【台本】御託宣

茶屋

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【台本】御託宣

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■登場人物

 川谷 秋絵[かわたに あきえ ](♀)才仮:導いてもらう人。
 山崎 里香[やまざき りか  ](♀)才仮:人の話に首突っ込み、何でも口を挟む。
 大田 直子[おおた  なおこ ](♀)才仮:友人
 若狭 美江[わかさ  みえ  ](♀)才仮:友人
 上村 圭一[かみむら けいいち](♂)才仮:高校時代に里香の好きだった人

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■配役(1:4:0)

  里香(♀)(L119):
  秋絵(♀)(L 64):
  直子(♀)(L 10):
  美江(♀)(L 16):
  圭一(♂)(L 20):

  ※L**:セリフ数
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■台本

<とあるファーストフード店内>

 里香:「直子ぉ、3組の中村に告られたんだって?」

 直子:「え? 誰から聞いたの?」

 里香:「別に誰でもいいじゃない。で、中村ってサッカー部の中村でしょ?」

 直子:「…うん。」

 里香:「もう付き合ってんの?」

 直子:「…ううん。まだ返事してないんだけど…。」

 里香:「直子、騙されてない?
     なんかさ、他の組の子が告白されたとか聞いたかも。」

 直子:「誰に?」

 里香:「中村に。」

 直子:「え? うそ?!」

 里香:「断った方がいいんじゃない? 
     確かにカッコイイけどさ。なんか裏ありそうだし。」

 直子:「え。うん。でも…。」

 里香:「もしかして直子、中村のこと好きなの?」

 直子:「え!? …そんなこと、ないけど。」

 里香:「だよねぇ? だったらさ、やめときなよ。
     直子が悲しむとこなんて見たくないもん。」

 直子:「…そうかな。」

 里香:「そうだよ!」

 直子:「うん…ありがとう。考えてみる。」

  (SE:携帯着信音)

 里香:「あ、ごめーん。電話来ちゃった。私、行くね?」

 直子:「あ、うん。またね。」

  (ファストフード店を出る)

 里香:「もしもしー?」

 美江:「里香? いま大丈夫?」

 里香:「うん。なにー?」

 美江:「あの事なんだけど…どうなったかな?」

 里香:「ん? あの事って?」

 美江:「あ…、ほら、谷崎君のこと…なんだけどさ。」

 里香:「ああ、谷崎のこと。あれ?連絡きてない?」

 美江:「うん。きてないんだよね。」

 里香:「おかしいなぁ。ちゃんと言っておいたのに。」

 美江:「なんて?」

 里香:「ん? んー…どうしよう。」

 美江:「なに?」

 里香:「言った方がいいのかな? どっちがいいんだろ。」

 美江:「なになに!? ちょっと、気になるって。」

 里香:「谷崎なんだけどさ、深夜に女連れで
     道玄坂を歩いてるのを見たって言ってた子がいてさ。」

 美江:「うそぉ? え、誰? その女って誰だったの?」 

 里香:「そこまでは分からないけど。
     確かにイケメンだし、モテそうだもんね。谷崎。」

 美江:「…うそ…そんな。」

 里香:「でも、その子の見間違えとかかもしれないし?
     本人に確認してみたら?」

 美江:「え? どうやって?」

 里香:「直接聞くとか。」

 美江:「無理だよ…。そんなこと怖くて聞けないって。」

 里香:「じゃあ、谷崎のこと諦めたら?」

 美江:「…え?」

 里香:「今ならまだ間に合うよ。本気で好きになって、
     他にも彼女が居るとか分かったら、かなりショックだよ?」

 美江:「でも…。」

 里香:「美江が悲しい想いをしてもいいって言うならいいんだけどさ。
     私は、辛い想いなんてして欲しくないから。」

 美江:「…そっか。ありがとう。考えてみる。」

 里香:「うん。もっといい人に出会えると思うよ?美江なら。」

 美江:「うん…わかった。じゃあ、ありがとうね。」

 里香:「うん、またね。」

 美江:「明日、学校でね。バイバイ。」

  (SE:携帯の通話を切る)

