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9話:覚醒
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寺野と下原が停学となった翌日、その2人を除く物理部全員が珍しく定刻通り集結する。
下原、湯田、寺野、喬林を除く人たちの活躍により予定通りとなったものも寺野たちは今頃どうしているのだろうかと心配する人もいた。
「下原先輩って本当にバカすぎですよね…。というより誰でも分かるはずなのになぜしたのでしょうね」
加賀木のボヤキが炸裂。喬林もその事実を初めて知ったので、下原たち停学組に対して笑いを我慢しきれなかった。
「あいつらは本当にバカすぎるから仕方ない!それが取り柄だから(笑)でも、心配にはなるかな…。運動部の高校総体ももうすぐだからね」
「そっか…言われてみればもうあと4日か…って待って、あの2人参加できないじゃん(笑)自分から自滅してて草しか生えないね」
闇のオーラを放っている石角の発言は、相変わらず憎しみがこもっている。
みんなで笑いながら和気藹々と作業を進めると、物理部に関係のない先生が急に入ってきた。
「あー、物理部の活動場所はここだね?寺野と下原の事について話をしにきた」
「堀田先生!彼らは物理部の爪楊枝大会には間に合うのでしょうか?」
喬林はそのように質問した。
堀田毅先生は化学部の顧問でもあり生徒指導の先生でもある、ちょっとした化学ネタが面白い先生。先輩の黒歴史を後輩に向けて授業で暴露したり、学校職員で決めたルールをガン無視するほどの異端者。しかし、生徒1人1人の面倒を見る所から多くの教え子や生徒から支持を得ている。
「喬林は下原と同じクラスか、そして湯田は下原と同じ卓球部ってことか、なるほどなるほど…。えっとね、寺野と下原は運動部の大会出場の権利は剥奪されてるから出れないけれども物理部の爪楊枝大会は出れるから問題はないよ。ていうか、思ったけどこの部屋変に臭くない?君たち普通に喋って活動してるけど鼻の嗅覚大丈夫?」
堀田節炸裂に一同はそれはないと言わんばかりに笑った。
堀田は担任もしており、欅と富林はそのクラスに入っている。なので、堀田節は毎日聞き慣れているらしい。
「この匂いは柿渋の匂いです。服についてしまったらそう簡単に取れないです。いつものことなんで」
石角の説明に納得する。出来具合を見て堀田は息を呑んだ。そして、彼らの大会を占う一言を放つ。
「これはまたすごい…。今まで見てきたもので例にないくらい調子が良いようだね!データが残ってるけどそのデータを超えてるようにも見える。恐らくだが、この物理部こそ今が黄金期だろうね」
ずっと柿渋を塗った爪楊枝を組み立てながら強度の調整をしてきた物理部一同は、堀田からの一言にとても嬉しそうに笑う。
堀田は手を振って化学室へ戻った。作業再開すると、今度は欅から連絡があった。
「おいみんな!下原と寺野から連絡来たぞ!とても面白すぎて笑えるぜ」
彼はパソコンからも携帯からも見れるようにチャットを使用していて、停学中の下原と寺野から出来ないはずのチャットから送信通知が届いた。
おっす!みんなちゃんと爪楊枝やってる?寺野のせいで俺ら、停学になった(笑)そして卓球の大会出れなくなった。俺は、卓球ラケットとピンポン球で1打席勝負してたけどすっぽ抜けて窓ガラスぶち割ったけど寺野の方が悪質だから!そして弁償する事にもなって、工賃含めて42万円だってさ。この額は流石に笑えねぇぞ?喬林や前桜、前山に朝葉から借りてる分の総額まではないけど喬林にはお金を返すことは出来ねぇからと伝えといて!'下原竜大'
