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第一章
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三話
ガゼボに残った僕達は、三人で机を囲んでいた。
僕には不相応で、とても恐れ多い空間だ。
緊張を落ち着かせるために、カップを持ち上げて紅茶を喉に流し込む。
「猫の姿になる時って、本来の大きさよりも身体が小さくなるよね。痛みは感じないの?」
「少し違和感があるくらいで、全然痛くないです」
「へぇ~」
頬杖をつきながら、殿下が僕を見上げた。
キラキラとしたご尊顔が眩しく、皇子様なんだなあ・・・と、実感する。
「いいな~、僕も猫になりたい」
「だめです。殿下を猫に変えたりしたら、陛下に顔向けできません・・・・・・」
「僕も陛下の膝の上に乗ったら、猫ハーレムだよ」
「何処で覚えたんですか!?」
爽やかな笑顔で口にした殿下のお言葉に、手にしたカップを落としそうになる。
闇堕ち殿下も嫌だけど、ハーレム殿下エンドも避けたい・・・・・・。
いや、殿下が幸せなら僕はそれでも・・・。
「フィンの言い草だと、他人を猫に変えることも出来るようだな?」
「はい。維持出来る時間は短くなりますけど、可能だと思います」
「・・・・・・ふむ・・・」
静かに足を組んで座っていたカーマイン様が、思案げに顎に手を添えた。
「すぐに城を出るぞ」
「あ、その手があったね」
うんうん、頷く殿下。
城を出る・・・? どの手ですか・・・・・・?
理解が追いつかずにぼーっとしていたら、おふたりに両手を引かれて歩き始めていた。
「あの、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか・・・・・・?」
「うん、なんでも聞いて」
深呼吸をして、恐る恐る尋ねる。
「陛下は外出をお許しになられたのですか・・・?」
「あはは、陛下ならきっと許してくれるよ」
それって、無断外出ってことじゃないですか!
殿下とカーマイン様を誘拐した容疑を掛けられる未来を想像して、身震いする。
ぴたりと足を止めると、手が繋がっていた殿下とカーマイン様も、僕に合わせて動きを止めた。
「せめて護衛騎士をお連れくださいっ!」
「それが嫌だから抜け出すんだろ? 早く俺たちに魔法を掛けろ」
「ぼ、僕の首が飛んでしまいます・・・・・・」
「大丈夫大丈夫。その時は僕が無理やり頼んだって言うから」
「うぅ・・・皇族に魔法を掛けるだなんて・・・・・・!」
僕にはそのような不敬行為は出来ません。
でも、殿下のご命令である以上、従うのが宮廷魔法使いの道理なような・・・。
「おい、百面相する暇があるなら早く魔法を使え」
「今回だけですからね!」
カーマイン様の般若のようなお顔に、僕の意思はすぐに折れてしまった。
声変わりもまだしていないのに、どこからそのように低いお声が出たんですか・・・・・・。
手のひらに魔力を集中させて、黒い渦のようなものを作り出す。
渦の中心から飛び出た枝分かれする黒いモヤが、おふたりの身体を包み込んだ。
黒いモヤが消えると、そこには赤毛の猫と、光り輝くトラ猫の姿があった。
カーマイン様が隣を見て、僕の方を見る。
「レインは置いていくか」
「なんか僕、光過ぎじゃない?」
殿下がご自身の姿を確認される。
金色に近いオレンジの毛色が輝いていた。
「殿下の光の性質が、僕の魔力を浄化しようとしているのかもしれません」
「急がないと魔法が解けそうだね」
「裏口から出るぞ」
先頭を走るカーマイン様の後を追う。
目的地の裏口には門を守る騎士がいた。
カーマイン様から目配せを受ける。
僕はおふたりを優しく抱き上げて、門番の騎士さんに声を掛けた。
「お疲れ様です」
「フィンレー! 今日も魔法の仕事か?」
騎士さんは僕を見ると、満面の笑みを浮かべた。
嘘をつくのは心苦しいけど、殿下とカーマイン様のために頑張らないと・・・!
「いえ、今日は殿下にお使いを頼まれたんです」
「若いのに大変だな。寄り道せずに早く帰ってくるんだぞ」
疑う様子もなく、門を開いてくださった。
会釈して早々に立ち去ろうとしたその時、後ろから騎士さんに声をかけられる。
「ところで、その子猫たちはどうしたんだ?」
「あ、この猫は・・・その・・・・・・」
まずい、言い訳を考えていなかった。
勝手に敷地内に入って来たと言ったら、騎士の方々が警備を怠ったとお叱りを受けてしまう。
おふたりに顔を近づけて、助けを求める。
「殿下・・・カーマイン様・・・・・・」
「「・・・・・・・・・にゃー?」」
「猫語っ・・・!」
僕の腕の中に居る殿下とカーマイン様が、目を細めて悪い顔をしていらっしゃる。
この状況を楽しんでいますね!?
「最近僕が飼い始めた猫です。たまには散歩に連れて行った方が良いかなあ~、なんて・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
この言い訳、ちょっと苦しかったかもしれない。
嘘をついたことに対する申し訳なさと焦りで、キョロキョロと視線が泳いでしまう。
騎士さんは無言で僕を見つめると――僕の腕の中に手を伸ばした。
右手で殿下、左手でカーマイン様の頭を撫でる。
「そりゃあ良いこった。新しい家族が出来て良かったな。逃がさないようにしろよ」
「ああっ・・・! あ、ありがとうございます!」
「「・・・・・・・・・・」」
ひぃっ・・・! 騎士さん、そんなにわしゃわしゃと乱雑に撫でないでください!
