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第7章
国王はキャスリーンを昔のように思っているようです。
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息子をどうしようかと思いつつ、周囲に賄賂、地位、女と言った考えしか持たぬ者でしかいない国王は怒鳴り散らすだけで日が過ぎて行くのだったが、ある時、
「陛下。エメルランドに帰省中の王妃さまが、今この国を訪れているそうでございます。もしかしたら、愛息であられる殿下のことを心配されて、お戻りになられたのでは?」
「何? 王妃……どんな女だったか……」
都合の悪い事は忘れるいい性格の男は考え込むと、
「陛下。キャスリーンさまですわ」
愛妾パルミラの言葉に、
「あ、あの気の強い小娘? そうか! 可愛い息子を救いたいとやってきたのか! 呼べ、いや、すぐに息子の元に行かせろ!」
「は、はい!」
返事をした下級貴族が、そそくさとラインハルトの両親と共に王都に来たキャスリーンの元に向かう。
キャスリーンは、ラインハルト夫婦に似た兄弟が、小さい少女を連れて迎えにきたのに驚いていた。
二人は幼児を間に挟んで優しく手を繋ぎ、二人を見上げツインテールの女の子はきゃっきゃと笑っている。
「アルフィナ? あちらが私達のおじいさまとおばあさま。そして、この方が隣の国の国王陛下の妹姫のキャスリーンさま」
「はじゅめましゅて! セシルおにいしゃま、ゆーりゅおにいしゃまのおじいしゃま、おばあしゃま。アユフィナでしゅ。おねえしゃま、こんにちはでしゅ」
勢いよく頭を下げる少女は、バランスを崩し、手を繋ぐ兄弟が慌ててぐいっと引っ張る。
「アルフィナ! 危ないでしょ! もう少しで頭ゴーンだよ!」
「そうだぞ! あーびっくりした!」
「アユフィナもビックリにゃの」
焦る二人の横で目もパチクリさせる少女は、赤銅色の強い金色の髪、瞳は大きく丸くエメラルド色である。
痩せているものの、顔立ちは整っていてお人形のようである。
「ははは! 手紙でも可愛いと聞いていたが……」
「本当だわ……愛らしいこと」
セシルたちの祖父母に当たる先代公爵夫妻は微笑むと、手招きをする。
近づいてきた孫達に、
「お前は覚えておらんかな?」
「いえ、覚えております。キャスリーンさま、お久しぶりにございます。セシルです。覚えておられますか?」
「……え、まぁぁ! もしかして、あの、ラインハルト殿の? 大きくなられたのね! 幾つだったかしら?」
「もうすぐ19です」
セシルの微笑みにキャスリーンは、
「お姉さまにそっくりね。そうすると、そちらがユール?」
「はい、今年17になります。キャスリーンさまもお元気そうで」
「うふふ! 昔はお転婆娘だったけど、今じゃおばさんになっちゃったわ」
「キャスリーンさまはいつまでもお元気で、跳ねっ返りがいいと思います」
「こら、ユール! 一言多い!」
セシルは弟をたしなめると、手を引いていた子供を抱き上げる。
「キャスリーンさま。紹介しますね。アルフレッド兄上の娘のアルフィナです。五歳です。アルフィナ? お隣の国のお姫さまで、アマーリエおばあさまと仲良しのお姉さまだよ。ご挨拶しようね?」
「は、はじゅめましゅて! アユフィナでしゅ。よろしゅくおねがいいたしゅましゅ」
「ま、まぁ! アルフレッド殿のお嬢さん……? ど、どうしましょう! 可愛すぎるわ!」
5歳だというが、小柄で華奢で舌ったらず、でも一所懸命話そうとしているところが素直、その上……。
「初めまして。私はキャスリーンです。よろしくね? アルフィナ。キャス……いいえ、リーンと呼んで頂戴ね?」
「リーンおねえしゃまでしゅね! アユフィナと呼んでくだしゃい」
ちゃんとぺこんと頭を下げる……それが本当に愛らしい。
アルフレッドが結婚していて、子供がいるのも胸が痛むが、それ以上にこんなに可愛い娘とは……羨ましい。
「可愛いわ。それに、本当にちゃんとご挨拶できてお利口さんね。お父さまもそんな方だったわ」
近づき頭を撫でる。
嬉しそうに……心底キャスリーンに撫でられて嬉しいと言いたげに、頬を赤くするアルフィナに微笑みかけると、
「失礼致します。大旦那さま、大奥さま。そして若君方、少々……」
入ってきた執事が珍しく険しい顔で入ってくる。
