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【5話】次の作戦
しおりを挟む翌日、正午過ぎ。
中庭の端にあるベンチには、リヒトとステラが隣り合って座っていた。
二人の間にあるのは、二つのバスケット。
ステラが持参してきたものだ。
「どうぞ、リヒト様」
二つのバスケットのうちの一つを持ったステラが、それをリヒトに差し出した。
(俺の分まで作ってくれるとか、なんていい子なんだ!)
昨日の『明日は昼食を持ってこないでくださいね』という言葉の意味を、リヒトはここで理解。
「ありがとうな!」
差し出されたバスケットを、感動しながら受け取る。
バスケットの中には、昨日と同じく、いっぱいのサンドイッチが入っていた。
どれも美味しそうだ。
さっそく一切れを手に取って、勢いよくかぶりつく。
「うん、やっぱりうまい!!」
「良かったです。これから学園のある日は毎日、リヒト様の分も作ってきますね!」
「マジか! それはめっちゃ嬉しい! ……けど、いいのか? 作るの大変だろ?」
ステラのサンドイッチは、かなり手が込んでいる。
一人分作るだけでも大変そうなのに追加でもう一人ともなれば、かなりの負担になること間違いなしだ。
「私、嬉しいんです」
心配するリヒトに、ステラは笑顔で応えた。
「自分の作った料理を、美味しい、と言って嬉しそうに食べてくれる人がいる。私はそれが、とっても嬉しいんです!」
(え、なにこの子。めっちゃ眩しいんだが!)
あまりにも純粋で綺麗な言葉に、リヒトの心は浄化されていく。
そして、こう思う。
(やっぱり、手料理って最高だなぁ)
女の子に手料理を作ってもらうという、男子憧れのシチュエーション。
それのすごさを、リヒトはあらためて実感していた。
ピロン!
手料理のありがたさを実感したリヒトの頭に、突如として浮かび上がったものがある。
それは、マジカルラブ・シンフォニックのワンシーン。
ステラの手料理を食べたクロードが、いたく感動するというシーンだ。
その出来事がきっかけとなり、クロードとステラの距離がグッと縮まっていく。
(クロードも俺と同じで、女の子の手料理に弱い。つまり、クロードとの距離を縮めるには手料理を振る舞えばいい……そういうことだな!)
リリーナの恋心を叶えるために、次に何をすべきか。
ステラの手料理のおかげで、それが分かったような気がした。
放課後。
旧校舎の空き部屋には、リヒトとリリーナがいた。
約十日ぶりの対面である。
「ずいぶん待たせたと思えばいきなり呼びつけるなんて、あんた何様のつもりよ?」
「待たせたのはすまなかった。今日呼んだのは、次の作戦を閃いたからだ」
丸テーブルの対面でイライラしているリリーナへ、リヒトは自信満々に口を開いた。
「弁当を渡せ」
「は? いきなり何よ?」
「自作弁当を作るんだ。そしてその弁当を、明日の昼クロードに渡す。『あなたのために愛情こめて作ってみたの』って、具合にな! そうすれば、クロードとの距離がグッと縮まること間違いなしだ!」
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