2 / 12
【2話】トラブル発生!?
しおりを挟む翌朝。
エレナは私室の大きなベッドの上で目覚めた。
「ぐっすり眠れたわ!」
大きなベッドはふかふかで、最高の寝心地だった。
ハーシス家で使っていた壊れかけのボロベッドとは、まるでものが違う。
おかげで、質の良い睡眠をとることができた。
こんなに気持ちいい気分で目覚めたのは、初めてのことだった。
「失礼します」
声のあとに、ドアが開く。
ドアの向こうから部屋に入ってきたのは、メイド服を着た年配の女性だった。
「おはようございますエレナ様。私はメイド長のイザベルと申します。今後とも、よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくね」
礼儀正しくお辞儀をするイザベルに、エレナもまた頭を下げた。
「朝食の準備が整いました。一階の食堂へご案内いたします」
「ありがとう」
ベッドから降りたエレナは、パジャマから白いワンピースドレスに着替えた。
二階にあるエレナの私室から、イザベルと一緒に食堂へ向かう。
大きな両扉を開けて、二人は食堂に入る。
このとき、エレナはワクワクしていた。
(やっと双子ちゃんと対面できるわ!)
ジオルトの双子の娘――フレイ、アクアはものすごい美形らしいという噂を聞いている。
そんな美少女双子姉妹に会えることをエレナは楽しみにしていた――のだが。
「あれ? ……双子ちゃんがいない」
食堂には誰もいなかった。
昨夜の話を聞いたから、ジオルトがいないのは知っている。
でも双子の娘たちまでいないのは、どうしてだろうか。
「フレイ様とアクア様は、既に朝食を済ませております。今は令嬢教育の真っ最中ですね」
固まっているエレナに、イザベルが答えを教えてくれた。
(そんな……会えるかと思って楽しみにしてたのに)
美少女双子姉妹に会う機会は、どうもおあずけらしい。
エレナはがっかりしながら、ひとりで朝食を食べた。
食事を終えたエレナは、私室へ帰ってきた。
ソファーに腰かけ、天井を見上げる。
「これからどうしようかしら?」
公の場でドゥランシア公爵夫人として振る舞うこと――それが契約で定められているエレナの仕事だ。
でも、それ以外の仕事はない。
つまり、これからの予定がなにも決まっていなかった。
ハーシス子爵家にいたときは父の命令で、家の雑用や家業に関わる書類仕事をやらされてきた。
その仕事量は膨大で、自由時間なんてほとんどなかった。
それから解放されたのは嬉しい。
でもいざ自由となると、なにをしていいかわからなかった。
「……うーん」
「失礼します」
贅沢な悩みで困っているところに、イザベルがやってきた。
「エレナ様にご報告がございます。本来であればジオルト様へお伝えすべき内容なのですが、不在ですのでこちらへ参った次第です」
この屋敷では当主であるジオルトが最も偉くて、その次に偉いのが公爵夫人であるエレナだ。
当主であるジオルトがいない今、エレナがその代理ということだろう。
昨日ここにきたばかりで右も左もわからないが、ともかく話だけでも聞いてみるしかない。
「フレイ様とアクア様の令嬢教育を担当していた教育係が、たった今おやめになってしまいました」
「…………え?」
エレナは目を丸くする。
悠々自適な生活を送れると思っていたのに、いきなりトラブルに直面してしまった。
「教育係はフレイ様から繰り返し罵倒を受けていたようで、ついに耐えられなくなってしまったみたいです」
これで何度目でしょうか――そう呟くイザベルは、困り顔をしていた。
「フレイが原因で教育係がやめたのは、これが初めてじゃないの?」
「はい。フレイ様が原因で、もう何人もの教育係がやめております」
「どうしてフレイはそんなことをするの?」
「それがわからないのです」
「……ともかく、早く新しい教育係を探さないと!」
このままでは、双子が令嬢教育を受けられれない。
令嬢教育は将来立派な淑女になるために必要なことだ。
一刻も早く代わりを見つける必要がある。
「その通りなのですが……すぐには難しかもしれません」
イザベルは苦い顔をした。
「これまでのことがあって、ドゥランシア公爵令嬢を担当した教育係がすぐやめるというのは有名な話となっています。そのため教育係をしてくれそうな方にオファーを出しても、断られてしまうのです。先ほどやめられてしまった方も、かなり苦労して見つけてきたのですよ」
問題のある場所に行きたがる人間はいないだろう。
イザベルの言う通り、新たな教育係を見つけるのはかなり難しいかもしれない。
「……アクア様が不憫でなりません」
(確かにそうね)
イザベルの小さな呟きに、エレナは心の中で同意した。
双子のもう一人であるアクアはなにもしてないというのに、令嬢教育を受けられなくなってしまった。
それはかわいそうだ。
(どうにかできないかしら…………そうだわ!)
「……イザベル。令嬢教育で使う教材を、大至急用意してちょうだい!」
どうにかしてアクアを助けたいエレナは、自らが教育係になろうと考えた。
35
あなたにおすすめの小説
【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~
夏芽空
恋愛
両親と妹に虐げられ続けてきたミレア・エルドール。
エルドール子爵家から出ていこうと思ったことは一度や二度ではないが、それでも彼女は家に居続けた。
それは、七年付き合っている大好きな婚約者と離れたくなかったからだ。
だがある日、婚約者に婚約破棄を言い渡されてしまう。
「君との婚約を解消させて欲しい。心から愛せる人を、僕は見つけたんだ」
婚約者の心から愛する人とは、ミレアの妹だった。
迷惑料として、金貨三枚。それだけ渡されて、ミレアは一方的に別れを告げられてしまう。
婚約破棄されたことで、家にいる理由を無くしたミレア。
家族と縁を切り、遠く離れた田舎街で生きて行くことを決めた。
その地でミレアは、冒険者のラルフと出会う。
彼との出会いが、ミレアの運命を大きく変えていくのだった。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
【完結】私は聖女の代用品だったらしい
雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。
元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。
絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。
「俺のものになれ」
突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。
だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも?
捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。
・完結まで予約投稿済みです。
・1日3回更新(7時・12時・18時)
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
突然の契約結婚は……楽、でした。
しゃーりん
恋愛
幼い頃は病弱で、今は元気だと言うのに過保護な両親のせいで婚約者がいないまま18歳になり学園を卒業したサラーナは、両親から突然嫁ぐように言われた。
両親からは名前だけの妻だから心配ないと言われ、サラーナを嫌っていた弟からは穴埋めの金のための結婚だと笑われた。訳も分からず訪れた嫁ぎ先で、この結婚が契約結婚であることを知る。
夫となるゲオルドには恋人がいたからだ。
そして契約内容を知り、『いいんじゃない?』と思うお話です。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる