ファンタジーのごった煮

刹那玻璃

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スキル《田んぼ》の兄とあたし

スキル『破壊』

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 《破壊》スキル……。
 普通、貴族は10歳、一般の人は15歳でスキルを獲得する。
 オレは10歳になる前に何故か獲得する羽目になった。
 一応身分で優劣があるのではなく、貴族は小さい頃からあれこれと教育されることにより、知識情報、そして制御も学べる。
 一応スキルと魔法は別だ。
 5歳頃にこちらも神殿で鑑定する。
 魔法鑑定の神殿は、王家が厳しく管理しているので、鑑定料はない。
 代わりに魔力、魔力量、どの魔法が使えるかで学科が分けられるが魔法使いの学園に通える。
 学園は実力主義なので、身分は関係ない。
 オレの祖母は一般の家出身で、珍しい白魔法使い、父の弟の奥さん……つまり叔母は元孤児で、青の魔法使いだ。

 オレには二つ違いの妹がいるが、妹は《白の支配者》と言うスキル持ちの、黄魔法使いと言う不思議な存在だ。
 でも……。

「いいなぁ……ルルは……オレは……」
「兄さんの方がいいでしょ? 一度にドッカーンでいいのよ」
「やめてくれ! なんで、オレは《破壊》スキルと赤魔法使いのダブルなんだよ!」

 頭を抱える。
 5歳の時に、赤魔法使いという鑑定結果が出た。
 その上、物心つく前から泣くと小爆発やら、癇癪を起こすと庭の陥没など……周囲を恐怖の坩堝るつぼに陥れ……たが、両親をはじめとした周囲は大喜びしていたらしい。

「おぉ! 元気な子だ! オレは病弱であんまり泣かなかったらしいからな! いいことだ!」
「まぁまぁ、大きな穴ができたわね……すごいわ! さすが、わたくしの息子! 発掘作業の手間が省けました!」
「おいおい……義姉上……わざと泣かせんなよ? モモは掘削機じゃないんだぞ? おぉ! 治癒だな~?」
「あらあら、モモちゃん、お熱が出てるわよ。それに転んじゃって血が出てる。癒しの水ね?」

 と言う感じだ……。
 モモ……というのはオレの、ルルは妹の愛称だ。



 最初、オレの魔法が分かった時、家族は喜んだ。
 でも、赤は文字通り炎系魔法だというのに、ボコボコと穴を作ったり、物を破壊することに周囲は怯え、スキル鑑定を勧められた。
 最低でも10歳なのだしと渋る家族をかいくぐり、無理矢理連れて行かれた先でスキルは暴かれた。
 5歳のオレは離宮に押し込められそうになり、怒り狂った母が3歳のルルを叔父夫婦に預け、オレを連れて家出した。
 母は掘削スキル持ちのマッドな地層学者。
 オレのギャン泣きが面白いし、役に立つといつか王宮を抜け出して連れ回したいという野望を持っていたと胸を張っていた。
 その後、オレはルルと父、叔父一家に定期的に会う時以外は、田舎の地層近辺で過ごし、6歳からは下町の小さい学校で2年勉強しそれ以降は母の友人の学者に教えを乞うた。
 その中に、しれっと父や叔父夫婦がいたことは笑い話だ。
 そして2年前に、

「モモも15歳になったし、どうか寂しいから戻ってくれ!」

と父に土下座され、現在礼儀作法云々を学んでいる。
 勉強は……いつのまにか大学院レベルまで到達していたとだけは言っておく。



「はぁぁ……」

 疲れた。
 王宮に戻ってから2年。
 状況は変わらない。
 イライラするのもダメだし、オレは何をしてストレスを発散させればいいのか……。

 ある日の午後、妹のルルが困惑したように姿を見せた。

「お兄さま、わたくしの、《白の支配者》というスキルには対があるらしいと言われていたのですが、スキル神殿で《黒の支配者》が生まれたそうですの」
「そうなのか? それはいい! その人に来てもらうのはどうだ?」
「それが……神官たちが、不吉スキルだから追放すると……」
「はぁぁ?」

 冗談じゃない!
 スキルは恩恵であり、不吉ではない。
 オレはまだ制御不能だが……《破壊》の反対の恩恵のスキル持ちがいればなんとかなる……と思っているのに……。
 ルルもスキルをどう扱えばいいのかわからなくて、不安に思っているというのに……。

「あ、そういえば、とても素敵なスキルが発見されたと連絡がありましたわ~。《田んぼ》スキルですって。お兄さまは色々な地域を視察されていたのでしょう? 《田んぼ》ってどんな場所ですの?」
「《田んぼ》っていうのは……南国の主食のライスって言う、麦のようなものを育てる場所で、土を耕して水を張り、苗を植えている。成長した苗が沢山の実をつける様は……」
「まぁ! じゃぁ、お兄さまの求める平和、豊穣のスキル持ちですのね? 確か、わたくしの対の《黒の支配者》さんと、《田んぼ》スキル持ちさんはご兄妹だそうですわ! お兄さま! お父さまとお母さまにその方々を王宮にお招きできないか、相談いたしましょう!」

 不明スキルに悩んでいたルルの言葉に、オレも頷く。
 そうだ!
 両親や叔父たちに相談して、もしそんなスキルがあれば、助けてもらえるように頼んでみよう。
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