでは、他のことはできない)
「ティア、今日、君を送らせてくれないか?……話したいことがあるんだ」
こっそりとアリスランはわたしの耳元で話した。きっと嬉しい話だと思う。嬉しい。
「分かりましたわ。ただ、少々お待ちいただくことになりますわ」
……まだ、やることが残っている。
メンバーの女生徒たちが、わたしのドレスアップした姿に感嘆の声を出してくれた。
「ありがとうございます」
素直に笑うことができた。
「アイスグリーンのドレスが、黒髪のロングヘアーにとてもにあってますわー!」
この国では、グリーンが国の色になっていて、今日はメンバーたちは、緑をあしらった礼装をしている。今日は、エスコートのペアを作って、ゾーリュックと、ペアを変えて踊ったり、話をしたり、食事をとるというものだ。
「今日は、頑張りましょうね」
わたしは、自然と言葉が出てきた。
「ええ、もちろん」
「素敵な殿方はいるかしら」
「こら、なにをいうの」
「ふふ」
わたしは、笑顔になっていた。
「ティアさん、今日はよろしく」
アリスラン……と、アロイヴが、現れた。
「すごい、元からきれいだけど、今日はすごいね!」
アリスランが、また、表面だけ満面の笑みを浮かべている。
「ごめんって。でも、そうでしょ?」
「ぼっ……ぼくは……」
「……変ですか?」
さすがに不安になる。
「そんなことない、きれいだ!」
周りがびっくりしている。
「遊び過ぎたね、ごめん」
アロイヴは、やりすぎたと反省しているが……
「ありがとうございます、殿下も、お似合いですわ」
わたしは、また、にっこりと笑えた。
「うん……」
アリスランも、笑ってくれた。
「じゃあ、行こうか」
わたしのパートナーはアリスランだ。
◇◇
「ティア、ドレス似合っていないか……?」
「やっぱり、美少女だっていわれてただけあるな」
ホールの上の閲覧席の生徒たちは、ざわざわしていた。その中で、カロリーヌは、おもしろくない顔をしないようにするので必死だった。
(絶対に、この後、あやまらせた時に、わたしが、上だって認めさせるんだから……)
「なにか、失敗しないか心配ですわ」
「まあ、カロリーヌ様はやっぱりおやさしいですわ」
「本当に慈悲深いお方ですわ」
「そんなことないですわよ」
カロリーヌは取り巻きのいうことを聞きながら、隣にいるフレデリクをちらりと見た。連れてこさせたのだ。
「ティア……」
何か言ったようだったが、音楽で聞こえなかった。しかし、この男がいれば、わたしは上になれる。謝らせるときは、隣に、この男も連れて行こう。
◇◇
パーティー会場に出る。ゾーリュックの生徒たちも、ホールにいる。今は乾杯のドリンクが配られている。
「怒られるとか、考えなくていいからね、そんなこと考えなくていいくらい、君は」
飲み物をわたしに手渡す。
「誠実な人だから、きっと、それは相手に伝わる」
「ありがとうございます」
わたしは、ほほえむことができた。アリスランは、中央に立って挨拶をはじめる。
「本日は、遠いところから、お越しいただき、誠にありがとうございます。両国の繁栄を願って、乾杯」
出席者たちが、みなグラスに口をつけ、そして拍手をする。
「皆様、本日はお楽しみください。生徒たちも、楽団も、ゾーリュックのダンスや楽曲を学んでおります」
そういって、アリスランは、会釈し、中心から離れる。楽団は音楽をはじめる。
「じゃあ、行こうか」
こちらに来たアリスランに連れられて、一番豪勢な服装のゾーリュックのペアのところに行く。わたしと、アリスランは決まったお辞儀をする。
「本日は、よろしくお願いします。わたしは、第一王子、アリスラン、こちらは、男爵令嬢のティアといいます」
アリスランが挨拶をする。相手の男子生徒は、金髪でカスミ色の目をしている。隣の女生徒も、金髪で青色の目をしている。わたしは、笑顔が硬くないか気にしていた。
「わたしはゾーリュックの第二王子リードアです、一曲願えますか?」
優美なふるまいだった。
「喜んで」
わたしも、ほほえんで応えた。
(今が、一番自然でいられている気がする。あまりにも、非日常なのに)
ゆったりめの曲が流れる。
「ふふ、他国に来て、自国の曲をおどるなんて、不思議だ」
リードアは、笑う。気さくな人なのかもしれない。
「ふふ、メンバー一同、懸命に練習しましたのよ。それに……」
出過ぎたことを、言ったことにならないだろうか?相手の文化だっていろいろある。
「どうされたのですか?」
「それに、実際におどってみて、そして、曲を聞いてみて、教科書では分からないものを知ることができたと思うんですの」
リードアは嬉しそうな顔をした。
「わたしも、こうやってくる中で、街道や建物や食べ物をとおして、同じことを思っていました」
「恐れ入りますわ」
気づくと曲も終わっていた。
「また、お話ししましょう」
リードアは、嬉しそうに、パートナーと去っていった。
「ティア、すごいね。どうやってあんなに打ち解けたの?」
アリスランは、びっくりしたように話す。
「ふふ、誠実に、ふるまっただけ……かもしれませんわ」
「そうか」
アリスランは笑った。
◇◇
「パーティーも、惜しいですが、お時間となりました」
残念そうにアリスランは、また、ダンスホールの中心で言う。
「わたしは、人と人が手を取りあうことは素晴らしいことです。しかし、手をつないだままでは、他のことはできません。ですから、やはり、こうやって、手を取り合ったという事実がまず大事なのではないかと思います。今日のことが、未来の礎になりますように、願います、ありがとうございました」
リードアと握手して、パーティーは終わった。
(未来の礎……か)
「みごとな演説でしたわ。……殿下が考えられましたの?」
「ああ、そうだよ。決めてあったんだけど、きみと、リードア様を見て思って変えたんだ」
「まあ」
嬉しくて、体温が上がった。
(手をつないだままでは、他のことはできない)
「ティア、今日、君を送らせてくれないか?……話したいことがあるんだ」
こっそりとアリスランはわたしの耳元で話した。きっと嬉しい話だと思う。嬉しい。
「分かりましたわ。ただ、少々お待ちいただくことになりますわ」
……まだ、やることが残っている。
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