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しおりを挟む「それに姉上を批判するということはスタマーズ公爵家を批判することになります。そんな考え無し、社交界にそういないと思いますが……僕が聞きたいのは姉上がなぜ急に縁談話を気にしたのか、ということです。誰かに何か言われたのですか?それとも公爵家をクビにでもなったのですか?」
「それは……違うけど、でも、もうすぐそうなると思うの」
「なっ!」
大声を上げたのは伯爵だった。元々険しい顔を更に険しくさせ、重々しく尋ねた。
「レティ、それはスタマーズ公爵がそう言ったのか?それとも……」
「だ、誰も言ってないわ。でも……」
レティはミゲルに友好国の第三王女殿下との縁談話が噂されていること、アーネスト王太子殿下がミゲルへ噂について尋ねたとき彼は否定しなかったこと、ミゲルが王女殿下と婚約となればレティが傍にいることを王女殿下は良く思わないだろうから公爵家を辞するしかないと考えたことを説明した。
レティの説明を聞きながら、他の三人はしばらく難しい顔をしていた。
「レティ」
最初に口を開いたのは母だった。
「レティの考えは分かったわ。だけどね、レティ、政略結婚は認めないわ」
「な……どうしてですか?」
「レティには愛する人と結婚して欲しいの。それに、ほら、国王陛下だって恋愛結婚を推奨しているじゃない」
レティは一瞬アーネストのことを思い出した。アーネストの実父である国王陛下は恋愛結婚推奨派だ。だが、そのせいで学生時代アーネストが他の女性を散々追いかけることを黙認されており、結果今の妃殿下との溝は底が見えない程深い。レティは不満そうに口を尖らせた。
「……お母さまだって政略結婚では無いですか」
「あら、私たちは恋愛結婚よ。ねぇ、あなた?」
「え!」
妻の言葉に伯爵は気まずそうに小さく頷いた。それを見たレティは目を丸くした。両親が結婚した頃はまだ政略結婚が主流だったためそう思い込んでいたのだ。そして何より……。
「だ、だって、お父さまは学生時代から料理をしていたって聞いたわ」
「そうねぇ」
「お、お母さまは苦労すると分かっていてお父さまと結婚したということ?」
レティの鋭い言葉にジャックは腹を抱えて笑い出した。伯爵は苦々しい表情を浮かべたが、娘へ言い返すことはできなかった。伯爵が学生時代から料理に傾倒しており、妻となった人は苦労が絶えないと周囲から思われていたことは事実だからだ。
「そうよ。どんなに苦労してもこの人といたいと願ったからお父さまと結婚したの」
「お母さま……」
伯爵の表情が苦々しいものから怒ったような顔へと変わった。だがレティは良く知っている。父が怒ったような顔をする時は大抵照れているのだと。
「だからね、レティ。あなたにもそんな結婚をしてほしいの。どんなことがあってもこの人といたいとそう思える人と」
母の言葉にレティは頷けなかった。レティがそう願った人は、もうすぐ他の人と結ばれてしまうのだから。
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