物理部のアオハル！！〜栄光と永幸の輝き〜

11話:努力

　その翌日、石角の陸上部による大会が開催した。
　緊張のあまり友人の前山孝に電話をした。

「ん？石角君どうしたん？今日本番だが何かあったのかい？」「前山君、実はね緊張しすぎてやばいからほぐそうと思って電話したのよ。前山君も卓球してたよね…大会どうだった？」

　石角は緊張ほぐす為に前山にさりげない会話をした。靴紐を窮屈に締めてる姿は、その張り詰めた空気によって襲われているようにも大会参加者は見えた。

「僕は、準優勝したよ！湯田君がベスト4と最後すごい勝負だったけど届かずだった。全国大会には出ない方針だけど石角君こそ優勝して欲しい！誤解を招くかもしれないけど、物理部のために優勝してくれ」

　石角は物理部の大会の合間に走っては計測してフォームを変えたりと行い、その姿を見ていた前山は分かっていてのことだった。石角は涙したが、誓った。

「分かった！前山君の分も含めて優勝する！長距離で1位になれるように特攻する」

　戦時中のような一言になったが、石角の緊張はなくなった。そしてその目は静かに闘志を燃やしていた。そして、予選が始まった。

「1500m予選２組目3レーン、石角柊太」

　名を呼ばれると、石角は元気よくグランドへ飛び出た。周りは他の学校の応援や観客で賑わっていた。そんな中、見覚えのある人が応援に来ていた。そして大声で叫んだ。

「石角！最初の予選、景気付けに韋駄天並みに走ってくれー！爪楊枝と共に絶対優勝するぞ」「石角君！私たち女子応援団も何人か駆け付けたから私たちの熱意受け取って！」

　なんと、そこには欅良人と応援団幹部を連れて応援に来た鶴居の姿があった。
急なサプライズに石角は燃えた。
前山のために、そして来てくれた欅、鶴居言海とその演舞仲間の前で負けるわけにはいかないと気合を入れ直した。そして、石角の戦いが始まった。スタートと同時に鶴居は女子応援団幹部と一緒に石角へ向けてエールを送った。その中には欅が住所を特定しようとした人もいた。
　欅は気まずいと思ったのか、飲み物を買いに行った。

「燃えろ燃えろ！石角！燃えろ燃えろ！石角！ベストを尽くせ！我らの石角！」

　太鼓の音に合わせて鶴居とその幹部らは袴姿で大声でエールを送った。
　残り一周の鐘の音が鳴ると、応援演舞は白熱した。序盤は後ろに潜んでいた石角は一気にスパートをかけた。残り100mのところで1位に躍り出て、予選1位通過を達成した。
　予選1位決定の瞬間に鶴居は大喜びした。演舞披露した幹部も負けないくらい声を荒げて喜んだ。

「いいぞ！流石だ石角君！我らの部長は負けない炎の部長だよ！」

　鶴居は喜びすぎて声がガラガラになった。欅も結果を見て、ホッとしたが次の準決勝も気を抜くなと言わんばかりに喜ぶことなく見ていた。準決勝も2位に終わったが、決勝進出と石角の学校では史上初の快挙となった。流石の鶴居も彼の緊張をほぐすために本人の元へ向かった。石角は震えていた。

「石角君！大丈夫だよ！最後のスパートでかけ走ってるから大丈夫だよ。それに私と同じ応援演舞をした幹部もすごいって言ってたから本当に石角君は努力の権化だよ。私達と円陣を組んで！気合を入れ直すよ！」

　石角は鶴居に連れて行かれるまま、円陣を組んだ。そして、幹部の1人が叫んだ。

「石角君に熱い応援とエールを送ってこのまま突っ走って優勝するぞー！」
「オー！！」

　もはやこれは何なんだ？と思った石角だが、彼は燃え尽きるまで足が曲げてでも優勝すると覚悟を決めた。
最後の決勝の舞台に応援演舞も最高潮になった。
　決勝のスターターピストルの音が響き、石角の大舞台が整った。いつものように石角は背後に潜んでついていった。そして鶴居も全身全霊を持って石角に応援した。スパートになると演舞ではない、野球の動きに変わり大声で石角にエールを送った。

「最後まで諦めるな石角！物理部の頭脳でもある石角が負けたら話にならないよ！」

　鶴居の物理部を含めた応援をして石角に伝わったのか、石角は予定より早いペースで1位と並んだ。そのままゴールしたが、写真判定となった。ゴール後、石角は足を攣ってしまい立ち上がらなくなった。そして大きなビジョンを見ながら結果を待った。そして、順位確定のアナウンスが流れた。

「順位が確定しました。長距離部門1500m決勝第1位、石角柊太」

　石角は飛び跳ねて喜んだ！そして鶴居は喜びの演舞を披露した後、石角の元へ走った。抱きしめた後、鶴居は祝福した。

「石角部長！長距離走1位おめでとう！次は全国だけど私と応援団幹部もついてくるから心配しないでねっ！」

　鶴居の背後にいる幹部は、満足げな顔をしておきながらも石角の快挙を祝福した。授賞式を終えた後、物理部メンバーから多くの連絡をもらった。そして、涙した。ここまで頑張ってこれたのはこんな感じで応援してくれる同級生と後輩がいたからだ、と。
　翌日は前山もそうだが、全ての職員らにも祝福を受けて次の爪楊枝大会の最終準備を行った。そこには、寺野が石角の目の前に現れて拍手しながら抱き合った。

「おめでとう石角！流石だよ、俺も走りたかったけど石角が行ってくれたから良かった！感動をありがとう！そして爪楊枝大会頑張ろ！」

　部室はいつものメンバー勢揃いで下原もその中にいた。咲き乱れる祝福の嵐の中、爪楊枝に魂を込めた。