目尻に涙が溜まるのを感じながらも、どうにか門を通り抜ける。
人気が無い場所に移動して、僕は魔法を解いた。
ガゼボに残った僕達は、三人で机を囲んでいた。
僕には不相応で、とても恐れ多い空間だ。
緊張を落ち着かせるために、カップを持ち上げて紅茶を喉に流し込む。
「猫の姿になる時って、本来の大きさよりも身体が小さくなるよね。痛みは感じないの?」
「少し違和感があるくらいで、全然痛くないです」
「へぇ~」
頬杖をつきながら、殿下が僕を見上げた。
キラキラとしたご尊顔が眩しく、皇子様なんだなあ・・・と、実感する。
「いいな~、僕も猫になりたい」
「だめです。殿下を猫に変えたりしたら、陛下に顔向けできません・・・・・・」
「僕も陛下の膝の上に乗ったら、猫ハーレムだよ」
「何処で覚えたんですか!?」
爽やかな笑顔で口にした殿下のお言葉に、手にしたカップを落としそうになる。
闇堕ち殿下も嫌だけど、ハーレム殿下エンドも避けたい・・・・・・。
いや、殿下が幸せなら僕はそれでも・・・。
「フィンの言い草だと、他人を猫に変えることも出来るようだな?」
「はい。維持出来る時間は短くなりますけど、可能だと思います」
「・・・・・・ふむ・・・」
静かに足を組んで座っていたカーマイン様が、思案げに顎に手を添えた。
「すぐに城を出るぞ」
「あ、その手があったね」
うんうん、頷く殿下。
城を出る・・・? どの手ですか・・・・・・?
理解が追いつかずにぼーっとしていたら、おふたりに両手を引かれて歩き始めていた。
「あの、ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか・・・・・・?」
「うん、なんでも聞いて」
深呼吸をして、恐る恐る尋ねる。
「陛下は外出をお許しになられたのですか・・・?」
「あはは、陛下ならきっと許してくれるよ」
それって、無断外出ってことじゃないですか!
殿下とカーマイン様を誘拐した容疑を掛けられる未来を想像して、身震いする。
ぴたりと足を止めると、手が繋がっていた殿下とカーマイン様も、僕に合わせて動きを止めた。
「せめて護衛騎士をお連れくださいっ!」
「それが嫌だから抜け出すんだろ? 早く俺たちに魔法を掛けろ」
「ぼ、僕の首が飛んでしまいます・・・・・・」
「大丈夫大丈夫。その時は僕が無理やり頼んだって言うから」
「うぅ・・・皇族に魔法を掛けるだなんて・・・・・・!」
僕にはそのような不敬行為は出来ません。
でも、殿下のご命令である以上、従うのが宮廷魔法使いの道理なような・・・。
「おい、百面相する暇があるなら早く魔法を使え」
「今回だけですからね!」
カーマイン様の般若のようなお顔に、僕の意思はすぐに折れてしまった。
声変わりもまだしていないのに、どこからそのように低いお声が出たんですか・・・・・・。
手のひらに魔力を集中させて、黒い渦のようなものを作り出す。
渦の中心から飛び出た枝分かれする黒いモヤが、おふたりの身体を包み込んだ。
黒いモヤが消えると、そこには赤毛の猫と、光り輝くトラ猫の姿があった。
カーマイン様が隣を見て、僕の方を見る。
「レインは置いていくか」
「なんか僕、光過ぎじゃない?」
殿下がご自身の姿を確認される。
金色に近いオレンジの毛色が輝いていた。
「殿下の光の性質が、僕の魔力を浄化しようとしているのかもしれません」
「急がないと魔法が解けそうだね」
「裏口から出るぞ」
先頭を走るカーマイン様の後を追う。
目的地の裏口には門を守る騎士がいた。
カーマイン様から目配せを受ける。
僕はおふたりを優しく抱き上げて、門番の騎士さんに声を掛けた。
「お疲れ様です」
「フィンレー! 今日も魔法の仕事か?」
騎士さんは僕を見ると、満面の笑みを浮かべた。
嘘をつくのは心苦しいけど、殿下とカーマイン様のために頑張らないと・・・!
「いえ、今日は殿下にお使いを頼まれたんです」
「若いのに大変だな。寄り道せずに早く帰ってくるんだぞ」
疑う様子もなく、門を開いてくださった。
会釈して早々に立ち去ろうとしたその時、後ろから騎士さんに声をかけられる。
「ところで、その子猫たちはどうしたんだ?」
「あ、この猫は・・・その・・・・・・」
まずい、言い訳を考えていなかった。
勝手に敷地内に入って来たと言ったら、騎士の方々が警備を怠ったとお叱りを受けてしまう。
おふたりに顔を近づけて、助けを求める。
「殿下・・・カーマイン様・・・・・・」
「「・・・・・・・・・にゃー?」」
「猫語っ・・・!」
僕の腕の中に居る殿下とカーマイン様が、目を細めて悪い顔をしていらっしゃる。
この状況を楽しんでいますね!?
「最近僕が飼い始めた猫です。たまには散歩に連れて行った方が良いかなあ~、なんて・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
この言い訳、ちょっと苦しかったかもしれない。
嘘をついたことに対する申し訳なさと焦りで、キョロキョロと視線が泳いでしまう。
騎士さんは無言で僕を見つめると――僕の腕の中に手を伸ばした。
右手で殿下、左手でカーマイン様の頭を撫でる。
「そりゃあ良いこった。新しい家族が出来て良かったな。逃がさないようにしろよ」
「ああっ・・・! あ、ありがとうございます!」
「「・・・・・・・・・・」」
ひぃっ・・・! 騎士さん、そんなにわしゃわしゃと乱雑に撫でないでください!
目尻に涙が溜まるのを感じながらも、どうにか門を通り抜ける。
人気が無い場所に移動して、僕は魔法を解いた。
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