みんな頑張ってる?今回迷惑かけて申し訳ない…。こうなった理由は俺が下原たちのところで卓球してるって分かってたから遊びに行って、ドアのガラス割るつもりは無かったけど当初はドアを倒す感覚でしてみたけど足が上がりすぎてつま先から全体にかけてドアのガラスにクリーンヒットして気持ちよく割れた。その場にいた湯田が罪に問われないってのが不思議だよな!でも、迷惑かけてすまない…。俺たち2人が復帰したらみんなで飯食おうぜ!それまで待っててくれ…。'寺野陽一'
彼らから来たチャットは反省があるのかないのか判断しにくいものだった。
この反省文に憤りを感じていたのはまさかの左右田だ。
「こいつら相変わらず反省の頭文字ねぇだろ、というか復帰しなくてもこっちで出来るし問題ないだろ(笑)あいつら復帰したところで99%準備出来てるから冗談抜きであの2人来なくても俺たちだけでいいやん?」
ふざけ内容に厳しい左右田だが、部員内で2人のチャット内容に対して賛否両論となる。本当に今回は反省してるだろうという意見とただの言葉だけだろという意見だ。
石角は反省してるだろうという意見を壊した。
「下原は、元々お金の事あったけど基本的に問題は起こさなかったからあいつは言葉だけって言われたらそうなっちゃうだろうけど信憑性は寺野よりまだマシ。でも寺野はさ、過去に壁壊したり音楽室のピアノをぶっ壊したという話を聞いてるからそっちの方が危険なのでは?」
冷静な石角の分析に納得をした一同だが、この停学期間が満了した時に彼らはどのような顔をして現れるのか気になるという人もいた。
それは喬林も気になっている。
「まぁとにかく、今は僕らの爪楊枝大会に専念しよう!そうしないと優勝候補の名が廃れる」
石角の指示により、問題児2人除く一同は奮戦を誓う。そしてついに耐震性、液状化、津波、酸化風化を耐える事ができる計算を欅が導き出した。
「なぁ、みんな!この方法なら今回の課題に対抗できるけどどうかな?」
欅のパソコンをプロジェクターに通してシミュレーションと欅自身の仮説を前提にして話す。そんな説明の中でも2人のチャットがコバエのように集っていた。
「もうこいつら出禁にしようぜ?停学処分受けてるくせにさこんなんされたら流石にイライラするわ」
富林の怒りもチャットが来る度にピークを達する。しかし、同じ仲間である以上そっとしておく他は無かった。石角は欅の案を採用しようと決めた。明日からの予定を確認する。
「明日からは高校総体が始まるけど誰か出る人おる?」
喬林と富林、鶴居、湯田と加賀木が手を挙げた。鶴居何か入ってたん?と石角は思ったがすぐに説明する。
「驚かせてごめんね…実はね、バトミントン部に入ってたの!人数が足りないらしくてそれで行く事になった!」
「流石下原二世だわ、伝え忘れないようにしてくれよ(笑)」
鶴居の急なバトミントンの大会出場報告に、欅は軽くツッコミを入れる。
石角は自分のメモ帳に一人一人の予定を書き入れながら、誰が残って爪楊枝の準備ができるかを把握した。
「よし、そしたら2日目は僕いないけど他はいるだろうか?」
左右田が恐れ多いと思いながら手を挙げる。にやにやとしている姿が中々、楽しみなのだろうと思った。
「俺は野球の大会に出るよ!多分コールド負けすると思うけど…」
最初から負ける気満々の発言に富林は笑った。それは俺も一緒だと言わんばかりに、
「大丈夫。俺たちも俺たちで1回戦敗退の常習校だから!なぜなら、そもそも顧問はスポーツの部活に対して熱意無いもん!」
ご名答すぎる回答だ。もはや彼らを引き裂くものは無く、大会出場者及び爪楊枝大会に暗雲無しと言ってもいいほどの状態だった。
「こりゃ良いね!雰囲気が本当に良い!チャットでバカ送る猿とは大違いだ」
左右田の冷静な分析と2人を小馬鹿にした発言が炸裂した。
