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最終章 魔法少女はそこにいる
魔法少女たちの黄昏(ラグナロク) 1
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魔力が戻ったキルカを筆頭に、魔法少女たちは彼らの魔法で作った人工島の海岸に集合した。
色とりどりの魔導鎧を身に纏い、それぞれの魔導杖を手に携えて、彼女たちは皆、闘志に燃えた瞳をしてそこに立っている。
これが最後の戦いだ、皆そう思っていた。
それぞれがもう戦いはうんざりだ、これで終わりにしたい、そう願っていた。
本来、本能的に戦いを求めるのが魔法少女のはずであるのに、今の彼女たちは戦いを忌避する思いに満ち満ちている。
長い長い魔法少女の、魔法界の歴史の中で初めて、魔法少女たちが積極的に戦いのない平和な世界を望んだのだ。
これは歴史的に大いに意味がある事と言えた。
キルカは隣に並んで立つ魔女キルカと顔を見合わせて頷き合った。
二人の後ろにはキリエ、スピカ、バレッタ、ルーが向かって左から順番に並んでいる。
その後ろには同じく左から、黒井……ブラック・オニキス、オリジナルのオスティナ、フラスコのオスティナ、オリジナルのアマイア、フラスコのアマイア、大滝アオイ、メタルカ、ライアット、ラム、リズが並ぶ。
彼女たち以外の魔法少女たちは拠点の中で固唾を飲んで彼女たちの様子を見つめていた。
王女クラス及びエース級より下の魔法少女たちではこの戦いは荷が重いのだ。
無駄な死人は出したくはない。
故に少数精鋭で挑む事になった。
「……始めるの」
キルカが呟くように言うと、魔女キルカは口元に赤い魔法円を浮かび上がらせた。
全チャンネルでの魔法放送用の法円である。
「キルカ……」
ふとキリエがキルカに声をかける。
「なにかしら?」
キルカが首を傾げると、キリエは自らの被っていた帽子を脱いで、キルカに手渡した。
「これを被ってほしいの。 ……きっとあなたの力になってくれるの」
キリエが言うと、キルカはふんわりと笑顔を浮かべて帽子を受け取った。
そして自らの帽子を脱ぐと、それをキリエに手渡す。
「じゃあ交換なの」
二人はお互いの帽子を手に持って、くすくすと笑い合った。
そして二人は同時にお互いの帽子を頭に載せた。
キリエの帽子は大きすぎてずり下がって来たので、彼女は慌ててぐいぐいと持ち上げた。
魔女キルカは二人の様子をどことなく楽し気に眺めて、ふとこう言った。
「そうね。 キリエの帽子はいいアイデアなの。 その帽子はわたしが創ったもの。 特別な力があるのよ」
それを聞いてキルカは不思議そうな顔で魔女キルカとキリエを順番に見つめた。
彼女の頭の上の帽子は形こそ普段のキルカの魔女のような帽子と同じものだったが、なぜか目のような模様が描かれていて、片目は閉じられ、ウインクしているような意匠である。
「ティアマトに代々伝わるわたしの帽子よりも?」
キルカは不思議そうな顔のまま訊いた。
「なの。 この帽子は特別製なの」
魔女キルカは頷いて、少し面白そうに笑った。
そして彼女はいつもの冷静な無表情になると、キルカに言った。
「この戦いの要はあなたなの。 何があってもあなたがやられてはダメなの。 ……わたしも攻撃までは防御に徹するの。 だからあなたもがんばるのよ」
キルカは力強く頷いた。
「わかっているの」
「だいじょうぶっす! 姐さんはあたしらが必死に最後までお守りするっすよ!」
バレッタが明るく言ってキルカの腕を取った。
「ええ、私たちがこの身に代えても守るわ」
ルーも言ってその巨大な対戦車ライフルのような魔導杖を背中に担ぐようにしながら微笑んだ。