「私は大丈夫よ? アルフィナと遊んでいるわ」
「いえ、実は……」
躊躇いがちに、キャスリーンを見る。
「申し訳ございません。キャスリーン様。こちらの家令イーリアス殿がお越しです」
イーリアスは丁寧に頭を下げる。
「まぁ、イーリアス。お久しぶりです。変わりなく、お元気そうね」
「キャスリーン様、お久しぶりにございます」
頭をあげたイーリアスは、いつになく険しい顔である。
「どうしたの?」
「実は……こちらの国王陛下より、使いが参っております」
「あら、もう関わりのない方ですから、お帰り頂いて」
「実はそう申し上げているのですが、聞き分けがないのです。ご存知の通り、オツムが少々どころかお馬鹿なのは、キャスリーンさまも覚えていらっしゃるでしょう?」
毒を吐くイーリアスの後ろから、ジョンとミーナが侍女と共にティーセットを押してくる。
「ご報告させて頂きました。一応あちらにはお帰り頂くよう、お伝えしておきますのでご安心下さいませ。そして、お嬢様をよろしくお願い致します」
丁寧に頭を下げ去っていく。
つまり、ここでゆっくりして欲しい、昔話でも何でもいいから話を長引かせて、使いを帰らせようという魂胆である。
「キャスリーン様。こちらのお菓子はフェリシア様とアルフィナ様が作られたのです。如何でしょうか?」
「ハーブティは、ケルト様とフェリシア様が、ルシアン様と大旦那様に相談しながら育てたものを、譲って頂きましたの」
瓜二つの侍女は微笑むと、
「リリしゃ! エリしゃ! アユフィナもおてつらい!」
「お嬢様? 今日は、セシル様とユール様とご一緒に、キャスリーン様方をおもてなしですよ?」
「お手伝いは、また今度お願いしますね?」
「あい! がんばゆ!」
アルフィナは、自分の作ったお菓子を説明する。
「えっと、フェリシアおねえしゃまとちゅくりました。おいしくなーれ、元気になーれっていったのでしゅ」
「まぁ、大変ではなかったの?」
キャスリーンは、型抜きで動物の形や花の形にくり抜かれたクッキーを手に取ると、口に運ぶ。
すると、香ばしく今まで食べたクッキーより味が美味しい上に、甘みよりもっと何かが違う……。
「んっと、リーンおねえしゃま。たのしかったでしゅ。おとうしゃまも美味しい美味しいって!」
「まぁ、良かったわね。ってあら? 体がポカポカしてきたわ」
「フェリシアは力を制御できるのですが、まだ幼いアルフィナはできなくて、言葉に出したことが全部叶ってしまうのです」
セシルはアルフィナを抱き上げる。
「キャスリーン様もおじいさまもおばあさまも、長旅でお疲れでしょう? それで、きっとアルフィナは頑張って作ったんだと思います。この子は二人目の聖女です。それが分かって、何度かアソシアシオンから連れ去ろうとする者が来ています。そしてフェリシアもアソシアシオンに連れて来いと命令が……」
「まぁ!」
聞いていなかった事実に、キャスリーンは絶句する。
「アルフィナはアルフレッド兄上の娘。それにフェリシアはケルトと正式に婚約し、今度結婚します。聖女じゃなくていい。家族といたい。それが私達の望みです。そしてフェリシア達を救ってくれなかった教会を、信用していません……いえ、フェリシアではなく周囲の私達がです。キャスリーン様はあの馬鹿を産んだ方です。でも、お気持ちは分かっております」
「私、はっきり言って、結婚は墓場って本当だと思ったわ」
暗い目をして、お茶を口にするキャスリーン。
「あの男……名前も忘れたわ。それに生まれた子供に愛情なんて抱けなかった。周囲は私を化け物のように、鬼のように言い、罵った。アルフレッド様やアマーリエ様に助けて頂かなければ、死んでいたと思うの……心も体も……」
「おねえしゃま、いい子いい子にゃの。おねえしゃま、やしゃしいの」
「ありがとう、アルフィナ。本当に……アルフィナが私の娘だったら……本当に幸せだと思うわ」
本心をつぶやく。
すると、扉をノックする音がして、
「失礼します」
姿を見せたのは、アルフィナの父のアルフレッドと、その後ろには姪を抱っこしたベルンハルド。
「まぁ……お、お久しぶりですね。アルフレッド様。そして……」
「キャスリーンさま、お久しぶりです。紹介します。母の再婚相手……私の義父の息子であり、私の弟のベルンハルドと私の下の娘です。アンネリと言います。ベルンハルド。隣国エメルランドの王妹、キャスリーン王女殿下だよ」
