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しおりを挟む「お父さま、私に縁談話はありませんか?」
久しぶりに帰宅した伯爵家での夕食の席で、レティの投げ掛けた言葉に家族は一斉に静まり返った。両親は怪訝そうな表情で顔を見合わせている。レティの帰宅を聞いて、学園の寄宿舎から帰って来た弟のジャックは、やれやれといった調子で呆れ顔を見せた。
「姉上、いきなりどうしたのですか?」
「……だって、私ももう十八歳よ。本当ならずっと昔に婚約者が決まっていても不思議じゃないわ」
「そうですね。ですが姉上は今までそんなこと考えていなかったじゃないですか」
ジャックの指摘にレティはうっ、と言葉を詰まらせた。
あんなに可愛かった弟のジャックも十三歳となり久しぶりに会っても昔のように懐いてはくれない。ジャックは伯爵家の嫡男としてずっと教育を受けており、学園での成績も優秀だと聞いた。貴族の責務を果たしていないレティに思うところがあるかもしれない。
「それは……悪かったと思ってるわよ」
「……姉上?」
「……私が好き勝手しているから家族にも迷惑かけてるってちゃんと分かってるわ。だから、そろそろみんなに迷惑掛けないようにって、そう思って……」
それは半分嘘で、半分本当だった。
通常、貴族の令嬢は料理などしない。ましてや料理人として働いている令嬢なんて、この国ではおそらくレティ一人だろう。ジャックだって両親だって、レティのせいで周りから嫌な言葉を掛けられたのは一度や二度では無い筈だ。
公爵家の馬車に乗って伯爵家に戻る道中でレティは今後についてずっと考えていた。
ミゲルの傍にはずっといられない。それは分かっていたことだ。その時期が今来たと言うだけのこと。だからレティは今後の身の振り方として令嬢らしく縁談話を受ける、という結論に至ったのだ。これまで散々迷惑を掛けてきた家族への贖罪の意味も込めて。
「姉上、僕らは別に迷惑なんて掛けられていませんよ」
「へ?」
「そうよ。レティ、何を心配しているの?」
ジャックも伯爵夫人も不思議そうに言った。
「え」
「うちは父上がああですからね。姉上が多少他の令嬢と違ったって別に誰も気にしませんよ」
「そうそう」
「……おい、父親に向かってああとはなんだ?」
ペルジーニ伯爵がむすっとした顔でそう聞くのをジャックは無視したまま話を続けた。
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