いつものように物理部はおかしい奴らの集まりでテンションの高い奴らしかいない、むしろ良い部活なのかもしれないと石角と欅はそばにいながら笑う。
下原、湯田、寺野、喬林を除く人たちの活躍により予定通りとなったものも寺野たちは今頃どうしているのだろうかと心配する人もいた。
「下原先輩って本当にバカすぎですよね…。というより誰でも分かるはずなのになぜしたのでしょうね」
加賀木のボヤキが炸裂。喬林もその事実を初めて知ったので、下原たち停学組に対して笑いを我慢しきれなかった。
「あいつらは本当にバカすぎるから仕方ない!それが取り柄だから(笑)でも、心配にはなるかな…。運動部の高校総体ももうすぐだからね」
「そっか…言われてみればもうあと4日か…って待って、あの2人参加できないじゃん(笑)自分から自滅してて草しか生えないね」
闇のオーラを放っている石角の発言は、相変わらず憎しみがこもっている。
みんなで笑いながら和気藹々と作業を進めると、物理部に関係のない先生が急に入ってきた。
「あー、物理部の活動場所はここだね?寺野と下原の事について話をしにきた」
「堀田先生!彼らは物理部の爪楊枝大会には間に合うのでしょうか?」
喬林はそのように質問した。
堀田毅先生は化学部の顧問でもあり生徒指導の先生でもある、ちょっとした化学ネタが面白い先生。先輩の黒歴史を後輩に向けて授業で暴露したり、学校職員で決めたルールをガン無視するほどの異端者。しかし、生徒1人1人の面倒を見る所から多くの教え子や生徒から支持を得ている。
「喬林は下原と同じクラスか、そして湯田は下原と同じ卓球部ってことか、なるほどなるほど…。えっとね、寺野と下原は運動部の大会出場の権利は剥奪されてるから出れないけれども物理部の爪楊枝大会は出れるから問題はないよ。ていうか、思ったけどこの部屋変に臭くない?君たち普通に喋って活動してるけど鼻の嗅覚大丈夫?」
堀田節炸裂に一同はそれはないと言わんばかりに笑った。
堀田は担任もしており、欅と富林はそのクラスに入っている。なので、堀田節は毎日聞き慣れているらしい。
「この匂いは柿渋の匂いです。服についてしまったらそう簡単に取れないです。いつものことなんで」
石角の説明に納得する。出来具合を見て堀田は息を呑んだ。そして、彼らの大会を占う一言を放つ。
「これはまたすごい…。今まで見てきたもので例にないくらい調子が良いようだね!データが残ってるけどそのデータを超えてるようにも見える。恐らくだが、この物理部こそ今が黄金期だろうね」
ずっと柿渋を塗った爪楊枝を組み立てながら強度の調整をしてきた物理部一同は、堀田からの一言にとても嬉しそうに笑う。
堀田は手を振って化学室へ戻った。作業再開すると、今度は欅から連絡があった。
「おいみんな!下原と寺野から連絡来たぞ!とても面白すぎて笑えるぜ」
彼はパソコンからも携帯からも見れるようにチャットを使用していて、停学中の下原と寺野から出来ないはずのチャットから送信通知が届いた。
おっす!みんなちゃんと爪楊枝やってる?寺野のせいで俺ら、停学になった(笑)そして卓球の大会出れなくなった。俺は、卓球ラケットとピンポン球で1打席勝負してたけどすっぽ抜けて窓ガラスぶち割ったけど寺野の方が悪質だから!そして弁償する事にもなって、工賃含めて42万円だってさ。この額は流石に笑えねぇぞ?喬林や前桜、前山に朝葉から借りてる分の総額まではないけど喬林にはお金を返すことは出来ねぇからと伝えといて!'下原竜大'
みんな頑張ってる?今回迷惑かけて申し訳ない…。こうなった理由は俺が下原たちのところで卓球してるって分かってたから遊びに行って、ドアのガラス割るつもりは無かったけど当初はドアを倒す感覚でしてみたけど足が上がりすぎてつま先から全体にかけてドアのガラスにクリーンヒットして気持ちよく割れた。その場にいた湯田が罪に問われないってのが不思議だよな!でも、迷惑かけてすまない…。俺たち2人が復帰したらみんなで飯食おうぜ!それまで待っててくれ…。'寺野陽一'
