懐かしい初期作品

刹那玻璃

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覚悟を決める日

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 一昨日、実家に預けているハムスターの世話をしに戻った。

 去年、瑠璃(るり)が亡くなって10ヶ月。
 主のいない篭(ゲージ)が淋しさをます。

 梅雨は悲しい事を思いだし、そして天候により体調を崩す事が多い。
 今も喘息が再発し、喉の違和感が増す。
 身体中の節々、背中、腰、足首にある筋の付けねが痛みをまし、骨折は後は9月のはじめまでギプスをつけたままにしておくことと言われた。



 去年の秋、夏服をほぼ全て処分した。
 今年の春は、冬服を処分した。
 クローゼットの中には空っぽ。

 いや、テディベアの道具や布等大きなものを納めたクリアボックスがあり、部屋の中の引き出しにはタオルにハンドタオル以外には、テディベアの道具に、部品等を全て納め、本棚が二つ、ふたつきの3段のカラーボックスには、『シュタイフ社のテディベア達の部屋』『メリーソート社のテディベア達の部屋』『ハーマン社や、作家さんのテディベア達の部屋』と色を変えたテープを貼って飾る。
 二つの棚には大きなテディベア達を、細い棚には古い赤毛のアンの時代風の籐の旅行鞄を開け、色々な表情のテディベアが顔を覗かせる。

 反対側の棚には、小物の部品を入れた小さい引き出しを並べて、部品の大きさごとに名札をつけ、テープで貼り付ける。
 テディベアの瞳のボタンも、一ミリ単位に違うので、きちんと分けておけなければ混乱する。
 色も、プラスチック、ガラス、昔のブーツボタンがあるのだ。

 糸も最低でも3種類の糸がいるのだ。
 縫い糸は、手縫い用とミシンの場合はミシン糸。
 瞳や首をきっちりと閉じるための丈夫な糸。
 鼻や口、手足の爪を刺繍するための刺繍糸。

 色も布も吟味して作り上げたテディベアは、どんなに不細工でも可愛い。
 親と同じでアンパンマンのようにパンパンの真ん丸な頭に、瞳は、好奇心旺盛な感じで、

『何々?』

 と言っているようで親馬鹿ではあるが本当に可愛い。

 実は、刹那は小さい子は作りにくい。
 不器用と言うよりも、テディベアの手足につける部品を締めるのが大変なのだ。
 大体15cm程から50㎝位のベアは、プラスチックのジョイントを使う。
 小さいベアや、本格的なベアの場合はハードボードジョイントと呼ばれる部品を使う。
 コッターキーと言う専門の道具か、先が細長いペンチで止めるのだが、10年たっても、上手くいかない。

 その上、テディベアを作るのに一番大好きな作業が、綿詰めであり、詰めすぎて、テディベアが爆発したこともある。
 背中を閉じることもできないこともざらである。
 しかし、それでも、少しでも上手に、可愛い子を生み出そうと、モヘアと言う布は本当に高額なので、ボア生地を安いお店で安売りの時に買いだめをする。
 ほんの少し裏がほこりでよごれて、半額などになっていたら、ラッキーである。
 風呂敷代わりに、スカートやスーツの裏地3つに布を押し込んでもらって、帰っていた。
 大好きだった。
 いや、テディベアは本当に夢だった。

 ぬいぐるみも夢があるが、テディベアは手足も首も動き、大きい子が好きだ。
 小さい子も連れ歩けるので嬉しいが、大きい子のずっしりとした重さにガチガチの体が、自分に安心感を与えるからだ。

 本当はハムスターも小さすぎて触るのが怖かった。
 ジャンガリアンハムスターのパールホワイトが子竜と麗珠、ブルーサファイアが元譲。
 自分ではビクビクだったのだが、妹に言わせるとわしづかみにしている姿を見て、

