ラスボスに転生したので、主人公に殺して貰おうと思います

白鳩 唯斗

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一章

3 会話

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 俺は生まれて来なければ良かったみたい。いつもみんなに会うとそう言われる。俺のお母さんは数年前に急に血を吐き出して死んでしまった。紅茶を飲んだだけだったのに。お父さんは貴族でお母さん以外に結婚してる女性が居たんだって。その女性は俺のお母さんの事を嫌っていた。その人の侍女から出された紅茶だったから、多分殺されちゃったんだと思う。俺も一緒に殺して欲しかったな。

 俺はいつもみんなに殴られたり暴言を吐かれたりしてる。なんでか分からないけどお母さんが平民だからダメだって言ってた。でも、お母さんが言ってたけど子供は一人で作れるものじゃ無いらしい。お父さんにも責任があるんじゃないかなって思って言ってみたら余計に怒られた。もう何も言わないようにしよう。

 俺には唯一好きな場所がある。そこは悪魔さんが住んでいるってみんなが恐れている泉。名前は誰も分からないけど、恐ろしい泉なんだ。だから誰も近寄らない。俺は今日もいつも通り泉に居た。最近あまりご飯を食べていないせいかお腹が痛い。体が上手く動かなくて怪我をしてしまう時もあるけど、誰も手当してくれないし、放置してる。泉に沈んだら死ねるのかもしれない。そう思いながら泉を眺めていたら、急に何かが降ってきた。

 屋敷の誰かが虐めに来たのかなって思って顔を上げたら、天使さんが居た。髪の毛が太陽の光でキラキラしてて、目も宝石みたいな天使さん。でも、ここに住んでいるのは恐ろしい悪魔ってみんな言ってた。だからみんなみたいに俺のことを殴るのかなって聞いてみたら、殴らないって。笑顔もキラキラしてて綺麗だった。

 今は天使さんが隣に座ってる。俺がしてたみたいに泉を眺めていた。天使さんは少し悩む素振りをして、俺に向かって微笑んだ。

「改めて挨拶しようか。こんにちは、少年」

 そう言って手を差し出してきたけど、よく分からない。こんにちはってどこの言葉だろう。聞いたことない挨拶だ。俺はお父さんに家の品位を下げないように最低限の教養を身につけろって言われて少しだけ勉強している。だけど聞いたことの無い挨拶。でも、手を差し出された意味は分かったから恐る恐る握ってみた。

「細すぎる··········君は何歳なのかな?」

 俺の手を触って聞いてきた。ちゃんと覚えてないけど多分10歳くらいって言ったら驚いてた。天使さんは「ちょっと待っててね」って言ってどこかに飛んで行っちゃった。お空に帰ったのかな? 俺は待ってて、って言われたからそのまま待つ事にした。


 *******


 主人公は予想していたよりも歳を取っていた。手を握ったけど10歳にしては細すぎる。体の所々にある傷や痣も気になった。ラスボスの僕なら魔法で治せないかなぁと、試しに腕に傷をつけてみる。

「うわぁ、再生能力高すぎ」

 傷は直ぐに塞がってしまった。魔法を使わなくても自然と治るとかチート過ぎるでしょ。仕方が無いので次は深い傷をつけてみる。ガラス片で切った時に分かったけど、傷は深ければ深いほど治るのに時間がかかるようだ。血がポタポタ流れ、すぐに再生しきらないように切っていく。うん、このくらいで良いかな。心の中で治れと念じると、小さな光と共に一瞬にして傷が塞がった。

「なるほど。これが魔力ってやつか」

 体の中にポカポカした、血液とは違う何かの流れを感じ取った。恐らくこれが魔力だろう。ゲームで見た魔法の再現も出来ないかと試してみると、大きな炎を生み出すことが出来た。ほんと流石ラスボス。威力が少し強すぎる気もするけど、まぁ制御すれば問題ない。僕は急いで主人公の居る宿星の泉に戻った。



「ちょっと傷を見せてくれる?」
「分かりました」

 主人公が上裸になり傷を見せてくれる。どうやら下半身には傷は無いようだ。身長差的に大人の拳は上半身にしか当たらないからだろうけど。とりあえず魔法で傷を治していく。ついでに洗浄魔法で全身を綺麗にすれば完璧だ。

「はい終わり。大人しくできて偉い偉い」
「········俺は、偉くないです······」

 頭を撫でたら俯いてしまった。別に僕が偉いと思ったから言ってるだけなんだけどなぁ。否定から入るのは良くないね。

「君は偉いよ。僕がそう思った。それじゃあダメなのかい?」

 「ダメなら悲しいなぁ」と、我ながらわざとらしく言ってみる。ついでに両手で顔を覆えば首を縦にブンブンと振った。よく子供たちにやっていた得意技だ。これをやれば大抵の子は頷いてくれるんだよね。

「天使さんは··········なんで俺なんかを助けてくれるんですか?」
「ぶふッ!?」

 天使さん。不意に言われたその言葉につい吹き出してしまった。僕が天使さん········。目の前に居るのは君が将来倒すべきラスボスだよ~、と言いたくなる。しかし今の主人公にはそういった存在が必要なのだろう。何か支えになるものが。

「んー。そうだね。僕がとっても悪い天使さんだからだよ。ほら、翼だって黒いでしょ?」
「悪い天使さんには見えません········」

 ボソッと不機嫌そうに言う主人公。どうやら悪い天使さんはお気に召さないようだ。僕は曖昧に微笑んで誤魔化す事にした。
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