「お姉さまの事は私たちにお任せくださいまし!」
スピカも腰に手を当てて、高らかに笑った。
「ハッ! あたいら全員でキルカを守り抜く! よっぽどじゃなけりゃァ……キルカがやられる事ァねェだろうぜ!!」
ライアットが棒状の魔導杖を地面に突き立ててニヤリと笑って見せた。
「私にも……やらせてください!」
ラムも槍の形の魔導杖をライアット同様に地面に突き立てた。
そして背中に白い翼を現出させる。
「そうっすね……。 空戦が得意な子たちはまとまりましょうっす。 手分けした方がいいっす!」
バレッタも背中に小さな天使の羽を現出させて言う。
「これが最後ですし、出し惜しみはなしで行くしかないですわね」
スピカも全身に魔法円を浮かび上がらせて、完全態の白い魔導鎧に姿を変える。
そしてカチューシャと肩から生える白い翼を羽ばたたかせた。
彼女の魔導鎧にはもう血飛沫の模様はない。
「そっかぁ! これが最後かぁ!! ……じゃあ、出し惜しみしても仕方ないねぇ~!」
メタルカが何かを思い出したように、ぱん、と手を慣らすと一瞬で彼女のネコミミ付きフードのついたマントがピンク色の蝙蝠の羽のような形状へと変わった。
「なっ!? ルカ! てめぇ……今まで全力出してなかったのかよ!」
ライアットが呆れたように声を上げると、メタルカは歯を見せて、にししし、と変な声で笑った。
「まぁ、そうだな……ここで全力出さねェと……もう使い所はねェかもなァ……」
ライアットもぶつぶつと呟いて、高速詠唱をするとその背中にまるで雷様の太鼓のような丸い物が並んだ魔法ブースターを現出させる。
そして彼女たちの後ろから物哀しい泣きの入ったギターのような音が鳴り響く。
「私は私のできる事をしよう……」
黒井は魔導杖を弾きながらそう言った。
メロディは魔法の光を伴って魔法少女たちを包み込み、防御壁と変わっていった。
「……魔力が上がってる?」
ルーが驚いたように、紫色の魔法光を帯びた魔導杖を見て言った。
「『超増幅魔法音色』!!」
黒井が言って、リフを弾きまくる。
ザカザカと刻むようなリフが繰り出される度に魔法少女たちの魔導杖が鼓動をするかのように光を発散していった。
「はぁ~! やっぱりセンセカッコイイ~!!」
メタルカがうっとりとした顔で言って胸のあたりで手を組んだ。
「私にはこれくらいしかお前たちにしてやれんからな……。 みんな……無事で帰ってこい! ……いや、みんなで無事に帰ろう!」
黒井の言葉に魔法少女たちは皆笑顔で「はい!」と応えた。
「バレッタちゃん……わたしも、バレッタちゃんと一緒に戦いたい」
ふとアオイがバレッタの側に来てそう言った。
「え? でもアオイちゃんは空は飛べないっすよね?」
バレッタが申し訳なさそうな顔で言うと、アオイの頭の上のベルが光り輝いて彼女の周りと飛ぶとその身体の中へと溶け込むように入っていった。
するとアオイの背中に灰色のコウモリのような羽が生えた。
「だいじょうぶ。 まだ……練習中だけど、足手まといにはならないよ。 ……わたし、バレッタちゃんと一緒に戦いたい」
アオイが決意を秘めた目で言うと、バレッタは、にぱ、と笑顔を浮かべた。
「わかったっす! 一緒に戦いましょうっす! あたしもアオイちゃんと一緒がいいっす!」
バレッタが応えると二人は手を握り合って笑顔で頷き合った。
「では……始めるの」
魔女キルカは言って、すう、と息を吸い込んだ。
彼女の口元の魔法円が光り輝く。
「サン・ジェルマン。 聞こえているでしょう? わたしは魔女キルカ。 わたしは逃げも隠れもしないの。 わたしを斃したければ、わたしたちの元へ姿を見せるの。 ……決着を付けましょう」
魔女キルカはあくまで冷静にそう口にして、周囲を見回した。
