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1話:常勝

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 みんなは爪楊枝をご存知だろうか? 普通なら食べたあと歯に詰まってないかどうかで確認をするべく歯のある程度の掃除をする事が常識だ。

 それを使ってとある大会が行われる。それは…爪楊枝大会だ。ルールは至ってシンプル。タワーを作って地震に耐えれるかどうかの話。最後まで残っていれば勝ちというもの。

 そんな大会にひと汗かいた常勝校の夏物語だ。

「よっしゃー!今日も俺がMVPだぜ!」

 彼の名前は下原竜大。卓球部にも所属する男子高校生。ケータイゲームでオンラインの戦闘ゲームにていつもMVPに輝く凄腕ランカー。考え方も大胆且つスマートで物理部ではムードメーカーでアイデアマンだ。

「また下原君がMVPかー。僕ももっと頑張らないと…」

 その横にいつもいるのは、湯田裕樹。成績では全体のトップに当たり、下原と同じく卓球部に所属する男子高校生。全てにおいて高い成績を収めているが、ケータイゲームになると一度ハマると高ランカーになるらしい。物理部ではまさに関数電卓が脳みそに入ってるのかと言わんばかりの計算速度を持つ。ただ、USBメモリーをいつも壊すことから通称USBクラッシャーと部員から称されている。

 2人はいつものように部室で他の人が来るまでの間、ゲームをして楽しむ。

 またも引き戸の音が聞こえて入ってきたのは下原のクラスメート女子、喬林薫だ。彼女も同じく、オンライン戦闘ゲームをする一人で下原の誘いに乗って遊んでいる。剣道部を兼部しており、怒らせると竹刀が壊れるまで破壊して飛び散る。物理部の勧誘も彼からされて下原はパシリにされたり男なのに借金をするというとんでもない奴でもあった。でも、そんな下原を許してるとのこと。

 彼女は物理部においてどうすれば良いのか分からないものもアドバイザーとして来ている。

「ねーぇーまた2人でゲームしてたの?してたのなら私も誘ってよ!(怒)」

 いつもの怒りに下原は空気読めない一言を放った。

「そんな怒ってたら可愛い顔が台無しだよ?(笑)」

 喬林は下原に向けて上靴を投げて笑いながら怒る。用意していた爪楊枝が吹き飛んで下原の足に当たった。

「見ろ!大事な爪楊枝が足にぶっ刺さったじゃないか!なんて事してくれるんだ!大会までまだ時間あるとはいえ、俺たちの部活は優勝が当たり前の学校だからそれやったら顧問から怒られるぞ」

「でも意味分からないことを言ったのは下原やん?ちゃんと私に謝ってよ!」

 下原は土下座して謝った。そして、高くて甘いお菓子を買ってくるよう言われて近くのコンビニへパシリに喬林は下原を使う。

 喬林もゲームの準備をしてるとパソコンを持ったインテリジェントな男が来た。

「お疲れーってあれ?まだ2人なのか…。爪楊枝タワーの作成準備できた?一応僕の計算ではこんな感じにしてみたけどどうかな?」

 彼の名前は欅良人。彼はどんなセキュリティーでもハッキングしてロック解除をしたり、プログラミングを10分もかからずに作り出して耐震性強化等を考える、この学校では最もIQが高いのである。裏では女子生徒の住所を特定して本人に晒すぞと脅した経歴を持つ。

「これはまた凄い計算を叩き出したね。本数も大会規定ギリギリだけどこれは優勝間違い無しだよ!」

 喬林は笑顔で話す。下原が近くのコンビニから部室へ帰ってきた。

「下原じゃないか。ちょうど計算ができたところを話していたんだけどお前何してたん?汗ダラダラでその手に持ってる菓子は差し入れか?」

「なわけねぇだろバーカ。喬林にちょっかい出して怒られて土下座してそのパシリで買ってきたんだよ!」

 部室内は大爆笑に包まれた。

「お前らしいな。それいくらしたん?」

「確か、2400円とか?」

 大爆笑からどよめきに変わる。喬林は笑顔で受け取り部室の机の上に置いた。

「もうはぶられるの嫌だから辞めてよね!」

「…分かりました…」

 下原は猛反省した。またもドアが開く。

 汗ダラダラでどう見ても他の部活で一走りした後の様子だった。

「もう始まってる?遅くなってすまん。駅伝の練習があったから…」

 彼は寺野陽一。彼は過去にとある部室の壁を壊すほどの脚力を持ち、足りない部品を取りに100キロ先まで2~3時間で戻るほどの速さ。通称フットクラッシャー。物理部の実験だからと卓球部の壁をぶち破ったせいで卓球部メンバーが濡れ衣を着せられて叱られてそれを笑っていたという経歴を持つ。

