魔法少女はそこにいる。

五月七日ヤマネコ

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最終章 魔法少女はそこにいる

キルカ・ティアマト 1

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 魔女キルカは主だった魔法少女たちを真っ暗な何もない部屋へと集めた。
 キルカを筆頭に、バレッタ、ルー、スピカ、キリエ、ライアット、メタルカ、二人のオスティナ、それに黒井である。
 アオイと二人のアマイアがその様子を一緒に窺っていた。

「……あなたちにキルカの修行を手伝ってもらいたいの」

 魔女キルカは彼女たちの顔を見回して、そう静かに口にした。

「そりゃあ構わねえけどよ……一体、あたいたちは何をすりゃいいんだよ?」

 ライアットが呆れたような顔で言うと、魔女キルカは表情を微塵も変えずに無表情なまま応えた。

「あなたたちにキルカと戦ってほしいの」

「な、なんですって?」

 オスティナが驚いて声を上げた。

「もちろん、普通に戦ったら誰もこの子の相手にはならないの。 ……だから全員で一斉にこの子にかかってほしいの」

 魔女はあくまで淡々とそう言った。

「訓練用の特殊精神空間をわたしが創るの。 その中ならたとえ怪我をしても死んでも、外に出たら元通りなの」

「……こいつァ、驚いたぜ」

 ライアットが目を丸くした。

「待ってくださいっす。 姐さんの魔導杖ロッド魔力喰らいマギカ・イーターはそれを抜いただけであたしたちは魔力を食われてすぐに動けなくなるっす」

 バレッタが割と冷静にそう言うと、魔女キルカはこくり、と頷いた。

「その通りなの。 だから、魔力喰らいの能力はわたしが抑えるの。 あくまでキルカの魔力だけで戦うのよ。 この修行は魔力を高めて収束させるための物なの。 魔力喰らいを研ぎ澄ますためなのよ」

「なぜ、魔力喰らいを研ぎ澄まさなくてはいけないのかしら?」

 ルーが訊くと、魔女は彼女を鋭い目で見つめた。

「……それは力を高めた魔力喰らいで、イキロの身体ではなく、彼の身体の魔力だけを斬るためなの」

「魔力だけ……か。 なるほど、そうすればイクローだけ残る、と?」

 ルーが訊くと魔女キルカは深く頷いた。

「当然、彼はもう魔法を使えなくなると思うけれど……でも、イキロとしての肉体と人格はちゃんと残るのよ。 彼の持つ魔力を全部斬り裂いて失くしてしまうの……それしか方法がないのよ」

