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4章 王妃と側妃
11.公爵家の双子
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午後のお茶の時間になるころ、
レンメール国のレーンガル公爵家から来た2人に会うことができた。
金髪碧眼の姉と金髪緑目の弟の16歳の双子だった。
ジョセの姪と甥なのだろうが、ジョセの姉は正妃の子で、
ジョセは愛妾から生まれた子だった。
年齢も15歳離れているため、ジョセが物心つく前に嫁いでしまっている。
そのため会ったことも数回で、ほとんど記憶にもないらしい。
隣国は簡単に行き来できる距離ではない。嫁いだ後は生家に戻ることも難しい。
姪と甥という血のつながりがあっても他人同然だと思われる。
その公爵家の2人が相談とは、どういうことだろうか。
「マリーリア・レーンガルと申します。
ジョセフィーヌ王妃様の姉のアンフィーヌの娘でございます。」
「同じく息子のジョージア・レーンガルです。」
目の色は違うが、整った顔立ちが似ている。特に目もとはそっくりだ。
どちらもジョセとは似ていないということは、
二人の母親である姉とジョセは似ていないのかもしれない。
さて、親戚としてきたのか、国の代表としてきたのか。
「リーンハルトだ。
留学ということで受け入れたが、何か他にもあるそうだな。」
「はい。相談とお願いがあってきました。」
こっちもお願い、か。王女のお願いを思い出して、顔をしかめてしまう。
それを見ているだろうが、令嬢は顔色一つ変えずに話をつづけた。
「実は、私たちにはもう一人兄がいるのですが、
どうやら魅了の影響下にあるようです。」
「魅了の?」
記憶の底に封じてある令嬢の姿が思い出される。
魅了。あの令嬢との幸せな想い。そして一瞬でなくなった情熱。
誰も覚えていなかった数日間のできごと。
「兄と同様の状態になっている者が数名確認できています。
この国でも以前そんなことがあったと、ロードンナ国の記録で確認しました。」
「ああ、そうか。当時ロードンナ国から王太子が留学して来ていたな。
だけど、この国の者にそれを聞いても無駄だよ。みんな記憶が無いんだ。」
「記憶が無い、ですか?でも陛下は覚えていらっしゃるのでは?」
「俺は覚えてる。誰にもそれを話したことは無いけどね。
なぜかみんな魅了の影響下にあった数日間を覚えていないんだ。
それだけ学園内が支配下にあったということかもしれないが。」
「レンメール国では少し違うようです。
学園内すべてのものが影響下にあるわけではなく、
狙われた数名だけが影響下にあるようです。
ですが、それが魅了の力が強いのか弱いのか、性質が違うのかわからないのです。
お願いというのは、リリーアンヌ様を派遣してもらえないかと。」
「は?」
「ロードンナ国の記録に、リリーアンヌ様が魅了を封じたと書いてあるんです。」
リリーアンヌが?確かに優れた魔術師だとは思うが…。
あの事件を解決したのがリリーアンヌ?