「何て大雑把と言うか、恐れもないのか!?」

 と思ったらしい。
 しかし、刹那は、そう思っているともしらず、

「ほーら、子竜ちゃん!!おりこうさんだね~!!お母さんは嬉しいよ~!!」

 と、なでなですりすりをするとぺろんと鼻を嘗めてくれる。

 3匹はとても個性があって、おっとりとしたのは子竜である。
 ヤンチャ坊主は元譲。
 お嬢様は麗珠。
 お転婆、瑠璃がいたときに一度理解していた。
 別れはいつか来ると……。

 一昨日、久しぶりに子竜の篭を掃除していたときだった。
 子竜は飼いはじめてすぐ、お腹の毛が抜けて、ピンクの肌になっていた。
 幾つも、病院をめぐったが、駄目だった。

 手を洗って、子竜をすくい砂場に入れる。
 子竜は、砂場で体を洗うのは嫌いで、必死に逃げる。
 それを捕まえて、違和感に気がついた。

「何?」

 お腹を見るように仰向けにさせると、左側……子竜の脇腹に青紫の大きな塊があった。
 絶句する。
 何?これは何?
 何で?
 恐る恐る触ってみると、しこりに近い感じがする。

「何で?……何で!!気を付けていたのに!!他の子は元気なのに、何で?」

 叫ぶ。
 家に連れて帰れない……いや、前の家よりも隣の部屋との壁は厚い。
 犬ではないのだ、大丈夫だと思ったが、老齢に差し掛かったハムスターを別の場所に連れていくのも可哀想ろうと、実家に預けていた。
 妹が面倒を見てくれているが、妹は気がつかなかったと言う。
 いや、普通のハムスターなら、頬袋の下に、ひまわりの種をためこんでいるのだろうと思うだろう。
 しかし、運が良いのか、毛が抜けているところに、2cm余りのものがはっきりと見えた。

「どうして……!!」

 涙がボロボロこぼれる。
 他の子も可愛がっているが、子竜は、元々体が弱くて病気が多く、病院に連れていっても、

「犬猫はみますが、ハムスターは無理です」
「私たちは見られませんが、元動物園の獣医をされていた方がいるので、そちらに連れていってみては?」
「どんな動物でも見てくれるんですか?」

 すがる気持ちで聞くと、

「多分。動物園ですからライオンやキリン、ゾウ、鳥とか診ますよ?」
「この子はハムスターで、ゾウじゃないですよ?」
「ですから、多分です。そこがこの街では一番の色々な種類の動物を診察できるんです」
「じゃ、じゃぁ、行きます!!ど、どこですか?」

 と聞いた時に絶望した。

 住んでいた地域が南東の方角、病院は市の北西のはし、バスかタクシーでしかいけない。
 そして、子竜の病気がなおるかも解らないし、寿命は二歳から三歳……老齢に差し掛かる病弱な子竜に手術なんて出来ない……涙がこぼれた。

 死は必ず来ることを知っていた。
 それでも、それが遠い未来であると信じていた。
 しかし、目の前に突きつけられたのだ。

 子竜のしこりを取ることを諦めた。
 子竜には少しでも長く生きてほしい。
 他の二人にも、見送る側である自分でも、ちゃんと子供達の事を見送る覚悟を決めた。



 昨日になったが、夏服を5枚購入した。
 一枚は、今までの自分なら買わないミッキーマウスの顔のTシャツである。
 可愛いアンサンブルの色柄違いも二種類購入した。
 本も、物を片付けるのがとてつもなく下手な刹那のために、ポーチを3つの大きさの物を選んだ。



 ちょっとずつ前に進もう……。
 今日は流行遅れと言われようが、アナと雪の女王のグッズが可愛くて購入した。似合わないとか、言い訳せずに自分の信じた道を生きていこうと思う。
 もっと、もう少し自分のために、自分は何も出来ないと責めるのではなく、自分を誉めたい。
 もう少し、頑張ろうと思う。
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