 魔女はそう言うと、高速詠唱を始めて彼女たちは荒れ果てた荒野のような場所へと飛ばされた。
 これがおそらく彼女の創った特殊空間なのだろう。

「……わかったの。 わたし、がんばるの」

 キルカはこくこく、と頷いて拳を胸のあたりで握った。

「イキロを助けるために、あなたはこれを成し遂げなければならないの。 わたしもサポートするから……なんとしてでもやり遂げるのよ」

 魔女はキルカを見据えて静かにそう言うと、その身体を魔導杖に変えた。
 その柄から刀身に巻き付いていた蔦のような物が千切れ飛ぶ。

「この蔦はあなたが無意識で生み出した、能力制限なの。 これがある限り魔力喰らいは、ほんとうの力を発揮できないのよ」

 魔導杖に姿を変えた彼女はそう言いながらキルカの手の中へと納まった。

「みんな、本気の本気で……殺すつもりでやるのよ」

 魔女キルカは魔法少女たちにそう高らかに伝えた。

「……おもしれェ。 正直言えば……一度キルカとは戦ってみたかったんでェ」

 ライアットはその手の内に魔導杖を現出させながらそう言って舌なめずりをした。

「あたしもぉ~! ……なんだかんだ言ってもあたしら、魔法少女だからねぇ。 ……強い子と戦うのは滾るよねぇ~」

 メタルカも嬉しそうに口元を歪めながら言って、やはり魔導杖を現出させる。

「ああ、別にキルカに恨みもなにもありゃァしねえが……怪我もしねえし死なねえってんなら……思う存分やらせてもらうぜ」

 バレッタは茫然と立ち尽くしていたが、頭を振ると唇を噛んで、その手を胸のあたりでクロスさせると魔神銃マシンガンを現出させて構えた。

「すいませんっす。 姐さん、でもおにいちゃんの為なら……あたしも全力でやらせていただくっす」

「そうね……。 それがしいてはキルカのため、でもあるのよね……」

 ルーもそう言ってライフル型の魔導杖、至高の一撃ブロウ・シュープリームを出現させた。

「わかったわ……やるなら私たちも手は抜かないわ」

 二人のオスティナも顔を見合わせて頷くと二人とも魔導杖を出現させた。

「そういう事ならば、私も協力しよう」

 黒井もそう言ってタバコの煙を吐き出すと、それを足元に落として足で踏んで火を消した。
 次の瞬間、彼女の手には大きな斧の形の魔導杖が出現する。

 すると空間内に声が響いた。

「わたしにも! わたしにも協力させてください!」

 それはアオイの声だった。

「アオイちゃん……」

 バレッタは複雑な表情で彼女の名を呼んだ。

「大滝アオイ……あなたの魔力は異質すぎるの……。 でも、それはそれでいいのかもしれないわね」

 魔力喰らいに姿を変えた魔女キルカがそういうとその空間の中にすう、とアオイが現れた。

「ありがとうございます! 魔女キルカ」

 アオイはうれしそうに言って、バレッタの隣に並んで彼女に微笑みかけた。
 バレッタも、にぱ、と笑って何も言わずに拳を突き出すと、アオイはその拳に自分の拳を当てる。
 そしてその瞬間に彼女の手は猫のように柔らかな毛の生えた肉球のついたものへと変わった。

「わ、わたしたちも協力しますのだわ!」

 オリジナルのアマイアの声も響いた。
 今度は魔女は何も言わなかったが、二人のアマイアの姿も空間内に現れた。

 魔導杖を構えて立つ魔法少女たちの真ん中でキルカも魔力喰らいを構えた。
 魔女はそこでまた言葉を紡ぐ。

「……キルカの魔導杖は剣の姿をしているけれど、それは形だけなの。 言ってみればなまくらの模造刀みたいなもの。 それをあなたたちの魔力と彼女自身の魔力とで鍛え上げるのよ」

「みんな、お願いなの。 絶対に手を抜かないでなの」

 キルカは決意を秘めた表情で言って、魔法少女たちを見回して魔導杖を構えた。

「響き渡れ!! 現世を歪ませる戦斧ディストーション・ホーク!!」

 黒井はいきなり叫んで、彼女の斧のような魔導杖をまるでギターのように構えると、その音を鳴り響かせた。

「私の魔導杖はこんな見た目だが、実際は支援系の能力でな……。 みんなの力を高める事ができるのだよ」

 彼女は激しいハードロックのようなメロディを鳴り響かせながら、そうほくそ笑んで口にした。
 彼女の魔導杖から紫色の魔法光が発せられて、魔法少女たちの身体を取り囲んでいった。

増幅される世界への影響ブーステッド・エフェクター!!」

 魔法少女たちの身体から紫色の炎のようなオーラが立ち上った。

「な、なんすかこれ? ……魔導杖が……まるで喜んでいるようっす!?」

 バレッタが両手の魔神銃を見つめて目を丸くする。
 彼女の魔神銃はまるで意思を持っているかのように彼女の手の中でカタカタと音を立てている。

「私の影響エフェクトは魔導杖の能力を引き上げるんだ。 私が演奏をやめない限りな!」

 黒井はそう言って、とてつもない速弾きでギターソロのようなメロディーを弾いた。

「ひゅ~!! センセカッコイイ~!!」

 メタルカが手を振り上げて快哉を叫ぶと、黒井は彼女にウインクして見せた。

「よっしゃ~!! じゃあ遠慮なく行くぜ!! キルカッ!!」

 ライアットが二本の棒状の魔導杖をくっ付けて長い一本の棒にすると、それを構えた。
 彼女の周囲に激しく電気のスパークが走る。

「お願いなの……ライア」

 キルカは少し笑みを浮かべて魔力喰らいを構えた。
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