真冬の痛悔

白鳩 唯斗

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いつも後ろに

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 俺が考えている事くらい知ってる癖に、赤メッシュは後ろを着いてきた。

 生徒会室には専用のカードキーが無ければ入れないのだが、マスターキーを所持している風紀委員長は軽々と入ってくる。

 完全に職権乱用だ。演技なんて忘れて大きくため息を吐くと、赤メッシュは愉しそうに笑った。

「お前、敬語とか絶対向いてないだろ。変な演技してるから病むんだよ」

「······そうですか。人をメンヘラ扱いするのは辞めて欲しいですね」

「情緒不安定なのは確かだろ」

「·············」

 元凶が一体何を言っているのだろうか。気を紛らわせる為に、赤メッシュを無視して仕事を始める。

 そういえば先日、転校生がどうのと理事長が言っていた。風紀委員長ならば何か知ってるかもしれない。

 さり気なく話題を切り替える為にも聞いてみるか。

「赤メ······風紀委員長。転校生について、何か知りませんか?」

 危ない。つい癖で赤メッシュと呼びそうになってしまった。『転校生』という単語を聞くと、赤メッシュは怪訝そうな顔をした。

「転校生について聞かされていないのか。いや、そういう配慮なのか······」

「?」

 一人ブツブツと呟く赤メッシュに、首を傾げる。"お前は"聞かされて居ないという事は、逆に言えば俺以外は聞かされているということになるのだが。

 転校生は代々生徒会が迎えに行く慣習があると聞くので、おそらく俺だけ省かれて居るのだろう。

 仕事に支障をきたす訳でも無いのでどうでも良いが、最低限の情報くらいは伝えて欲しかった。

「まぁ、お前は知らなくて良い。ていうかあまり関わるな」

「分かりました」

 独り言を終えた赤メッシュが隣に座り、俺の手から書類を奪い取る。彼の優秀さは理解しているつもりだし、関わるなと言うなら素直に従った方が良いだろう。

 そんな事より、今は奪われた書類を取り返すのが先だ。

「返してください」

「お前の仕事量多過ぎないか? 慎也と奏の分まで引き受けてるのか?」

「あなたには関係無いですよね。返してください」

 本当に余計な事ばかりする奴だ。書類を取り返そうと腕を伸ばすと、そのまま掴まれる。

 腕に力を入れてブンブン振り回すが、全く離してくれない。それどころか、そのまま空いた左手で書類を捌き始める始末だ。

 その様子を見て、やっぱりこいつは俺より優秀なのだと再確認した。
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みんなの感想(1件)

マリア
2023.07.01 マリア

続きがすごく気になります!
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