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【27話】変わり果てたかつての国
しおりを挟むオフェリア、アディール、ティグスは、ラグドア王国の王都に到着する。
「なに……これ」
広がる光景に、オフェリアは衝撃を受けていた。
ひび割れた道の上を歩く住民の表情は、みな死んでいる。
どこにも活気がない。
瓦礫の山がそこらに点在している。
魔物の襲撃によって建物が被害を受けたのだろう。
復旧が追いついてないのか、そのまま放置されていた。
(……以前とはまったく違うわ)
オフェリアが知っているこの場所は、もっと活気に溢れていた。
今は見る影もない。
無残な姿となっていた。
ラグドア王国での思い出は、そのほとんどが辛いものだ。
しかしここまで変わってしまった状態を見ると、悲しい気持ちになってしまう。
見知っている場所がここまで変わっているのは、やっぱりショックだった。
王宮に着く。
「我はここで待っている。二人ともくれぐれも気を付けてくれ」
ティグスの言葉に、オフェリアとアディールは頷く。
ティグスから降りた二人は、入り口へ向かった。
「ベルク様に会いに参りました」
入り口に立っている警備兵に、オフェリアはそう告げる。
警備兵はすぐに頷いた。
「国王様よりお話は伺っております。国王様は部屋におられますので向かってください」
「ありがとう」
オフェリアとアディールは王宮に入る。
ベルクの部屋へ向かった。
オフェリアはベルクの部屋のドアをノック。
声をかける。
「オフェリアです。入ってもよろしいでしょうか」
「おぉ……! 入ってくれ!」
部屋の中から聞こえてきたのは、ベルクの押し出したような声だった。
二人は部屋へ入る。
机に座っていたベルクが立ち上がった。
瞳からは涙を流している。
ベルクの顔には、悔しさと申し訳なさの色がにじんでいた。
「できればこんなことはしたくなかった。だが結局私は、お前に頼るしかなかったのだ。すまないオフェリア……!」
「気にしないでください。これはいい機会なんです。ベルク様への恩を返したいと、私はずっとそう思っていましたから」
ベルクには数えきれないくらいの恩がある。
それを少しでも返せることが、オフェリアは嬉しかった。
「それでベルク様。私はなにをすればいいのでしょうか?」
「邪悪な心を持つ魔物が入ってこれないよう、国の外に結界を貼ってほしい。それと、大勢いるケガ人の治療をお願いしたい。……色々と頼んですまないが、やってくれるだろうか?」
「もちろんです」
微笑みを浮かべて、返事をしたとき。
ガチャ。
ドアが開いた。
「オフェリア!」
背中越しに声が聞こえてきた。
男性にしては高いその声は、聞き覚えのあるものだった。
(……ルブリオ様)
振り向いてみると思った通り、そこにはルブリオがいた。
口元にはいっぱいの笑みが浮かんでいる。
「さっき、通路を歩いている君の姿をたまたま見かけてね。ふふふ……会いにきたんだ」
「なにを勝手に入ってきているんだルブリオ! 部屋で静かにしていろと言ったであろう! 今すぐ出ていけ!」
ベルクから鋭い声が飛ぶも、ルブリオには聞こえていなかった。
口角を上げたまま、オフェリアに近づいてくる。
「君に伝えたいことがあるんだ。本当に大切なものはなにか――そのことに僕は気づいたんだよ。オフェリア……もう一度僕とやり直そう」
「…………はい?」
この人はいったいなにを言っているんだろう。
まったく理解できない。
「僕はルシアに騙されていただけなんだ。被害者なんだよ」
(つまり、かわいそうな僕に同情してほしい……そういうことかしら?)
でもオフェリアは、まったく同情する気にはなれなかった。
騙したルシアも悪いけど、その嘘を鵜吞みにしたのはどこの誰だろうか。
ルブリオはただ、すべての責任をルシアに押し付けたいだけなのだろう。
それにそもそも、やり直したいなんて少しも思わない。
オフェリアにはもう大切な人がいる。
ルブリオのような性格が最低な人間とやり直すなんてことは、天地がひっくり返ってもありえない。
「私はあなたのところへ戻る気はありません」
「そんなこと言わずに――」
「おい。それ以上彼女に話しかけるな。不快だ」
氷のように冷たい言葉がぴしゃりと飛んできた。
隣ではアディールが、静かだが鋭い怒りをあらわにしていた。
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