第24回漫画大賞 春の陣

第24回漫画大賞 春の陣

選考概要

今回、編集部内で大賞候補作としたのは「神のかくしどころ」「ニライの魔法使い」「上海GHOSTAPARTMENT」「インサイド」「雨のち晴れる頃」「愛しの黒魔女」「仲良くなりたい。」「呪われた竜殺し」「人外お姉さんしか見えない」「幸せの鏡」「スプムーンの怪物」「腐乱のまほろば」「青い青い時間」の13作品。

読みごたえ、選びごたえのある多くの候補作のうち、編集部内で圧倒的な支持を得た「上海GHOSTAPARTMENT」を大賞(賞金50万円)に選出した。2大会連続の「大賞」作品の選出となり、投稿作品がレベルアップしていることを強く感じさせる結果となった。

続く各賞の選考では、光る作家性で支持を集めた「仲良くなりたい。」を編集長賞(賞金10万円)に、「ニライの魔法使い」をネコ部長賞(賞金10万円)に選出した。さらにファンタジー作品の中でも編集部内で高い評価を得た「スプムーンの怪物」を優秀賞(賞金10万円)に、今後の活躍への期待感から「雨のち晴れる頃」と「神のかくしどころ」の2作を特別賞(賞金各5万円)に選出する結果となった。

「上海GHOSTAPARTMENT」は、英国男子のノアが異国上海で京劇役者の曹琳海と出会い、共に幽霊を調査するファンタジーストーリー。高水準な作画と特徴的なキャラクター造形が高く評価された。話の構成もしっかりとまとまっていて読みやすいが、物語やキャラクターの見せ場を充分に描ききるためにも、今後はより大胆な演出で、キャラクターの感情の波を豊かに表現できると、作品のパンチをさらに強めることができるだろう。ぜひ、斬新な物語の切り口を探して、インパクトの強い作品作りに挑戦してみてほしい。

「仲良くなりたい。」は、恋愛に前向きな元男性の主人公が、飲み会をきっかけに気になる同僚男性と距離が近づくオフィスラブ。男女どちらもキャラクタービジュアルに華があり、かつ表情やネーム演出を通してその場の空気感を巧みに伝えることができている。ただ、インパクトのある主人公の設定を、ストーリーに今一歩活かしきれていない印象。面白い要素を考えることはできているので、どうストーリーに活かすか構成をよく練り、さらなる高みを目指してほしい。

「ニライの魔法使い」は、魔法使いの男女二人がモンスターを倒しながら、絆を深めていく魔法ファンタジー。キャラクター同士の会話のテンポのよさ、勢いのあるシーンを自由自在に表現する画力の高さに評価が集まった。丁寧で綺麗な作風が持ち味である一方、せっかくの動きのあるシーンも淡々とした展開に見えてしまう点はもったいない。仕上げの濃淡やダイナミックなコマ割りなど画面作りを工夫して、画力の高さを活かした力強いシーンを作れるとなおよい。

「スプムーンの怪物」は、モンスターの住む世界“スプムーン”に来た主人公のファンタジー奮闘記。華やかな絵柄で、主要キャラクターはもちろん、モンスターや小物にも力を入れて世界観を細やかに描写できているのが好印象。ただ、キャラクターの心理描写が単純化されており、話が単調なテンポで進んでしまった点が惜しい。キャラクターの感情を掘り下げながら、よりドラマチックな演出ができると、さらに多くの読者を惹きつけられるだろう。

「雨のち晴れる頃」は、天涯孤独の少女と山神である鴉天狗・翠華の和風ラブロマンス。ドアマットヒロインが俺様男性に溺愛されるという読者人気の高いストーリーラインを、読み切り作品としてテンポよくまとめることができている。しかし王道故に、一般的な話の範疇に留まってしまった印象。主要キャラに意外性のある展開を盛り込んだり、サブキャラクターの出番を増やすなどして、より読者に期待感を与える展開に挑戦してほしい。

