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第6章
69.悪魔VSハイノとワタル <ハイノ視点>
しおりを挟む「行くぞ、ワタル!」
「はい、師匠!」
愉悦を浮かべていたディアボロスがケントへ振り返り今まさに襲いかかろうとしている。そしてケントの傍にはセシルがいた。
ハイノとワタルが2人を守るため悪魔の前に立ち塞がる。
――ガキーン
2人の剣がディアボロスの剣を受け押しとどめるが2人がかりでやっとだ。それを受けて悪魔は一度退きくつくつと笑いだして左手を伸ばす。
その掌からすっと右手のと同じような漆黒の剣が伸びる。
「一人一本ずつで相手をしてやろう。」
「ふざけるなっ!」
「ワタルっ! チッ!」
先んじてワタルがディアボロスのほうへ駆け出す。ハイノはそれを追うように悪魔に剣を向ける。
ワタルは己の剣に光を纏わせそれを悪魔の胴をめがけて袈裟掛けに振り下ろす。ディアボロスはそれを左の剣身で防ぐ。
「くっ!」
予想外に簡単に防がれてワタルが悔しそうに表情を歪める。
一寸遅れてハイノの剣が悪魔に振り下ろされる。ディアボロスはそれを右の剣で防いだ。
「はっ、大したものだな。2本の剣で我らの相手をする気か?」
「ああ、お前らならそれぞれ片手一本で十分だ。」
ハイノの言葉にディアボロスはニヤリとした表情のまま答える。ハイノが今まで対峙してきた敵の中でも桁外れに強い。
(ワタル一人では捌ききれないだろうと加勢をしたがこれは……。)
ワタルは一度剣を引き常人には見えないほどの速度で悪魔の周囲あらゆる角度から突きを折り混ぜながら斬りつける。
ハイノもまたディアボロスの隙を見つけようと軌道を変えながら斬撃を繰り出すが、まるでどこから攻撃が来るか分かっているかのように防がれてしまう。どんなに加速してもそれは変わらない。
「くそっ! なんなんだよ、お前はっ!」
ワタルが一撃も与えられないことに苛立ち声をあげる。
「ワタル、こいつは恐らく我らの攻撃を予測している。いや、予知と言ったほうがいいか。このせいで恐らくケントは傷一つつけることができなかったんだろう。」
ハイノがその剣戟を高速で繰り出し続けながら話す。2人の攻撃が遅いわけではない。常人にはその剣筋すら見えないほどの速度だ。
だがディアボロスはその場を動くこともなく、さらにそれを上回る速度で二人の攻撃を易々と凌ぐ。
「そんな、一体どうしたら!」
「だがこの状態なら両手が塞がって魔法は使えまい。攻撃の手を緩めずにこいつの隙を見つけるしかない。」
ハイノがそう言うとディアボロスが再び楽しくて堪らないというふうにくつくつと笑いはじめる。
「クックックッ。そう思ってるならお前らの頭は本当にめでたいな。」
「なにっ!?」「なんだと……?」
2人の剣を捌き続けながら悪魔は体の中心部分に濃密な魔力を集中させる。ハイノはそれを感知し咄嗟に叫ぶ。
「ワタルっ、避けろっ!!」
「っ!?」
その声に応えワタルはそれを躱そうとするが、丁度真正面にいたワタルに向かってディアボロスの胴から既に魔法が放たれていた。
直径50センチほどの闇の波動が真っ直ぐにワタルに直撃しその体を吹き飛ばす。
「かっ、はぁッ!!」
「ワタルっ!!」
「余所見している余裕があるとは大したものだな。」
ハイノがワタルに気を取られた直後、隙を突かれディアボロスの剣がハイノめがけて振り降ろされる。
はっと振り返りそれを防ごうと剣を構えるが凌ぎきれず、悪魔の剣はその肩をザックリと斬りつけた。
「ぐうゥ……!」
傷が深い。だが追撃を免れるためハイノは何とか後ろに後退した。しかしそのダメージの深さに膝をついてしまう。
それを見たディアボロスは至極つまらなそうに欠伸をしながら話す。
「お前たちの相手もいい加減飽きたな。……ふむ、いっそこの王国を魔物の国にでもしてみたら面白そうだな。」
悪魔はそう言いおいてこれまでとはさらに比べ物にならないほどの邪悪な魔力を纏い、その足を床から浮かび上がらせると、恐るべき速度で天井を突き破り地上へ飛び出していった。
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