色とりどりの魔導鎧を身に纏い、それぞれの魔導杖を手に携えて、彼女たちは皆、闘志に燃えた瞳をしてそこに立っている。
これが最後の戦いだ、皆そう思っていた。
それぞれがもう戦いはうんざりだ、これで終わりにしたい、そう願っていた。
本来、本能的に戦いを求めるのが魔法少女のはずであるのに、今の彼女たちは戦いを忌避する思いに満ち満ちている。
長い長い魔法少女の、魔法界の歴史の中で初めて、魔法少女たちが積極的に戦いのない平和な世界を望んだのだ。
これは歴史的に大いに意味がある事と言えた。
キルカは隣に並んで立つ魔女キルカと顔を見合わせて頷き合った。
二人の後ろにはキリエ、スピカ、バレッタ、ルーが向かって左から順番に並んでいる。
その後ろには同じく左から、黒井……ブラック・オニキス、オリジナルのオスティナ、フラスコのオスティナ、オリジナルのアマイア、フラスコのアマイア、大滝アオイ、メタルカ、ライアット、ラム、リズが並ぶ。
彼女たち以外の魔法少女たちは拠点の中で固唾を飲んで彼女たちの様子を見つめていた。
王女クラス及びエース級より下の魔法少女たちではこの戦いは荷が重いのだ。
無駄な死人は出したくはない。
故に少数精鋭で挑む事になった。
「……始めるの」
キルカが呟くように言うと、魔女キルカは口元に赤い魔法円を浮かび上がらせた。
全チャンネルでの魔法放送用の法円である。
「キルカ……」
ふとキリエがキルカに声をかける。
「なにかしら?」
キルカが首を傾げると、キリエは自らの被っていた帽子を脱いで、キルカに手渡した。
「これを被ってほしいの。 ……きっとあなたの力になってくれるの」
キリエが言うと、キルカはふんわりと笑顔を浮かべて帽子を受け取った。
そして自らの帽子を脱ぐと、それをキリエに手渡す。
「じゃあ交換なの」
二人はお互いの帽子を手に持って、くすくすと笑い合った。
そして二人は同時にお互いの帽子を頭に載せた。
キリエの帽子は大きすぎてずり下がって来たので、彼女は慌ててぐいぐいと持ち上げた。
魔女キルカは二人の様子をどことなく楽し気に眺めて、ふとこう言った。
「そうね。 キリエの帽子はいいアイデアなの。 その帽子はわたしが創ったもの。 特別な力があるのよ」
それを聞いてキルカは不思議そうな顔で魔女キルカとキリエを順番に見つめた。
彼女の頭の上の帽子は形こそ普段のキルカの魔女のような帽子と同じものだったが、なぜか目のような模様が描かれていて、片目は閉じられ、ウインクしているような意匠である。
「ティアマトに代々伝わるわたしの帽子よりも?」
キルカは不思議そうな顔のまま訊いた。
「なの。 この帽子は特別製なの」
魔女キルカは頷いて、少し面白そうに笑った。
そして彼女はいつもの冷静な無表情になると、キルカに言った。
「この戦いの要はあなたなの。 何があってもあなたがやられてはダメなの。 ……わたしも攻撃までは防御に徹するの。 だからあなたもがんばるのよ」
キルカは力強く頷いた。
「わかっているの」
「だいじょうぶっす! 姐さんはあたしらが必死に最後までお守りするっすよ!」
バレッタが明るく言ってキルカの腕を取った。
「ええ、私たちがこの身に代えても守るわ」
ルーも言ってその巨大な対戦車ライフルのような魔導杖を背中に担ぐようにしながら微笑んだ。
「お姉さまの事は私たちにお任せくださいまし!」
スピカも腰に手を当てて、高らかに笑った。
「ハッ! あたいら全員でキルカを守り抜く! よっぽどじゃなけりゃァ……キルカがやられる事ァねェだろうぜ!!」
ライアットが棒状の魔導杖を地面に突き立ててニヤリと笑って見せた。
「私にも……やらせてください!」
ラムも槍の形の魔導杖をライアット同様に地面に突き立てた。
そして背中に白い翼を現出させる。
「そうっすね……。 空戦が得意な子たちはまとまりましょうっす。 手分けした方がいいっす!」
