化学ファンタジア

saiha

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最後の理系戦争

33話:フェノールの正体(前編)

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 アセトアルデヒド含む軍は、ボイルの軍へ向けて進軍する。傷ついたフラーレンの体とその姿に悲しむコバルトの心を救うために…。クロロは始まる数分前にボイルの軍の背後となる場所に大きな転炉を作り始めた。しかし、完成は思いの外早くすぐに合流する。

「こりゃまた大きい基地だ。でっかい管に何を入れてるんだ?」

 基地を初めて見るアセトアルデヒド。そんな基地の跳ね橋がかけられ、大勢の人間が現れた。

「アセトアルデヒド!気をつけろ。ボイルの手下だ、圧力で叩き込まれるはず。全軍戦闘体制をとれ!」

 戦いが始まる2つの軍。劣勢と思われたが、アセトアルデヒドは鬼神の如く敵の兵を薙ぎ倒す。クロロは、戦う度に強くなり腕の筋肉は神の領域に匹敵する。

 しかし、その強さはすぐに終わりを迎えた。ボイルの軍は生物兵器を用いたもので、体の至る所に異常をきたす最凶最悪の賜物。その異常はすぐに気づく。

「体が重い…酸素が…欲しい」

「息苦しい…アクリロニトリルさん助け…」

 なんと、軍の兵士がバタバタと倒れる事態が起きたのだ。

「父さん!これどういうことなの?」

「酸素が欲しいと言ってたな…ん?よく見ろ。何か刺さってる」

 アクリロニトリルは兵士の傷口に刺さっている筒状のものを見つけた。臭いを確認すると、それは焦りの表情になる。

「こいつは一酸化炭素!赤血球と結合するもので、酸素不足の原因はこいつだ。タバコとかよく吸う人らは肺がんになりやすいと言われているが、まさかタバコの成分を使用するとはな…」

「そんな…でもなんでクロロさんとカーバイドさんは戦えてるの?」

 ボイルの軍勢による攻撃をモロに受けてるはずのクロロ、カーバイドの体は多くの傷が出てることを指摘したアセトアルデヒド。しかしすぐにその理由が分かる。

「あの坊主からもらった槍のおかげで強くなれるし、光さえあれば光合成が出来るから無意味なんだよなぁ」

「クロロさんの言うとおりです。こっちも助かってるのでこのまま攻めますよ!」

 ボイルの軍勢は劣勢と追い込まれ、クロロが準備した転炉の近くにまで迫る。アクリロニトリルは攻め切ろうとしたがすぐに違和感を覚える。肝心のボイルが出てこない事に気づいた。

「あの親玉どこにいるんだ?もう出てきてもおかしくないはず…攻めるしかないか」

 違和感を覚えながらもアクリロニトリル率いる軍は一気に攻める。

 一方、コバルトとフラーレンは戦火から離れた村にプロパノールと一緒に戦況を伺う。

「大丈夫かな…アセトアルデヒドさんも強いって言っても相手はボイル…どうなるかな」

「心配するなよ…そんな事より今は体を休めないとダメだよ。君の大切な白い体がまた傷ついて血が滲んじゃうよ」

 無理をする度に体を壊したフラーレンだからこその心配をするコバルト。そんな話をする中、悲鳴が轟く。

「ジュラルミン!なんでこんな事に…」

 聞き覚えのある名前にすぐ気づいたコバルト。バレないようにそぉっと窓を覗くと、得体の知れないものがジュラルミンを斬りつけて致命傷を与えていた。

「え…嘘だろ。ジュラルミンがやられたらもう帰れない。あいつ誰だ…」

「コバルト。どうしたの?そんな顔しちゃ…え心臓一突きでやられてるの誰なの?」

 2人は息を潜めて見ることしかできなかった。そして、その得体の知れないものの正体が名を挙げる。

「こいつがあの2人を連れてきたガキか。このヘンリー様に勝てる奴はいないな」

 ボイルの配下、ヘンリーが姿を見せた。ただコバルトは妙な空気に包まれる。それはカリウムと出会った時のような不可思議な気分に見舞われたのだ。

「なぁフラーレン…この感覚に覚えがないか?カリウムに捕まってヤバいってなった時のさ…」

「私も一緒…てことはもしかして…」

 ヘンリーは亡骸のジュラルミンを片手にそのまま去った。外へ出ると、感覚は現実に変わる。

「これ…フェノールの化学式だ。ボイルの軍旗もそれに似たもの…てことはボイルはフェノールの魂が乗り移ったものか」

「その前に私たちはもう元の世界へ戻れないの?」

 気持ちが交錯する2人。ただ、フラーレンの質問に答えれないコバルトの姿を見て泣き尽くすフラーレン。涙と傷口が開いて血が滲む。

「家に戻ろうか…血が滲んじゃってるからさ…歩くのもままならないから抱っこするよ」

「うん…」

 コバルトはフラーレンの体を抱いてプロパノールのいる家へ戻った。
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