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番外編
7 邪魔な存在
しおりを挟むそこからは順調だった。
ロイエの妻に会った時は、この冗談みたいに美しく上品な竜人の女にリエーヴルが太刀打ちできるか少しだけ心配になったが、ロイエはいつだってリエーヴルを優先してくれた。
あの女――ヴィクトリアに虐められたと言えば証拠がなくとも信じてくれたし、リエーヴルの番としてヴィクトリアに罰を与えてくれた。
キレイなドレス、最高級の宝石、二人きりで過ごせる豪華な宮殿……古いのは嫌、新しいものがいい。ロイエはリエーヴルの望むものは何でも与えてくれた。だけど番だというのに、腹に愛するロイエの子は宿らなかった。ヴィクトリアに見せつけながら、城のあちこちで激しくむつみ合っているというのに。
原因はおそらくあの料理だ。
リエーヴルに作り方を教えてくれた親切な先輩娼婦が言っていた。この料理は効果が強いがあまり繰り返し摂取していると体に影響が出てしまう――と。
愛する番の子が欲しい。運命の番との間にできた子ならば、きっと誰もがうらやむような美しく強い子が生まれるはずだ。
――それなのにその願いは叶わない。
一方でヴィクトリアの腹は日々大きくなる。
当然のようにソレを手に入れているヴィクトリアに腹がたった。あんな女ただの政略結婚相手で、ロイエの番でもなんでもないクセに。どうしていつも貴族の女はリエーヴルの幸せを横取りするのか。
だからリエーヴルはヴィクトリアの心配をしているフリをして、先輩娼婦に教わったあの料理を食べさせた。入れる毒草の量を通常の倍にしたからすぐにでも効果が現れるだろう。
そう思っていたのに、種族的に強い竜人にはまったく効果がないようだった。
ロイエはリエーヴルに夢中で、その存在にすらまったく興味がないようだったが、リエーヴルの妨害むなしく邪魔者は無事に誕生してしまった。
時折、城のどこかから聞こえてくる大きな泣き声を聞いていると、手がかかる弟と共にボロ服を着ていた昔の自分を思い出してみじめになってくる。
生まれた子供は弟達と違い、竜人らしく信じられないくらいに美しい奇跡のような赤ん坊だった。二人の過去の関係性を示すかのように、赤ん坊はロイエにも憎たらしいヴィクトリアにもよく似ている。
ずるい、ずるい、ずるい!!
皇后としての名声に豪華なドレスにロイエの血を引く美しい赤ん坊。ヴィクトリアばかりがいいモノを持っていて不公平だ。
『それ』はロイエの――皇帝の番であるリエーヴルにこそふさわしい『もの』なのに!!
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