 里香:「まったく、私が居ないとダメなんだから。」

  (少し、にやついた顔でしばらく歩いている)

 里香:「あれ? 圭一ぃ?」

 圭一:「お、里香。」

 里香:「何してるの、こんなところで?」

 圭一:「え、いや…ちょっと、な。」

 里香:「ん~? あやしぃーなー。
     もしかして、誰かとデートだったりして?」

 圭一:「いや、デートって程じゃないんだけど。」

 里香:「え! …そうなんだ。」

 圭一:「はは。一応、内緒にしておいてくれないか?」

 里香:「なんで?」

 圭一:「なんとなく、恥ずかしいからさ。ははは。」

 里香:「…わかった。」

   (秋絵がやって来る)

 秋絵:「上村君。ごめんね、待たせちゃって…あ。」

 里香:「秋絵。」

 圭一:「んじゃ、またな。里香。」

 里香:「あ、うん。またね…。」

 秋絵:「ごめんね。里香。またね。」

  (二人を見送る里香)

 里香:「……”ごめんね”って、何よ。」


<それから5年後の同じ場所:ファストフード店内>

 里香:「この場所…嫌なこと思い出しちゃった。
     高校生の頃だったから…もう五年か。
     あーあ。あんな男のどこが良かったのかなぁ。
     付き合ってみると案外つまんない男だったし…。」

   (足音が近づいてきて、秋絵が声を掛ける)

 秋絵:「あれ? もしかして、里香?」

 里香:「え? 秋絵? …久しぶりだね。」

 秋絵:「本当に久しぶりだね。もう何年振り!?」

 里香:「五年振りくらい…かな。」

 秋絵:「そっかぁ。それくらいになるんだー。」

 里香:「どうしたの?こんな所で。」

 秋絵:「どうしたって事も無いんだけど、彼氏と待ち合わせなの。」

 里香:「え? あ、そうなんだ。恋人いるんだぁ、良かったね!」

 秋絵:「うん。里香ありがとう。」

 里香:「ううん。いいなー、私も恋人」

   (里香が言い終わる前に秋絵が言う)

 秋絵:「里香が選んでくれたから…。
     あの時、彼の告白を受けない方が良いって言ってくれたから。」

  (里香は、秋絵の真っ直ぐな目線に思わず目をそらしながら考えるフリ)

 里香:「…なんだっけ?」

 秋絵:「ほら、高校三年の夏の。
     私が告白されたって、里香に相談した時の話。
     そしたら里香ってば、凄く親身になって相談に乗ってくれて。」

 里香:「…ああ。そうだったっけ。」

 秋絵:「だから、今の幸せは里香のお陰だと思ってる。
     あの時、圭一君と付き合ってたら、今の彼とは出会えなかったと思うし。
     やっぱり里香は、どうしていいか悩んでる時、
     ”進むべき道を教えてくれる人”だよね。」

 里香:「ぁ、はは。そうかな? そんなことないよ。」

 秋絵:「ううん。みんな里香を頼ってたじゃない?」

 里香:「うん…まぁ、そうかもしれなかったけど。
     でも、大したことはしてないし。」

 秋絵:「私は信じてる。里香の言う事に間違い無い、って。」

 里香:「ありがとう。でも、そんな…」

  (少し、秋絵の雰囲気が変わる)

 秋絵:「里香は間違ったこと言わないもんね?
     私達が間違っている時は、キチンと違うって言ってくれる。
     友達付き合いについても色々とアドバイスしてくれて。
     誰とは付き合わない方がいいとか、騙されてるとか。」

    (話を遮るように慌てる里香)