彼らから来たチャットは反省があるのかないのか判断しにくいものだった。
この反省文に憤りを感じていたのはまさかの左右田だ。
「こいつら相変わらず反省の頭文字ねぇだろ、というか復帰しなくてもこっちで出来るし問題ないだろ(笑)あいつら復帰したところで99%準備出来てるから冗談抜きであの2人来なくても俺たちだけでいいやん?」
ふざけ内容に厳しい左右田だが、部員内で2人のチャット内容に対して賛否両論となる。本当に今回は反省してるだろうという意見とただの言葉だけだろという意見だ。
石角は反省してるだろうという意見を壊した。
「下原は、元々お金の事あったけど基本的に問題は起こさなかったからあいつは言葉だけって言われたらそうなっちゃうだろうけど信憑性は寺野よりまだマシ。でも寺野はさ、過去に壁壊したり音楽室のピアノをぶっ壊したという話を聞いてるからそっちの方が危険なのでは?」
冷静な石角の分析に納得をした一同だが、この停学期間が満了した時に彼らはどのような顔をして現れるのか気になるという人もいた。
それは喬林も気になっている。
「まぁとにかく、今は僕らの爪楊枝大会に専念しよう!そうしないと優勝候補の名が廃れる」
石角の指示により、問題児2人除く一同は奮戦を誓う。そしてついに耐震性、液状化、津波、酸化風化を耐える事ができる計算を欅が導き出した。
「なぁ、みんな!この方法なら今回の課題に対抗できるけどどうかな?」
欅のパソコンをプロジェクターに通してシミュレーションと欅自身の仮説を前提にして話す。そんな説明の中でも2人のチャットがコバエのように集っていた。
「もうこいつら出禁にしようぜ?停学処分受けてるくせにさこんなんされたら流石にイライラするわ」
富林の怒りもチャットが来る度にピークを達する。しかし、同じ仲間である以上そっとしておく他は無かった。石角は欅の案を採用しようと決めた。明日からの予定を確認する。
「明日からは高校総体が始まるけど誰か出る人おる?」
喬林と富林、鶴居、湯田と加賀木が手を挙げた。鶴居何か入ってたん?と石角は思ったがすぐに説明する。
「驚かせてごめんね…実はね、バトミントン部に入ってたの!人数が足りないらしくてそれで行く事になった!」
「流石下原二世だわ、伝え忘れないようにしてくれよ(笑)」
鶴居の急なバトミントンの大会出場報告に、欅は軽くツッコミを入れる。
石角は自分のメモ帳に一人一人の予定を書き入れながら、誰が残って爪楊枝の準備ができるかを把握した。
「よし、そしたら2日目は僕いないけど他はいるだろうか?」
左右田が恐れ多いと思いながら手を挙げる。にやにやとしている姿が中々、楽しみなのだろうと思った。
「俺は野球の大会に出るよ!多分コールド負けすると思うけど…」
最初から負ける気満々の発言に富林は笑った。それは俺も一緒だと言わんばかりに、
「大丈夫。俺たちも俺たちで1回戦敗退の常習校だから!なぜなら、そもそも顧問はスポーツの部活に対して熱意無いもん!」
ご名答すぎる回答だ。もはや彼らを引き裂くものは無く、大会出場者及び爪楊枝大会に暗雲無しと言ってもいいほどの状態だった。
「こりゃ良いね!雰囲気が本当に良い!チャットでバカ送る猿とは大違いだ」
左右田の冷静な分析と2人を小馬鹿にした発言が炸裂した。
いつものように物理部はおかしい奴らの集まりでテンションの高い奴らしかいない、むしろ良い部活なのかもしれないと石角と欅はそばにいながら笑う。
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