バレッタも背中に小さな天使の羽を現出させて言う。
「これが最後ですし、出し惜しみはなしで行くしかないですわね」
スピカも全身に魔法円を浮かび上がらせて、完全態の白い魔導鎧に姿を変える。
そしてカチューシャと肩から生える白い翼を羽ばたたかせた。
彼女の魔導鎧にはもう血飛沫の模様はない。
「そっかぁ! これが最後かぁ!! ……じゃあ、出し惜しみしても仕方ないねぇ~!」
メタルカが何かを思い出したように、ぱん、と手を慣らすと一瞬で彼女のネコミミ付きフードのついたマントがピンク色の蝙蝠の羽のような形状へと変わった。
「なっ!? ルカ! てめぇ……今まで全力出してなかったのかよ!」
ライアットが呆れたように声を上げると、メタルカは歯を見せて、にししし、と変な声で笑った。
「まぁ、そうだな……ここで全力出さねェと……もう使い所はねェかもなァ……」
ライアットもぶつぶつと呟いて、高速詠唱をするとその背中にまるで雷様の太鼓のような丸い物が並んだ魔法ブースターを現出させる。
そして彼女たちの後ろから物哀しい泣きの入ったギターのような音が鳴り響く。
「私は私のできる事をしよう……」
黒井は魔導杖を弾きながらそう言った。
メロディは魔法の光を伴って魔法少女たちを包み込み、防御壁と変わっていった。
「……魔力が上がってる?」
ルーが驚いたように、紫色の魔法光を帯びた魔導杖を見て言った。
「『超増幅魔法音色』!!」
黒井が言って、リフを弾きまくる。
ザカザカと刻むようなリフが繰り出される度に魔法少女たちの魔導杖が鼓動をするかのように光を発散していった。
「はぁ~! やっぱりセンセカッコイイ~!!」
メタルカがうっとりとした顔で言って胸のあたりで手を組んだ。
「私にはこれくらいしかお前たちにしてやれんからな……。 みんな……無事で帰ってこい! ……いや、みんなで無事に帰ろう!」
黒井の言葉に魔法少女たちは皆笑顔で「はい!」と応えた。
「バレッタちゃん……わたしも、バレッタちゃんと一緒に戦いたい」
ふとアオイがバレッタの側に来てそう言った。
「え? でもアオイちゃんは空は飛べないっすよね?」
バレッタが申し訳なさそうな顔で言うと、アオイの頭の上のベルが光り輝いて彼女の周りと飛ぶとその身体の中へと溶け込むように入っていった。
するとアオイの背中に灰色のコウモリのような羽が生えた。
「だいじょうぶ。 まだ……練習中だけど、足手まといにはならないよ。 ……わたし、バレッタちゃんと一緒に戦いたい」
アオイが決意を秘めた目で言うと、バレッタは、にぱ、と笑顔を浮かべた。
「わかったっす! 一緒に戦いましょうっす! あたしもアオイちゃんと一緒がいいっす!」
バレッタが応えると二人は手を握り合って笑顔で頷き合った。
「では……始めるの」
魔女キルカは言って、すう、と息を吸い込んだ。
彼女の口元の魔法円が光り輝く。
「サン・ジェルマン。 聞こえているでしょう? わたしは魔女キルカ。 わたしは逃げも隠れもしないの。 わたしを斃したければ、わたしたちの元へ姿を見せるの。 ……決着を付けましょう」
魔女キルカはあくまで冷静にそう口にして、周囲を見回した。
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ウェブ小説大賞、投票しましたヽ(´▽`)/
ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ
魔法少女が大群で襲ってくるとか、どんな凶器ですか(誉め言葉)
謎が謎を呼ぶ展開に、イクロー君と一緒に呆然としてしまいました。
執筆頑張ってくださいね。
あざます!
もうちょっとで完結なのでなんとかやっつけます~!w