「神のかくしどころ」は、神隠しにあった少女が拳で運命を切り開くバトルアクション。引き込まれる構図を原稿上に上手く落とし込むことができており、特に躍動感のあるアクションシーンが評価を集めた。ただ、線画や仕上げの甘さが目立つ点は課題。画面を丁寧に仕上げ、作画のクオリティアップを図れると、大きく飛躍できるように思える。

惜しくも受賞を逃した7作品もそれぞれに個性があり、高いポテンシャルを秘めた作品だった。

「インサイド」は、人間を襲う化物“インサイド”を討伐するバディアクション漫画。前作から格段に画力が向上しており、躍動感のあるハイレベルな作画が高く評価を受けた。しかし、主人公のインパクトが弱いのが大きな課題。目的や葛藤をさらに掘り下げて、キャラクターを際立たせることで、より印象に残る作品になるだろう。

「愛しの黒魔女」は、魔女と魔女狩りという敵対関係のはずの二人を描いたほのぼのラブコメ。キャラクターの可愛らしいリアクションを描き、ラブコメらしい焦れったい空気感を出せていた。読者人気を集めそうな女性キャラクターの造形は魅力的だが、作画の乱れが見受けられる。人体バランスを練習することで、さらなる魅力を引き出せるはずだ。

「呪われた竜殺し」は、竜殺しをする少年ギムレットが少女ライアと出会い変わっていくファンタジーストーリー。重要な場面を描き込み、エネルギッシュさを感じる作画が素晴らしい。しかし、一読しただけでは、情報が散らばっていて読みづらい出来になっている。情報の出し方を見直して、読みやすい進め方を意識していこう。

「人外お姉さんしか見えない」は、人間の少年が鬼の人外に恋するラブコメディ。キャッチーな題材で存在感を放ち、振り切った個性でキャラクターをパワフルに描けている。一方で、強いデフォルメや早すぎる展開など読者層を狭めてしまっている要素があるので、読者に広く好まれる作品を研究して、独創的な発想を最大限に伝える工夫をしてほしい。

「幸せの鏡」は、不思議な幸運の鏡を受け取った主人公の行く末を描いたダークな短編作品。話のテーマをしっかり提示できており、丁寧な作品の仕上げも好印象。しかし、ストーリー展開は昔からよくあるホラーファンタジーの域を出ていないので、今後はより自分に合うものかつ世間の流行を意識した題材選びにチャレンジして、間口を広げてほしい。

「腐乱のまほろば」は、隔離されたゾンビ側の生活模様を描いたラブコメ作品。安定した画力と意外性のある舞台設定で編集部の注目を浴びた。しかし、現状だと突飛な設定のわりに、展開もキャラクターも「普通」の枠に収まってしまい、読者の想像を超えられていない印象。より設定を活かしたエピソードを加えることができれば、話題性のある作品に昇華するはずだ。

「青い青い時間」は、一人の青年の無気力な日々に、突如生まれた変化を描いたヒューマンストーリー。主人公の心理描写を丁寧かつ繊細に表現しており、味わい深い人間性を描けている。ただ、ストーリーに大きな変化がなく、エンタメ性という面では物足りない。よりドラマチックな展開などを組み込めるといいだろう。

「第24回漫画大賞 春の陣」は946作品が集まり、2回連続の大賞選出という大変喜ばしい結果となった。「漫画を描くのが好き」という気持ちを最大限に表現し、情熱が込められた作品、かつ新進気鋭の才能が数多く集まったことで、様々な意見が行き交う充実した選考となった。次回も素晴らしい漫画と巡り会い、新しい風を感じられる選考になることを願っている。

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応募総数 946作品 開催期間 2025年04月01日〜末日