「お、寺野じゃん。待ってたぜー。息切らしてるから少し休んでから来て。話進めてるから」

 欅の一言に甘えて椅子に座り、水をたらふく口に含んだ。

「お、お菓子じゃーん。みんなもらってるやつだよね?たーべよ!」

 話を刻々と進めてる中、喬林は小腹を空いた為下原から貰った菓子を開けようと手を伸ばす。しかし、どこにも無いと探して目に写ったのは寺野がそのお菓子をガツガツ食べていた。

「寺野のバカー!!それ下原から貰ったの!何で食べてるんだよ!クソが(怒)」

 またも戦場、新喜劇のようなステージと化し下原と湯田、欅はただ笑うしかできなかった。

「ごめんなさぁぁい…。それは知らなかった。だからってボンドを投げるのやめてくれー!マジで髪の毛固まってしまうから!」

 追いかけっこをしてるとまたドアが開いた。

「みんな待たせた!数学の質問に行ってt…ドゥゥアッ?!」

 喬林とその男がぶつかってしまった。

「大丈夫?って石角君じゃん。みんな来るの待ってたよ!部長が来ないと話進まないもん!」

 彼は石角柊太。凄みは一瞬にして通った戦闘機や飛行機を音のみで機種を当てるほどの飛行機オタクである。理系の計算公式を見出して力の加減や長さ、全ての部品を用意する準備屋。ただし、扱いを間違えると闇が強くなって時に黒いオーラが他の部員からもクラスメートからもその禍々しさは目に見えているらしい。

 続々と意見を言う彼らだったが石角は痛かったのか固まった。石角は部員に向かってキレる。

「俺がいない間何してたの?何で部室を走る必要があるの?そして今気づいたけどこのお菓子の袋何?俺がいない間に食ってたんだろ?それって俺を除け者にして隠れて食おうとしたんだな!もういいよ…。俺なんか…所詮は物理部の先輩から任された部長だからこういったのも我慢しなきゃいけないし、結果俺が責任負うことになるんだから!」

 自傷と表情の変化が忙しい部長だといつものように思う部員の中、下原は空気の読めない一言を石角部長に放った。

「そんな堅苦しいこといいから早く決めよう!欅もプログラミングで作ったらしいからさ!早く早く!」

 石角の何かがプチっと切れた音が聞こえたが怒り通り越して呆れ返っていた。

 今回の大会は節目で大きい企画に物理部は大会当日までにその課題の答えを探し出している、まさに迷宮入り。なぜなら従来の大会は優勝した学校に賞と図書券、そして記念品を渡すことが基本だったが今回の大会は津波や液状化などにも引けを取らない爪楊枝タワーを作らなければいけないとのことで課題があまりにも難易度が高すぎる話だ。その大会優勝校には基本的な物に、某有名自動車会社から未発売の最先端車、水素自動車を授与するとのことで一段と気合が入っていた。

「さてどこまで進んだ?欅君のプログラミング見てもいい?」

 石角は許可をもらって欅のノートパソコンを覗く。実際に見て感心をした上で爪楊枝と数々の道具を取り出した。

「石角は思いつくの早いよな…。もう分かったの?」

 欅が呟くと石角は息を吐くようにして答えた。

「僕が動かなきゃ誰がするの?」

 理解した。

 今の状況で喬林と下原、湯田はオンラインゲームをしては笑いながら遊びながら大会の話は半分しか話聞いてないのに対して大会の作戦を考えているのは石角と寺野、欅だけだからだ。

「でもそんなんでも優勝するから凄いよなぁ。石角のおかげだよ!相変わらずな理由になるけれど…」

 寺野の褒め言葉に笑いながら答えた。

「僕のおかげではないよ。欅君のプログラミングがなければできないし、あの3人いなかったら制限時間以内に作れないからさ」

 よく分からない二つのグループに分かれてわいわいガヤガヤと盛り上がっていた。
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