西成ストレイドッグス

狂気男

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始まり

西成

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いつからだろうか。
こんな暮らしになってしまったのは。
俺が十二の頃に親父が死んでからというと
母親が日雇いで夜通し働き、
首の皮一枚で繋がったような生活だった。
そもそも力也という名前も親父がつけた。
ここ、西成地区は所謂社会的弱者が多い
地域なのだ。それに、暴力団関係も多い。
強く育ってくれるようにという事で、
この名前をつけたと母親から聞いた。
この話を母親からされたのが十七の時だ。
それからは早かった。
元々母が抱えていた持病が悪化したのだ。
しょっちゅう病院に母の付き添いとして、
行っていた。
それから一年程たった頃だろうか
母の容態が悪化し入院しなければ、
ならない事を知った。
俺は施設に預けられた。
母は予断を許せない状況で緊急治療室に
入る事になった。
それからは面会も許されない事が続いた。
施設に入って一ヶ月程でその時は訪れた。
あっけない人の死を目の当たりにして、
病院の霊安室でうずくまった。
涙が溢れてきた。
泣きながら施設の人に、
送られたのを覚えている。
施設の暮らしは地獄だった。
日々職員から怒号が飛び交う毎日。
泣き喚く声も堪えなかった。
飯も無いに等しい。
残飯のような物が一日一食だけ出ていた。
地獄のような毎日。
歯車の様に進んで、毎日同じ時間に止まる。
それが習慣になっていた。
俺の視界からは色が消えていた。
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