編集部より

多種多様なキャラクターの描き分けができていることはさながら、どのキャラクターも表情豊かに描写できており、画力の高さがうかがえます。加えて衣装の装飾や背景などの細かい作画から作中の空気感を伝えようとしているのも素晴らしいです。一方で、ストーリーと色々な設定要素を一気に詰め込み過ぎており、牽引力のあるシーンが少なくなってしまった印象です。お話の中で最も見せたい場面を明確にし、見せ場では読者が余韻に浸れるよう、ゆったりとした間を意識するとよいでしょう。確かな表現力と完成度の高い漫画を描き切る技量をお持ちなので、今後は題材やモチーフ選びの間口を広げて、よりエンタメ性を意識した作品作りに期待しています。


編集部より

ポイント最上位作品として“読者賞”に決定いたしました。リアクションや掛け合いが非常に可愛らしく、読者が好感を持てるキャラクター像を作り上げることができています。ただ、カメラワークが単調で、人物のバストアップが多用されている印象ですので、画面構成にもう一歩変化をつけられると、より読みやすくなるでしょう。


編集部より

整った造形のキャラクターがとても目を引く作品。キャラクターの恋愛感情の揺れを入れ込みながら、読者の記憶に残る恋愛シチュエーションも作ることができています。しかし、具体的な心理描写が少ないため、二人の関係性に説得力が足りないのが惜しいところ。また、キャラクター設定を活用した展開が少なく、要素を活かしきれていないように感じました。そのテーマを選んだからこその、掛け合いや心情をお話に組み込めると、よりオリジナリティに磨きがかかります。作品の題材を選ぶ時から、ストーリーとキャラクターを一緒に作り込むことを意識してみてください。

ニライの魔法使い

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11位 / 946件

編集部より

人物の動きを非常に柔らかく描写できており、躍動感のある魔法シーンが楽しい作品でした。自然なアングルの使い分けとパースの効いたポーズの描写ができており、構図の引き出しの多さは今大会で随一と言えるでしょう。全体的に端正で綺麗な描写が多い反面、あっさりとした画面でパンチが弱まっているのがもったいないです。特にアクションシーンなどの見せ場では、効果線を増やしたり、トーンのバリエーションを増やしたりしてみてください。また、話の起伏が弱く展開がやや冗長に感じられるため、よりメリハリのある構成を意識しましょう。


編集部より

ファンタジーと親和性が高くかつ存在感のある絵柄で、人物・背景・小物をまんべんなく丁寧に描けています。また、キャラクターの表情が素敵で、作画面においてもさらなる伸びしろを感じます。今後は人物を滑らかなポージングで描けるよう、画力の向上を目指しましょう。ストーリー面においても、動きのある展開を積極的に盛り込むことができていますが、キャラクターの感情表現はやや記号的になりがちで、今一つ盛り上がりに欠ける印象です。心が動く描写をより緻密に表現して、感情表現に深みを持たせることができると、より多くの読者を獲得できるでしょう。


編集部より

シーンに惹き込む見せ場の意識ができており、読み手の心を揺さぶる演出力が魅力の作品。王道のネタをブレることなく最後まで描き切ることができており、要点を捉えるセンスの良さを感じました。一方で、王道なだけに話の先が読める展開が続いたので、もう一息この作品ならではのこだわりが欲しいです。キャラクターのバックボーンの掘り下げや感情の動かし方など、より丁寧に膨らませたうえでの展開を盛り込むことで、他作品との違いが生まれるはず。さらなるオリジナリティを生み出す努力を貪欲に取り組んでいきましょう。


編集部より

ダイナミックなポーズやコマ割りが散りばめられており、目を引く場面が多く、見応えのある作品でした。アクションシーンでは毎回、奥行きを感じさせる空間描写で、没入感を高めることができています。ただ、決めコマでの演出力が突出している一方で、ストーリー面での説明不足さが非常に気になります。導入で設定・世界観の説明が不足してしまうと、後の話に集中できず読者の離脱に繋がるので、より情報をかみ砕いて説明する意識を持ちましょう。

※受賞作については大賞ランキングの最終順位を追記しております。

奨励賞

Xいいね賞

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