【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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番外編

2 誘い

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「待って! ようやく見つけたわぁ♡ 貴方、わたしの運命の番でしょ?」


 歩き慣れない他国。複雑に入り組んだ道を歩いているうちに何やらやたらと賑わっている場所に出た。そこで突然、兎の耳を持つ女に腕をとられ、そんなことを言われたのだ。

 番と言われロイエは驚いた。そんな筈はない。だって、ロイエの番はヴィクトリアなのだ。美しく、頭が良くて、心が落ち着く良い匂いのするヴィクトリア。

 だから、まったく違う匂いを放つ女に腕に絡みつかれてロイエは拒絶した。


「離してくれないか。私には愛する妻がいるんだ」


 サッと相手を見ると、女が持つ兎の耳は獣人と比べてかなり小さい。この国は多くの獣人を受け入れている為、人間と所帯を持つ獣人も多いと聞く。
 その結果、獣人の血を引く半獣人もそれなりの数存在している。この女もそのうちの一人だろう

 双方のルーツを持つ彼らは、今や中立国となったこの国の安定になくてはならないものとなっている。才あるものは重要な役職にも取り立てられて、近々叙爵の予定もあるという。

 貴族のほとんどを人間が占めているこの国にとってそれは歴史的なことだ。この国に限ったことではないが、竜人と比べるとどうしても獣人達は侮られやすい。

 なので、もし本当にそれが実現すれば、この国で働く獣人達の立場も今よりもっと良くなるし、ますます帝国との関係も深まっていくはずだ。


(……そんな輝かしい道を歩いている者が居る一方で、この者は)


 よく見ればこの一帯には怪しげな恰好で男を誘う女がチラホラといる。ロイエにしがみつき、ぐいぐいと柔らかな胸を押し付けてくる女もその仲間だろう。

 運命の番は竜人にとって、いや、獣人にとっても神聖なものだ。それを、こんな風に男を誘う安っぽい文句に使用するだなんて。――しかも、獣人の特徴を色濃く残すその姿で。

 見たところ半獣人のようだが、獣人の血が薄まると番に対する思い入れもその分薄くなるのだろうか。

 それともこの女に限ってのことなのか。……どちらにしても嘆かわしいことだ。




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