【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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番外編

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 誰もが振り返るような美しい子供が羨ましい。

 だけど、この帝国を継ぐのはリエーヴルとロイエの間に生まれる子であるべきだ。どんなに美しくたって、あの女の血を引く子はいらない。


 生まれつき貴族で、神に愛された竜人で、政略結婚で皇后に決まっただけのあの女が憎い。いとも簡単に欲しいものを手に入れたあの女が憎い。

 ――いつまでもロイエの心を惑わそうとするあの女が憎い


 ロイエはリエーヴルに夢中で日々求めてくるけれど。ごく稀に、あの女の通った後をロイエが見つめていることがある。

 そんなとき、廊下に漂う微かな香りが残っている。上品さばかりが鼻に付く嫌なにおいだ。その香りを打ち消すように、お気に入りの香水をつければロイエはリエーヴルを見てくれる。

 もっと、もっとリエーヴルを見て欲しい。子供が欲しい。
 そうすればきっと、あんな顔をしてあの女の後姿を見つめることも無くなるはずだ。

 リエーヴルは女神様に祝福されたロイエの運命の番なのだ。今はいなくても、そのうちきっと子供だってできるはず。

 そうなればヴィクトリアとの子は邪魔になる。生まれついての身分だけであの女との子供が優遇されるなんておかしい。竜人は年月を経るほど強くなると聞いた。そして幼いうちは弱いとも。

 詰ったり抓ったり叩いたり。日々育っていくロイエとヴィクトリアとの間に産まれた男の子に少しずつ嫌がらせをするものの、すぐにあの女やどこかの騎士が城のどこかから駆けつけてきて、なかなか手出しが出来ない。

 流石に堂々と幼い子供に手を出すのは周囲の反感を買ってしまう。予期せぬ事故で怪我をさせてしまっただけで、両親はあんなにもリエーヴルを怒ったのだから。


 ああ、そうだ。ならば、人目の付かない場所でやればいい。

 あの男の子だけじゃない。使用人から聞いたが他にも邪魔者がいるらしい。あの男の子の、双子の兄と姉。兄の方は既に皇太子教育まで受けているのだとか。それはいつか産まれてくるはずの、リエーヴルとロイエの間に産まれる子供のものなのに。

 まったく、あの女もあの女なら子供も子供だ。リエーヴルの邪魔ばかりして。目障りで仕方がない。

 この際だから全員まとめて始末してしまおう。半獣人のリエーヴルでは竜人を害すことはできないけれど、大丈夫、ロイエは番の願いなら何だって叶えてくれる。きっといい方法を考えてくれる。


 そう思って行動に移したのだ。

 ヴィクトリアとその子供達を離宮に閉じ込めて奪ってやった。ゴミはゴミらしく燃やしてやった。

 上手くいった。邪魔者は消えた。
 これでリエーヴルは誰よりも幸せになれる。


 ――――そう、思っていたのに




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