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〜8歳〜
番外編・クロードは何処かが壊れていると思う
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あれから数週間。
王子様とカーマイン様が、正式にレイン様のお友達になった。
レイン様は相変わらずツンツンしてるけど、自室ではいつも楽しそうに、色々な事を話してくれる。
そして──俺は公爵様から命を受け、レイン様の剣術の先生に任命されていた。
「クロッ! 剣術なんてやりたくないッ!」
「では、こうしましょう。もしも、俺の身体に一撃でも当てられたら、授業を免除にします」
「ッ!? そ、そんなの無理に決まってるだろッ!?」
訓練場の一端──訓練用の木刀を右手で構えて、レイン様の攻撃を受け流す。
まだ幼いレイン様の攻撃は、力任せで単調だ。流れを読み易い。
「はぁ···はぁ······もう、無理ッ!」
「隙ありです」
「ッ!?」
レイン様が弱音を吐いて、あからさまに大きな隙を見せたので、懐に入って頭にポンと触れる。
「っっっーーー~!!! も、もう一回だッ!」
「ふふふ、気が済むまで何度でも、お付き合い致します」
レイン様は、努力家で負けず嫌いだ。これは、ゲームで遊んでいた時から知っている、レイン様の魅力だ。
「クロなんて大嫌いッ!」
「ッ······! れ、レイン様!? 精神攻撃は辞めてください!」
剣を受け止めた瞬間、レイン様が叫んだ言葉が、胸にグサッと来る。本音では無いですよね!?
レイン様に嫌われる位なら自害します!
「ふんっ! 隙あ──」
「りません」
「なっ!?」
ショックのあまり、少し立ち止まったが、すぐにレイン様の木刀を弾く。
「リオン! 危ない!」
「え······?」
そこで──見学をしていた王子様とカーマイン様目掛けて、木刀が飛んでいった。
「《キト》」
左手で身体に触れて、能力を使う。瞬間、周囲の速度が、遅く感じた。剣がゆっくりと、だが確実に、王子様達に向かって動いていく。
「《ヌペル》」
木刀の軌道に先回りして、王子様達を庇う様に立つ。そして──左手で身体に触れて、時間を元の速度に戻す。
──瞬間、俺は木刀を真正面から受けた。自戒の念も込めて。
「ッ!? クロード······いつの間に·······」
「!? だ、大丈夫!?」
お二人が、突然現れた俺を見て目を見開く。頭から血が流れて来るけど、今はそれ所じゃない。
「申し訳ありません。王子殿下、カーマイン様。どの様な処分でも、甘んじてお受け致します」
「そんな事より、さっさと治療しろ」
「頭上げて? 僕達は大丈夫だから······ね?」
「王子殿下。俺は、意図していないとはいえ、王族である御身を危機にさらしました。慈悲は必要ありません」
王子様の前に跪いて、剣を差し出す。王族に危害を加えた場合、大逆罪に値する。刑罰は、死刑が妥当とされる。
王族に自ら処刑されるのならば、レイン様の名誉にも傷がつかないはずだ。
「えぇ······僕、人殺したりしたくないよ? 頭上げて?」
「それは、自害しろという事でしょうか?」
「いや、違う違う! そ、それより、僕達にも剣術を教えて欲しいなぁ。丁度体が鈍りそうだったんだ」
「畏まりました」
王子様のお言葉に、大きく頷く。剣術を教える、つまりは、俺を剣でなぶり殺しにしたい、という事に違いない。
レイン様の名誉を守る為なら、甘んじて受け入れます!
「はぁ······確かにこいつは強いが、俺はあまり好かん」
「えー、仲良くしようよ。毒も治してくれたし、僕の命の恩人なんだよ?」
「···········チッ、リオンがこう言ってるんだ。さっさと頭を上げろ、クロード」
「本当に、申し訳ございませんでした」
何度も頭を下げて、レイン様が駆け寄って来たので立ち上がる。
「クロ! だ、大丈夫か!?」
「《ホラ》·········はい! 無傷なので、ご安心ください!」
「はぁ······心配させるなッ!」
咄嗟に能力を使って、傷を治して顔を上げる。レイン様が、モブ如きの俺を心配してくれるなんて、感激です!
「嬉し過ぎて涙が出そうです」
「こいつ──多重人格なんじゃないか?」
「あはは······僕は面白くて結構好きだなぁ。これから宜しくね、先生」
「はい! 全身全霊、なぶり殺されてみせます!」
「え?」
「お前··········何を言ってるんだ······?」
カーマイン様が、呆れた様な声でボソリと言う。王子様も驚いた様な表情されて、何かおかしな事でも言ったでしょうか?