 里香:「あのさ!ちょっと、これから用事があるんだよね?
     そろそろ失礼してもいいかな?」

 秋絵:「あ、ごめんなさい。そうだったんだ。」

 里香:「(安堵して)うん。だから、ごめんね。」

 秋絵:「ううん。こっちこそ、ごめんね。忙しいのに引き止めちゃって。」

 里香:「…じゃあ」

   (席から立ち上がろうとする里香を制するように)

 秋絵:「里香。一つだけ教えてくれないかな。」

   (中腰のまま里香が固まる)

 里香:「え? …な、なに? 急いでるんだけど。」

 秋絵:「簡単なことだから。すぐに済む。ね、いいでしょ?お願い。」

 里香:「えっと…なに?」

   (深呼吸をして再び席に着く)

 秋絵:「里香が決めることは、いつも絶対に正しい。
     だから助けて欲しいの。」

 里香:「だから何を?」

   (里香は少々、苛立ちを見せる)

 秋絵:「恋人から…プロポーズされちゃったの。」

  (携帯を取り出し、気にする素振りで携帯を見る里香)

 里香:「え? あ、そうなんだ。よかったじゃん!」

 秋絵:「でね。いつものように決めて欲しいんだけど…。」

 里香:「何を…?」

 秋絵:「私、今の彼と結婚した方が幸せになれるのか?
     今の彼とは結婚しない方が幸せになれるのか?」

 里香:「…え?」

 秋絵:「ねえ、教えて。
     した方が幸せになれる? それとも、しない方がいい?」

 里香:「そんなこと自分で決めることでしょう?」

    (里香はそっぽを向く)

 秋絵:「今まで全部、里香が決めてくれたじゃない。
     だから今回もお願い。」

    (真剣な顔の秋絵をじろりと睨むように見る里香)

 里香:「…秋絵、幸せそうな顔してるし。”結婚する”…で良いんじゃない?」

 秋絵:「そう。ありがとう、里香ちゃん。」

   (秋絵は嬉しそうに笑う)

 里香:「…話って、それだけ?」

 秋絵:「うん。ごめんね。」

 里香:「いや、いいよ。じゃあ、行くね。」

 秋絵:「あ、最後に。連絡先交換しない?」

  (一瞬、右手に持った携帯を隠すように引いたが、諦める)

 里香:「…うん。いいよ。」

 秋絵:「うん。またね。」

 里香:「じゃ、また。」

   (里香は手を軽く振り、店を出る)


<そして一年後:クリスマスイブにホテルの一室>

 里香:「ふわー。おいしかったぁー!」

 圭一:「そりゃよかった。」

 里香:「でも、まさかまた一緒にイブを過ごせるなんてね。」

 圭一:「そうだな。大学の時に1回あったくらいだよな。」

 里香:「プレゼント、何もらったっけ?」

 圭一:「それは言うなよ。あの頃は金が無かったんだからさ。」

 里香:「じょーだん。」

  (SE:携帯着信音)

 圭一:「ったく。おい、携帯鳴ってるぞ。」

 里香:「え? んもー誰ぇ?」

 圭一:「俺、シャワー浴びてくっから。」 

 里香:「いってらっしゃーい。」

  (SE:携帯通話音)

 里香:「もしもし?」

 秋絵:「もしもし。里香?」

 里香:「え? 誰?」

 秋絵:「私、秋絵。」

 里香:「あ。秋絵…なに、どうしたの?」

 秋絵:「ねえ、里香。どうして?」

 里香:「え? 何が?」

 秋絵:「彼が居ないの。イブなのに、彼が帰ってこないの。」

 里香:「帰ってこないって…仕事とか?」

 秋絵:「携帯もつながらないの。最近、夜遅いし。あんまり顔合わせないし。」

 里香:「えー? それって、浮気でもしてるのかもよぉ~。」

 秋絵:「そんなはず…ないよ。」

 里香:「帰ってこないっておかしいでしょ?
     んー…それなら、会社じゃないの?」 

 秋絵:「会社には電話した。でも、もう帰ったって。
     よく行く居酒屋さんにも電話したけど今日は来てないって。
     彼の友達に聞いても、彼の居場所が分からないの。」

