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【31話】本心と決意
私室のベッドの縁に腰をかけているエレナは、小さく息を吐いた。
『君という素晴らしい女性に出会えたことが、俺の人生で最大の幸運だ』
先ほどジオルトが言ってくれたその言葉が、ずっと頭の中をぐるぐる回っていた。
そのせいで、まだ胸がドキドキしている。
体も熱い。
ジオルトへの気持ちは早く諦めなきゃいけないのに、そう思えば思うほど強く意識してしまう。
恋愛感情というのを抱いたのはこれが初めてだが、こんなにも厄介なものだとは知らなかった。
「入るわよ!」
フレイの元気な声とともに、ドアが勢いよく開いた。
フレイとアクアが部屋に入ってくる。
ご機嫌に歩いてきた二人は、エレナを挟むようにしてベッドへ腰を下ろした。
「エレナはお父様のこと好き?」
げふんげふん。
エレナはおもいっきりむせる。
ベッドへ座ってから一秒とたたずに、フレイはそんなことを言ってきた。
(どういうことなの!?)
いきなりすぎて驚く。
心臓が飛び出るかと思った。
呼吸を整えたエレナは、フレイへ顔を向ける。
「話が見えないのだけど、どういうことか説明してもらってもいいかしら?」
「私とアクアはね、エレナとお父様に普通の夫婦になって欲しいの。だからさっき、お父様にそれをお願いしにいったのよ」
「でもお父様は、エレナ様もお父様のことを好きじゃないといけない、ってそう言ったのです。ちなみにお父様は、エレナ様のことを愛しているって言っていましたよ!」
元気いっぱいに報告してくるアクアを見つめるエレナは、目をぐるぐると回していた。
知らない間に色々な展開が起こりすぎている。
一気に言われたせいで脳がパンクしていた。
ちょっと休みたい。
「私ね、エレナと本物の家族なりたいって、そう思ってるわ」
フレイが真剣に見上げてきた。
反対側では、アクアもまた真剣な顔でエレナを見上げている。
(……二人とも、本気なのね)
ジオルトへお願いしにいってくれたのは、エレナのためだ。
エレナと本当の家族になりたくて、フレイとアクアは一生懸命頑張ってくれた。二人の強い気持ちが、痛いほどに伝わってくる。
「エレナはどう思ってるの?」
「……私も同じ気持ちよ。フレイ、アクア、ジオルト様――三人と本物の家族になりたいわ」
ずっと隠すつもりでいた本心を話す。
双子は本気になってくれた。
だからエレナも、嘘はつかない。
正直な気持ちを、隠すことなくありのままに伝える。
「私、ジオルト様に言うわ。本当の夫婦になろう、って」
本心をずっと隠すつもりでいたいが、もうその必要はないだろう。
ジオルトに断られてこの幸せな生活が壊れるのが嫌で、エレナは本心を隠そうと決めた。
でもアクアの言う通りジオルトもエレナのことを好きでいてくれるなら、本当の夫婦になれるはずだ。
この生活は終わらない。
これからもずっと幸せな時間が続いていく。
「でも、少しだけ時間をちょうだい」
本物の夫婦になりたいと告白すれば、ジオルトはすぐにでも受け入れてくれるだろう。
だからといって、今すぐそれを言いに行こうとは思わない。
これは大事なことだ。
ちゃんと心の準備をしてから、ふさわしい場所で言いたかった。
「うん! いつまでも待つわ!」
「わかりました! 楽しみにしていますね!」
双子の声色はまっすぐ。
エレナへの期待と信頼でいっぱいに溢れていた。
「私今日はエレナと一緒に寝たい!」
「私もそうしたいです!」
「うんうん! そうしましょ!」
体を倒した三人は、ベッドに横になる。
ギューッと仲良くくっついて目をつぶる三人の口元には、そっくりな笑みが浮かんでいた。
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