【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空

文字の大きさ
34 / 35

【34話】強い意志 ※ジオルト視点


「そう言わないでくださいよ。とっても大事なことなんですから。私、ジオルト様と――」

 なにかを言いかけたところで、エレナが目を閉じてしまった。
 
「おいエレナ! しっかりしろ!!」

 ジオルトは必死で呼びかける。
 喉が枯れるくらいの大声を出した。
 
 だが、エレナの瞳は開かない。
 それどころか、顔からどんどん生気が抜けていってしまう。
 
「目を開けてくれ!! お願いだから……」
「あはははは!!」

 すぐ近くから、甲高い笑い声が響いた。
 エレナを刺した黒髪の女だ。
 
「貴様は!?」

 その女の顔に、ジオルトは見覚えがあった。
 前妻のシスティだ。
 
「予定とは違ったけど、目的は果たせたわ。これでようやくあんたも、私と同じ顔になったわね! ねぇ今どんな気持ち? 悔しい? 悲しい? 殺したいほど私が憎い? あはははは!!」
「よくもエレナを……!!」

 奥歯を噛みしめたジオルトは、システィを睨みつける。
 限界まで尖った青色の瞳に宿るのは、とてつもない憎悪だ。
 
 腹の奥底から、どす黒い感情がせり上がってくる。
 激しい怒りと大きな憎しみが、体全体に広まっていく。
 
「エレナ! しっかりしてよ! こんなのでお別れなんてあんまりよ!」
「うわあああああん! エレナ様ああああああ!」

 フレイとアクアの泣きじゃくる声が聞こえてきた。

 それを聞いてジオルトは我に返る。

(システィに構っている場合ではない!)
 
 そんなことよりも先に、ジオルトにはやらなければならないことがある。
 今はともかく、エレナの命を救わなくてならない。
 
 ジオルトはエレナへ、両方の手のひらを向けた。
 回復魔法をかける。
 
 だが、効かなかった。
 
 エレナの顔は真っ白のままだ。
 生気が戻らない。
 
(普通の魔法ではダメか……! こうなれば、『特上魔法』を使うしかない!)

 特上魔法というのは、魔法を極めた一握りの者だけが使える特別な魔法だ。
 通常の魔法よりも、ずっと高い効果を持っている。
 
 だが、タダで使えるものではない。デメリットがある。
 大きな力の代償として、残りの寿命の一割が消費されてしまうのだ。
 
 そのデメリットゆえに、特上魔法が使用された例というのはこれまでにほとんどない。
 みんな寿命が惜しいのだ。
 
 でもジオルトは、少しだって迷いもしなかった。
 
(エレナを助けるためなら、一割どころか全部だってくれてやる!!)

 両方の手のひらを、もう一度エレナへ向ける。

「目を覚ましてくれ、エレナ!」
 
 俺が必ず助ける! ――そんな強い意志を抱きながら、特上魔法を使う。
 
 ジオルトの手のひらから、淡い光が放たれた。
 それがエレナの体を包みこむ。
 
 エレナの指先がピクリと動いた。
 真っ白だった表情に、色が戻っていく。
 
「……あれ? 私、どうして……」
 
 エレナが目を覚ました。
 不思議そうな顔で、空を見ている。
 
「エレナ!!」

 エレナの体を起こしたジオルトは、おもいっきり抱きしめた。
 
 こうしてもう一度、エレナに会うことができた。
 それがどれだけ嬉しいことか。
 
 感情が溢れて止まらない。
 それをぶつけるように、強く抱きしめる。
感想 2

あなたにおすすめの小説

オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~

夏芽空
恋愛
両親から虐げられている伯爵令嬢のアリシア。 ある日、父から契約結婚をしろと言い渡される。 嫁ぎ先は、病死してしまった姉が嫁ぐ予定の公爵家だった。 早い話が、姉の代わりに嫁いでこい、とそういうことだ。 結婚相手のルシルは、人格に難があるともっぱらの噂。 他人に対してどこまでも厳しく、これまでに心を壊された人間が大勢いるとか。 赤い血が通っているとは思えない冷酷非道なその所業から、青血閣下、という悪名がついている。 そんな恐ろしい相手と契約結婚することになってしまったアリシア。 でも実際の彼は、聞いていた噂とは全然違う優しい人物だった。

月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜  嘘つきの妹に成敗を、ざまあ

しょくぱん
恋愛
「汚らわしいその腕で、僕のセリナに触れるな!」 公爵令嬢エレナは、生まれつき「不浄の影」を持つとして家族から虐げられてきた。 実態は、妹セリナが放つ「光の魔法」が生む猛毒を、エレナが身代わりとなって吸い取っていただけ。 しかし、妹の暴走事故を自らの腕を焼いて防いだ日、エレナは「聖女である妹を呪った」と冤罪をかけられる。 婚約者である第一王子に婚約破棄され、実家を追放され、魔物が巣食う「奈落」へと突き落とされたエレナ。 死を覚悟した彼女を拾ったのは、夜の国を統べる伝説の龍神・ゼノスだった。 「これを不浄と言うのか? 私には、世界で最も美しい星の楔に見えるが」 彼に口づけで癒やされたエレナの腕からは炭化が剥がれ落ち、美しい「星の紋章」が輝きだす。 実はエレナの力こそが、世界を再生させる唯一の「浄化」だったのだ。 龍神の番(つがい)として溺愛され、美しく覚醒していくエレナ。 一方、彼女を捨てた母国では、毒の吸い取り役がいなくなったことで妹の「光」が暴走。 大地は腐り、人々は倒れ、国は滅亡の危機に瀕していく。 「今さら『戻ってきて毒を吸ってくれ』ですって? お断りです。私は夫様と幸せになりますので」 これは、虐げられた影の令嬢が真の愛を知り、偽りの光に溺れた妹と国が自滅していくのを高みの見物で眺める、大逆転の物語。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。

朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。 ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される

高福あさひ
恋愛
リリム王国辺境伯エインズワース伯爵家の長女、ユーニス・エインズワース。伯爵令嬢であるはずなのに、生活は使用人以下で、まともに育てられたことはない。それでも心優しく強かに育った彼女は、ある日、隣国との国境である森で二人の怪我をした男性を見つけて……?※不定期更新です。2024/5/14、18話が抜けていたため追加しました。 【2024/9/25 追記】 次回34話以降は10/30より、他サイト様と同時の更新予定です。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。