 里香:「…それ、ちょっとやりすぎじゃない?」

 秋絵:「なにが? だって、彼が隣にいないなんて不幸じゃない。
     こんなに好きなのに。どうして、彼は傍にいないの?
     それに私達、結婚したばかりで新婚なのに。」

 里香:「……。」

 秋絵:「里香。私が結婚したら幸せになるって言ってくれたよね。」

 里香:「言ったっけ?」

 秋絵:「言ってくれたよ! 結婚したほうが幸せになれるって。」

 里香:「…あ、ごめん。いま出先だから、また電話するね。ごめんね。」

  (SE:携帯通話終了音)

 圭一:「あれ?電話してたんじゃないの?」

 里香:「う、うん。ちょっとね。」

  (SE:携帯着信音)

 圭一:「おいおい、また電話かよ。良く鳴る電話だな。
     …まさか、浮気相手とかじゃないだろうな?」

 里香:「違う、違う!
     なんか知り合いが酔っ払って、イタズラ電話かけてくるの。」

  (SE:携帯の電源を切る)

 圭一:「おいおい。電話でなくていいのかよ?」

  (圭一は、シャンパンをグラスに注いでいる)

 里香:「うん、いいの。気にしないで。
     それに、圭一との時間を邪魔されたくないし。」 

 圭一:「そっか。ほら、シャンパン。」

  (圭一は、グラスの一つを里香に手渡す)

 里香:「あ、日付かわって25日になったよ。」

 圭一:「メリークリスマス。」

 里香:「メリークリスマス。」 

  (SE:二つのグラスが当たって鳴る音)


<夜が明けて、12月25日の昼間に里香のマンションのエントランス>

 里香:「やっと着いた。ちょっと買いすぎちゃったかな…。重っ。
     でも、圭一が来るから美味しい手料理を作ってあげないと。」

  (食材の袋を提げて、重そうにしている里香)

 里香:「ええっと…鍵は…っと。」

  (SE:鍵を取り出す音)

  (オートロックに鍵を差し込んだ時、背後から)

 秋絵:「里香…。」

 里香:「え!?」

 秋絵:「里香…。」

 里香:「あ、秋絵? な、なんでここにいるの?」

 秋絵:「携帯電話がつながらなくて。」

 里香:「つーか、なんで私ん家知ってるのよ?!」

 秋絵:「聞いたの。でも、そんな事はどうでもいいの。」

 里香:「ちょっと!」

 秋絵:「里香。おかしいの。幸せじゃないの。どうして?」

 里香:「…あ。あのさ、秋絵。どうしちゃったの?」

 秋絵:「おかしいの…幸せじゃないの。」

 里香:「はあ?…夫婦喧嘩でもしたの?」

 秋絵:「夫婦…喧嘩?」

 里香:「男と女だし、長い間一緒にいたらそんなこともあるって。」

 秋絵:「でも、幸せじゃない。”幸せになれる”って言ったじゃない?」

 里香:「あのさぁ、こだわり過ぎなんじゃない?」

 秋絵:「幸せになれるって…。」

 里香:「そんな簡単に幸せなんて」

   (食い気味に秋絵が言う)

 秋絵:「里香が教えてくれた。」

 里香:「え。…いや、だから。」

 秋絵:「結婚したら幸せになれるって、言ってくれた。
     里香はいつも私のことを想って道を示してくれたでしょ?
     圭一君の時も、部活も、友達も、勉強も、塾も。
     ”私が居ないとダメだね”って、里香は言った。」

 里香:「あ、いや…それは。」

 秋絵:「だから。里香が彼と一緒になったら幸せになれるって言ったから、
     彼と一緒になって頑張ってきた。
     殴られても、踏まれても、煙草を何度も押し付けられても。」

