溺愛王子の甘すぎる花嫁～悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました～

新婚初夜の余韻と、朝の誓い

　夜が明けた。私リーシャは、温かいベッドの中で目覚めた。隣には、私の最愛の夫ビヨンド様が眠っている。彼の力強い腕が、私のお腹に回され、まるで私を抱きしめるように固定されていた。

　あの夜会での出来事から一夜が明け、今はもう誰も私たちを邪魔しない。昨夜は、彼と私の初めての夜だった。ビヨンド様は、人前では厳格で冷静な王子だけれど、私と二人きりになると、とてつもなく甘く、情熱的な男性になる。

「…リーシャ」

　夫の声が、まだ少し眠たげに、私の耳元で囁かれた。私は顔を上げ、彼を見つめる。

「おはようございます、ビヨンド様」

　私の挨拶に、彼は満足そうに笑みを浮かべ、抱きしめる腕にさらに力を込めた。

「おはよう、私の愛しい妻。きみのおかげで、最高の朝だ」

　彼の髪は乱れていて、その素顔は、私が公の場で見慣れている凛々しい王子の顔とはまた違う、心からリラックスした、優しさに満ちた表情だ。私だけの、特別なビヨンド様。

「少し、腕が痛いのですが…」

　私が冗談めかしてそう言うと、彼はすぐに腕の力を緩め、慌てたように私の顔を覗き込む。

「すまない、きみを抱きしめると、つい力を入れてしまう。きみがどこかへ行ってしまいそうで、怖いんだ」

　そう言った彼の表情は、一瞬寂しげで、私は彼の隠された不安を感じ取った。この王子様は、実は私よりもずっと、私リーシャのことを愛してくれているのかもしれない。

「私は、どこにも行きませんよ。私はあなたの妃、永遠に、あなたの隣にいます」

　私はそう言って、彼の頬にキスをした。すると、彼の瞳は再び情熱的な光を帯びる。

「私の可愛い妻よ…きみは、本当に私を夢中にさせる」

　彼は再び私を抱き寄せ、朝のキスを交わした。昨夜の甘い熱が、再び蘇ってくるようだ。

　私たちはそのまましばらく、愛を囁き合った。その間、使用人が部屋に入ってくる気配はない。彼は、私たちが邪魔されないように、細心の注意を払ってくれているのだ。

「リーシャ、これから私たちは、毎日こうして朝を迎えるのだな」

　彼がそう言うと、私は胸がいっぱいになった。

「はい、ビヨンド様。毎日、あなたの隣で目覚めることが、私の一番の幸せです」

「私もだ。きみと結ばれて、私の人生は、本当の意味で始まったと感じている。きみなしの人生なんて、考えられない」

　彼は私を深く愛してくれている。その確信が、私に大きな幸福感をもたらした。

　ベッドから出ると、彼は私を優しくエスコートし、着替えの手伝いまでしてくれた。人前では威厳ある王子が、私リーシャの髪を梳かし、ドレスの紐を結んでくれる。その行為一つ一つに、彼の私への深い愛情が込められているのを感じる。

　朝食の席でも、彼は私リーシャの好物を先に選んでくれたり、私の方にだけ体を向けて話をしてくれたりする。公務があるにもかかわらず、彼は一秒でも長く私と一緒に過ごそうとしてくれるのだ。

「ビヨンド様、政務がおろそかになってしまいませんか？」

　私が心配そうに尋ねると、彼は楽しそうに笑った。

「心配ない。朝の数分で、きみからこれだけの愛とエネルギーをもらえるのなら、一日の政務など、すぐに片付けてしまえるさ。それよりも、きみの笑顔を見る方が、私にはよほど大切だ」

　その言葉に、私は顔を赤くして俯いた。彼は本当に、私を甘やかしすぎる。

「今日の公務が終わったら、すぐに戻る。リーシャ、きみは今日、自分の好きなように過ごしていてくれ。私の愛しい妻が、快適に過ごせるように、侍女たちには申しつけておくから」

「ありがとうございます、ビヨンド様」

　彼の部屋を出て、私は自分の部屋へと向かう。昨日のユーリーの件で、王宮内の空気は一変していた。ユーリーを追放したビヨンド様の判断に、誰も異を唱える者はいない。彼の私への愛が本物であること、そして彼が私を守り抜いたことで、私リーシャの地位も、揺るぎないものになったのだ。