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しおりを挟む「……あの若造は一体何をしてるんだ」
夕食を終え、寝室に戻ったペルジーニ伯爵はソファへ荒々しく座ると怒りを隠そうともせずそう吐き捨てた。
「そう怒らないでちょうだい」
「これが怒らずにいられるか」
伯爵夫人はあらあら、と言いながら夫の隣に腰掛けると彼の背中に手を添えた。
「ふふっ」
「……なんだ」
「私たちの若い頃を思い出したの」
その言葉に伯爵の顔は苦々しいものになっていった。
「あなたからの視線は感じるのに全然声は掛けてくれないし」
「う」
「私から声を掛けてもそっけないし」
「なっ」
「かと思えば、美味しい手作りスイーツは毎日のようにくれるし」
あの頃太らないようにするの大変だったのよ、と伯爵夫人は口を尖らせた。
「……別に太ろうが問題ない」
「まぁ!そこはどんな体型でも美しい、とか愛してる、とか言ってちょうだい」
「む」
「今だってドレスを新調しても褒めてくれないじゃない」
「……どのドレスを着ても変わらん」
夫の一文字に閉じた口を見て、夫人は可笑しそうに笑った。彼女だって分かっているのだ。
先程の“太ろうが問題ない”だって、彼にとっては“どんな体型でも愛している”という意味だと。
“どのドレスを着ても変わらん”だって、彼にとっては“どんなドレスでも美しい”という意味だと。
長年共に歩んできたのだから表情を見れば分かってしまうのだ……勿論たまには言葉にして欲しいとも思っているのだが。
「あなただって人のことは言えないわよ。何年も言葉にしてくれなかったじゃない」
「それは……」
「私が一生懸命アプローチしたから今があるのではなくて?」
「それはそうだが……」
そう、伯爵もまた奥手で無愛想だったため、婚約が結ばれるまで長い時間が掛かった。当時王太子だった国王が尻を叩いてくれねば婚約は難しかっただろう。何より彼女が積極的に話しかけ、度々デートに誘ってくれたおかげで婚約に漕ぎ着けることができたのだ。
「レティもミゲル様も消極的ですからねぇ」
「ふん!」
伯爵は妻の言葉に鼻を鳴らした。
「あの若造のどこが消極的なんだ!あんな、あんな……!」
「もう、あなたったら落ち着いて」
妻に宥められても伯爵の怒りは収まらない。ミゲルへの鬱憤を吐露しながら夜は更けていった。
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