 里香:「え!? DVじゃん! なんで、そんなになるまで」

 秋絵:「里香が言ったから。
     幸せになれるって言ったから。
     里香は”私の事を信じて”って言ったから。」

 里香:「それは、大昔の話じゃない!?」

 秋絵:「里香が言ったんだよ。
     だから、頑張ってきたのに。
     ねえ、私…幸せじゃないよ? どうすればいいの?」

 里香:「い、いや…やめて! 触らないで!」

 秋絵:「里香ぁ…分からないよ。助けて、里香。
     幸せって何? 彼はドコ?どうすればいい?」

  (里香は、マンション内。オートロックの扉の向こうへ逃げる)
  (足早に部屋へ向かって扉を開ける)
  (自宅の扉を閉める:バタン)

 里香:「はぁっ、はぁっ、はぁっ…。なんなのよ。(つばを飲み込む)」

  (インターホン音:ピンポーン)

 里香:「ひっ! インターホン? 嘘でしょ…。」

  (恐る恐る、インターホンのディスプレイを見る)
  (ディスプレイに秋絵の姿が映っている)
  (通話ボタンを押す)

 里香:「な、なんなのよ…?!」

 秋絵:「どうして、教えてくれないの?」

 里香:「もう知らないわよ!! 
     そんな、DV男なんかどうなったって知ったこっちゃないでしょ!
     好きにしなよ、別れるなり、やり返すなりさ!」

 秋絵:「好きにして…いいの?」

 里香:「秋絵が幸せになれると思うようにやれば
     幸せになれるんじゃないの!?」

 秋絵:「ありがとう。じゃあ、そうする。
     また、助けてもらっちゃったね。」

   (ディスプレイの中の秋絵は背中を向けて歩いていく)

 里香:「はぁ~……。何なのよ…。」

  (里香は、その場に座り込んでしまう)


<そして数時間後:圭一が里香の部屋に> 

 圭一:「おじゃましまーす。おお?
     すげーいい匂いがしてんじゃん。」

 里香:「でしょー?」

 圭一:「めちゃめちゃ腹減ってきたぜ。何作ってんだよ?」

 里香:「まだ、内緒ぉ~。」

  (里香はキッチンへ戻る)

 圭一:「内緒かよ~。
     …あれ?里香ぁー。携帯鳴ってるぞ。」

 里香:「えー?だれー?」

 圭一:「ん~…分かんね。」

 里香:「え、誰だろ。」

   (キッチンからリビングに里香が来る)

   (SE:携帯通話音)

 里香:「はーい。もしもしー?」

 秋絵:「私、秋絵。」

 里香:「!!」

   (昼間のことを思い出す里香)

 秋絵:「里香?」

 里香:「あ、うん。なに?
     いま料理中で手が離せないんだよね。」

   (携帯を持ったまま、里香はキッチンへ戻る)

 秋絵:「里香の言うとおりにしたよ。」

 里香:「…え? 言うとおりって?…旦那さんのこと?
     もしかして、やり返し…たわけないか。
     じゃあ、別れることになったとか?」

 秋絵:「うん。凄く楽になった。」

 里香:「そう! 良かったね! ほら、私の言ったとおり」

  (食い気味に秋絵)

 秋絵:「気分がいいの。これが幸せってことだったのかな?」

 里香:「それは、ちょっと違うかもしれないけど…。」

 秋絵:「でね、里香。お願いがあるんだけど。」

 里香:「なに?」

 秋絵:「彼をどうすればいい?」

 里香:「え?別れるんじゃないの?さっさと離婚届だして、
     そのまま連絡とか取らなきゃいいだけじゃない?」

 秋絵:「連絡はもう取れないと思う。
     そうじゃなくて…。
     部屋の掃除をした方がいいかな?
     あちこち赤くなっちゃって。臭いもね、嫌なの。」

 里香:「…秋絵…? 何、言ってるの?」

 秋絵:「これって、捨てた方がいいの?
     粗大ごみでいいのかな?
     大きいから切った方がいい?
     ねぇ、里香……教えて。」
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