【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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番外編

1 ロイエと番

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 ちょっとした冒険のつもりだった。


 人間国への外交へと向かう途中。ロイエは緩衝地帯となっている小国で宿泊をすることになっていた。

 人間の住まう国と獣人の住まう国のちょうど中間地点にあるこの小国は人間が統治しているものの獣人にも理解があり、多くの獣人を労働力として受け入れてくれている。

 ドラゴディス帝国が統治している獣人国の数々は平和で好景気が続いているが、その反面で国としての成長は限界にきており、職にあぶれるものが出てきているのが問題になっていた。

 職にあぶれやすい種族的にも弱い一部の獣人達も、人間に比べれば力が強いし体力もある。弱いと言っても、それはあくまでも獣人国内での話なのだ。だから、労働力が不足していたこの小国と獣人国とは非常にいい関係が築けている。

 中央にある人間国側にとってもこの小国は獣人を受け入れる際の窓口的な役割を担っているので手出しはできない。小さな国ながら国防的にも非常にうまく立ち回っているのだ。

 そんな訳でこの小国は獣人も多く見かけるし治安もいい。
 だからちょっとした好奇心だった。ロイエがお忍びで街歩きをするなら丁度いいと思ったのだ。


(……ヴィクトリアも幼い頃に、父親の侯爵と一緒にあちこち見て回ったと言っていたしな)


 ヴィクトリアが持つ多様な視点はその頃に形作られたものだ。そして、遅くにできた皇帝の一人息子だったロイエには、どんなに望んでも経験できなかったものでもある。

 だからこそ自らが皇帝となった今、ロイエは見分を広めるために自分の目で他国を見て回りたかったのだ。ヴィクトリアが居たら止められたかもしれないが、今回は同行していないからチャンスだと思った。

 なので、護衛や側近に別の用事言いつけて、滞在先の高級宿を抜け出しこっそりと一人で街へと出てみたのだ。


 ――そんなときにロイエはあの女と出会った。




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