…俺は、どれだけあいつらに迷惑かけてんだ。嫌になる。
「リリーアンヌの派遣は認めない。」
「そんな!」
「何の名目で公爵夫人に協力を要請する気だ?」
「…公爵夫人?王弟妃ではないのですか?」
「王弟は公爵になってる。もう王族じゃない。
他国からの要請に応じる義務はない。」
「…私たちが個人的にお願いするのも無理でしょうか。
せめてお話だけでも。」
「今、弟もリリーアンヌも王宮にいない。
それどころか公爵領にもいない。どこにいるか公にしていないんだ。
会うことも難しいぞ。」
「…そんな。」
「レオルドは王宮内での出来事は把握しているようだ。
留学生が来ていて、魅了で困ってると言う話は伝わるだろう。
だけど、応じてくれるかはレオルド次第だ。期待されても困る。」
しょんぼりとしてしまった双子を見て、少しだけ同情する。
自分自身が魅了にかかったことがあるし、レオルドに暴言吐いたのも覚えている。
おそらく双子の兄も同じような感じになっているんだろう。
心配して何とかしたいと思う気持ちもわからないでもない。
だけど、リリーアンヌは無理だな。
「留学は認める。その間にレオルドから連絡が無ければあきらめて帰ってくれ。
留学に関しては明日学園のものが来て説明がある。
その時に留学期間も決めてくれ。」
「…わかりました。」
レンメール国のレーンガル公爵家から来た2人に会うことができた。
金髪碧眼の姉と金髪緑目の弟の16歳の双子だった。
ジョセの姪と甥なのだろうが、ジョセの姉は正妃の子で、
ジョセは愛妾から生まれた子だった。
年齢も15歳離れているため、ジョセが物心つく前に嫁いでしまっている。
そのため会ったことも数回で、ほとんど記憶にもないらしい。
隣国は簡単に行き来できる距離ではない。嫁いだ後は生家に戻ることも難しい。
姪と甥という血のつながりがあっても他人同然だと思われる。
その公爵家の2人が相談とは、どういうことだろうか。
「マリーリア・レーンガルと申します。
ジョセフィーヌ王妃様の姉のアンフィーヌの娘でございます。」
「同じく息子のジョージア・レーンガルです。」
目の色は違うが、整った顔立ちが似ている。特に目もとはそっくりだ。
どちらもジョセとは似ていないということは、
二人の母親である姉とジョセは似ていないのかもしれない。
さて、親戚としてきたのか、国の代表としてきたのか。
「リーンハルトだ。
留学ということで受け入れたが、何か他にもあるそうだな。」
「はい。相談とお願いがあってきました。」
こっちもお願い、か。王女のお願いを思い出して、顔をしかめてしまう。
それを見ているだろうが、令嬢は顔色一つ変えずに話をつづけた。
「実は、私たちにはもう一人兄がいるのですが、
どうやら魅了の影響下にあるようです。」
「魅了の?」
記憶の底に封じてある令嬢の姿が思い出される。
魅了。あの令嬢との幸せな想い。そして一瞬でなくなった情熱。
誰も覚えていなかった数日間のできごと。
「兄と同様の状態になっている者が数名確認できています。
この国でも以前そんなことがあったと、ロードンナ国の記録で確認しました。」
「ああ、そうか。当時ロードンナ国から王太子が留学して来ていたな。
だけど、この国の者にそれを聞いても無駄だよ。みんな記憶が無いんだ。」
「記憶が無い、ですか?でも陛下は覚えていらっしゃるのでは?」
「俺は覚えてる。誰にもそれを話したことは無いけどね。
なぜかみんな魅了の影響下にあった数日間を覚えていないんだ。
それだけ学園内が支配下にあったということかもしれないが。」
「レンメール国では少し違うようです。
学園内すべてのものが影響下にあるわけではなく、
狙われた数名だけが影響下にあるようです。
ですが、それが魅了の力が強いのか弱いのか、性質が違うのかわからないのです。
お願いというのは、リリーアンヌ様を派遣してもらえないかと。」
「は?」
「ロードンナ国の記録に、リリーアンヌ様が魅了を封じたと書いてあるんです。」
リリーアンヌが?確かに優れた魔術師だとは思うが…。
あの事件を解決したのがリリーアンヌ?
…俺は、どれだけあいつらに迷惑かけてんだ。嫌になる。
「リリーアンヌの派遣は認めない。」
「そんな!」
「何の名目で公爵夫人に協力を要請する気だ?」
「…公爵夫人?王弟妃ではないのですか?」
「王弟は公爵になってる。もう王族じゃない。
他国からの要請に応じる義務はない。」
「…私たちが個人的にお願いするのも無理でしょうか。
せめてお話だけでも。」
「今、弟もリリーアンヌも王宮にいない。
それどころか公爵領にもいない。どこにいるか公にしていないんだ。
会うことも難しいぞ。」
「…そんな。」
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だけど、応じてくれるかはレオルド次第だ。期待されても困る。」
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おそらく双子の兄も同じような感じになっているんだろう。
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だけど、リリーアンヌは無理だな。
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その時に留学期間も決めてくれ。」
「…わかりました。」
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