「王子殿下は、俺を剣でなぶり殺しにしたのでは?」
「うん、その発想は無かったよ······」
「どんな思考回路でそうなるんだ」
お二人が遠い目をして、ため息をつく。詳しく聞いてみた所、本当にただ剣術を教えて欲しかっただけみたいだ。
王子様とカーマイン様が、正式にレイン様のお友達になった。
レイン様は相変わらずツンツンしてるけど、自室ではいつも楽しそうに、色々な事を話してくれる。
そして──俺は公爵様から命を受け、レイン様の剣術の先生に任命されていた。
「クロッ! 剣術なんてやりたくないッ!」
「では、こうしましょう。もしも、俺の身体に一撃でも当てられたら、授業を免除にします」
「ッ!? そ、そんなの無理に決まってるだろッ!?」
訓練場の一端──訓練用の木刀を右手で構えて、レイン様の攻撃を受け流す。
まだ幼いレイン様の攻撃は、力任せで単調だ。流れを読み易い。
「はぁ···はぁ······もう、無理ッ!」
「隙ありです」
「ッ!?」
レイン様が弱音を吐いて、あからさまに大きな隙を見せたので、懐に入って頭にポンと触れる。
「っっっーーー~!!! も、もう一回だッ!」
「ふふふ、気が済むまで何度でも、お付き合い致します」
レイン様は、努力家で負けず嫌いだ。これは、ゲームで遊んでいた時から知っている、レイン様の魅力だ。
「クロなんて大嫌いッ!」
「ッ······! れ、レイン様!? 精神攻撃は辞めてください!」
剣を受け止めた瞬間、レイン様が叫んだ言葉が、胸にグサッと来る。本音では無いですよね!?
レイン様に嫌われる位なら自害します!
「ふんっ! 隙あ──」
「りません」
「なっ!?」
ショックのあまり、少し立ち止まったが、すぐにレイン様の木刀を弾く。
「リオン! 危ない!」
「え······?」
そこで──見学をしていた王子様とカーマイン様目掛けて、木刀が飛んでいった。
「《キト》」
左手で身体に触れて、能力を使う。瞬間、周囲の速度が、遅く感じた。剣がゆっくりと、だが確実に、王子様達に向かって動いていく。
「《ヌペル》」
木刀の軌道に先回りして、王子様達を庇う様に立つ。そして──左手で身体に触れて、時間を元の速度に戻す。
──瞬間、俺は木刀を真正面から受けた。自戒の念も込めて。
「ッ!? クロード······いつの間に·······」
「!? だ、大丈夫!?」
お二人が、突然現れた俺を見て目を見開く。頭から血が流れて来るけど、今はそれ所じゃない。
「申し訳ありません。王子殿下、カーマイン様。どの様な処分でも、甘んじてお受け致します」
「そんな事より、さっさと治療しろ」
「頭上げて? 僕達は大丈夫だから······ね?」
「王子殿下。俺は、意図していないとはいえ、王族である御身を危機にさらしました。慈悲は必要ありません」
王子様の前に跪いて、剣を差し出す。王族に危害を加えた場合、大逆罪に値する。刑罰は、死刑が妥当とされる。
王族に自ら処刑されるのならば、レイン様の名誉にも傷がつかないはずだ。
「えぇ······僕、人殺したりしたくないよ? 頭上げて?」
「それは、自害しろという事でしょうか?」
「いや、違う違う! そ、それより、僕達にも剣術を教えて欲しいなぁ。丁度体が鈍りそうだったんだ」
「畏まりました」
王子様のお言葉に、大きく頷く。剣術を教える、つまりは、俺を剣でなぶり殺しにしたい、という事に違いない。
レイン様の名誉を守る為なら、甘んじて受け入れます!
「はぁ······確かにこいつは強いが、俺はあまり好かん」
「えー、仲良くしようよ。毒も治してくれたし、僕の命の恩人なんだよ?」
「···········チッ、リオンがこう言ってるんだ。さっさと頭を上げろ、クロード」
「本当に、申し訳ございませんでした」
何度も頭を下げて、レイン様が駆け寄って来たので立ち上がる。
「クロ! だ、大丈夫か!?」
「《ホラ》·········はい! 無傷なので、ご安心ください!」
「はぁ······心配させるなッ!」
咄嗟に能力を使って、傷を治して顔を上げる。レイン様が、モブ如きの俺を心配してくれるなんて、感激です!
「嬉し過ぎて涙が出そうです」
「こいつ──多重人格なんじゃないか?」
「あはは······僕は面白くて結構好きだなぁ。これから宜しくね、先生」
「はい! 全身全霊、なぶり殺されてみせます!」
「え?」
「お前··········何を言ってるんだ······?」
カーマイン様が、呆れた様な声でボソリと言う。王子様も驚いた様な表情されて、何かおかしな事でも言ったでしょうか?
「王子殿下は、俺を剣でなぶり殺しにしたのでは?」
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