物理部のアオハル!!〜栄光と永幸の輝き〜

saiha

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34話:代償と逆転

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 欅の元へ走る一行だったが、喬林が見た両腕の手術痕ではなく静かに眠る1人の天才が横になっていた。

「え…欅どうしたの?」

「フットクラッシャーが呼んでるぞ。反応してくれよ!」

 寺野と下原の答えに欅は答えず、ただ安らかに眠る。反応がないことに3人は全てを理解した。欅は亡くなってしまったんだと。

「目を覚ます事なく終わった、のか。でも死因が分からない」

 寺野が言うのも無理はない。欅の死因が術中死によるものなのか、それとも失明を狙った強酸によるものが原因なのか色々と説が浮かび上がる。

 3人が悲しむ間に担当医が扉を開ける。

「君らは…欅良人の友人で良いのかな?申し訳ない。欅君は、強酸によるもので失明寸前までやられていて皮膚移植を行なったものもその皮膚は誰かによって違う人の皮膚にすり替えられていた。拒絶反応が起き、更に腕の皮膚を用いたから傷口の壊死がとても悪かった」

 ここで普通なら泣いてしまって後悔するはずなのだが、3人の考えは想像をぶっ飛んだ。

「おい欅!お前の好きな人の住所特定しないのかよ…死ぬ前にちゃんと話せば付き合えてたかもしれんのに…バカ」

「寺野の言う通りだわ。ね、喬林さん」

「そもそもがそもそもでダメだったりするかもしれないね」

 泣きながら欅が好んでいた住所特定をネタに彼の魂を弔った。きっとどこからともなくこんな声が聞こえるだろう。

「また住所の特定に失敗したぁぁぁぁ」

 欅の訃報は梓馬の耳にも届く。しかし、梓馬は悲しむどころか堀田の失言を奪うがために必死だ。

「そうか…欅は良くやったよ。少し気持ち悪い部分があったけどよく物理部を引っ張ってくれた。ゆっくり休んでくれ…」

 1人で呟く梓馬。そしてそれ以外の物理部員も、欅の意思を継ぐために空へ向けて祈る。

 訃報の知らせから1週間後、梓馬はありえない考えを高校3年生の石角たちを読んでその考えを彼らに提案した。

「忙しい中呼んでしまってすまない…堀田を潰す方法だけど、お前ら試験で対策に頭が沸騰してると思う。全員で堀田の部活に所属する部員らを越えよう。それで、欅の思いを継いでいけたらと思っている。みんな、どうだろうか?」

 バカすぎる考えなのかもしれない、しかし石角含む受験生の考えは即答だ。

「僕は賛成です。やれるなら、受験合格した後にその体験談をぶちかましましょう!」

「石角も良い考えを発言できるよなぁ。フットクラッシャーとして、俺も賛成だわ」

「私も同じ。応援演舞の横で応援してたから、今度は私たちが決めなきゃね」

 石角と寺野、鶴居は参戦の意向を固める。他の高3部員も同じで最後まで尽力するという考えで話し合いは終わった。

 後日欅の通夜と葬式が執り行われ、会場が悲しむ中、梓馬が最後の別れの言葉をかける。

「欅、お前は化学部から物理部へ来てくれたことに感謝する。僕はこの爪楊枝タワー大会の優勝に対して誇りに思ってる。でも、急死するなんて思ってもなかった。なぜお前が…という気持ちでいっぱいだよ。もし、1度だけ生き返ることが出来るなら物理部の頭脳として、OBとしてこの物理部を引っ張ってほしかった。でも、願いだから無理だよな。ゆっくり休んでくれ…欅良人。最後は物理部の石角たちがやるから任せろ」

 火葬も終わり、1人除いてそのまま平穏が続くと思われた。

「大会の練習がある事を忘れてたー!」

 石角の全国出場に伴い、練習をしなければならない中で受験勉強を必死になっていたからか完璧に頭の中から消えていた。数日後に迫る大会は、とても強い人たちばかりで中にはアフリカ人よりも早い日本人もいると言われている。

「石角、今になって何やってんの?」

「寺野君!やばいんよ。練習してなさすぎて死にかけてるぜ」

 計画性がある石角の珍しい失敗に、寺野はゲラゲラと笑う。これもまた、青春であるかのように。

 数日後、石角の初全国大会は予選敗退に終わった。しかし試験の対策もあったのでクヨクヨする暇も無い。

 彼の勉強する科目は、主に理系科目。そこに日本史と世界史、国語、英語とハードだ。理系科目は部活柄もあってか、物理選択で他の人よりも全てを凌駕する知識量を持っている。

「お疲れ様、自分。ここからは欅君のために頑張らないとね」

 石角は必要以上に時間をかけてきた陸上へ別れを告げて、人生の大一番に臨む。これも欅の為でもあり、物理部全員の総力戦である事を予感するかのように物理部と化学部の戦いは受験戦争へと縺れ込む。
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