「初めてお目にかかります。ベルンハルドと申します。キャスリーン様、どうぞ宜しくお願い致します」
「初めまして。ベルンハルド殿。宜しくお願いしますね」
キャスリーンはベルンハルドに好感を持つ。
まっすぐな眼差しと瞳は義理の兄弟だというのに、アルフレッドに似ている。
「ところで、キャスリーン様。使いの者が来ております。嫌と拒絶できます。ですが、今、この国の状況を見て、聞いて頂きたいと思う私やカーティス兄上達もおります」
真剣な眼差しに、しばらく躊躇い頷いた。
「分かりました。ですが、王宮には行きたくありません」
「分かっております。キャスリーン様の嫌がることは絶対致しません。そして、必ず私がお守り致します」
「……お願い致しますわ」
「はい」
アルフレッドは弟と共に頭を下げたのだった。
「陛下。エメルランドに帰省中の王妃さまが、今この国を訪れているそうでございます。もしかしたら、愛息であられる殿下のことを心配されて、お戻りになられたのでは?」
「何? 王妃……どんな女だったか……」
都合の悪い事は忘れるいい性格の男は考え込むと、
「陛下。キャスリーンさまですわ」
愛妾パルミラの言葉に、
「あ、あの気の強い小娘? そうか! 可愛い息子を救いたいとやってきたのか! 呼べ、いや、すぐに息子の元に行かせろ!」
「は、はい!」
返事をした下級貴族が、そそくさとラインハルトの両親と共に王都に来たキャスリーンの元に向かう。
キャスリーンは、ラインハルト夫婦に似た兄弟が、小さい少女を連れて迎えにきたのに驚いていた。
二人は幼児を間に挟んで優しく手を繋ぎ、二人を見上げツインテールの女の子はきゃっきゃと笑っている。
「アルフィナ? あちらが私達のおじいさまとおばあさま。そして、この方が隣の国の国王陛下の妹姫のキャスリーンさま」
「はじゅめましゅて! セシルおにいしゃま、ゆーりゅおにいしゃまのおじいしゃま、おばあしゃま。アユフィナでしゅ。おねえしゃま、こんにちはでしゅ」
勢いよく頭を下げる少女は、バランスを崩し、手を繋ぐ兄弟が慌ててぐいっと引っ張る。
「アルフィナ! 危ないでしょ! もう少しで頭ゴーンだよ!」
「そうだぞ! あーびっくりした!」
「アユフィナもビックリにゃの」
焦る二人の横で目もパチクリさせる少女は、赤銅色の強い金色の髪、瞳は大きく丸くエメラルド色である。
痩せているものの、顔立ちは整っていてお人形のようである。
「ははは! 手紙でも可愛いと聞いていたが……」
「本当だわ……愛らしいこと」
セシルたちの祖父母に当たる先代公爵夫妻は微笑むと、手招きをする。
近づいてきた孫達に、
「お前は覚えておらんかな?」
「いえ、覚えております。キャスリーンさま、お久しぶりにございます。セシルです。覚えておられますか?」
「……え、まぁぁ! もしかして、あの、ラインハルト殿の? 大きくなられたのね! 幾つだったかしら?」
「もうすぐ19です」
セシルの微笑みにキャスリーンは、
「お姉さまにそっくりね。そうすると、そちらがユール?」
「はい、今年17になります。キャスリーンさまもお元気そうで」
「うふふ! 昔はお転婆娘だったけど、今じゃおばさんになっちゃったわ」
「キャスリーンさまはいつまでもお元気で、跳ねっ返りがいいと思います」
「こら、ユール! 一言多い!」
セシルは弟をたしなめると、手を引いていた子供を抱き上げる。
「キャスリーンさま。紹介しますね。アルフレッド兄上の娘のアルフィナです。五歳です。アルフィナ? お隣の国のお姫さまで、アマーリエおばあさまと仲良しのお姉さまだよ。ご挨拶しようね?」
「は、はじゅめましゅて! アユフィナでしゅ。よろしゅくおねがいいたしゅましゅ」
「ま、まぁ! アルフレッド殿のお嬢さん……? ど、どうしましょう! 可愛すぎるわ!」
5歳だというが、小柄で華奢で舌ったらず、でも一所懸命話そうとしているところが素直、その上……。
「初めまして。私はキャスリーンです。よろしくね? アルフィナ。キャス……いいえ、リーンと呼んで頂戴ね?」
「リーンおねえしゃまでしゅね! アユフィナと呼んでくだしゃい」
ちゃんとぺこんと頭を下げる……それが本当に愛らしい。
アルフレッドが結婚していて、子供がいるのも胸が痛むが、それ以上にこんなに可愛い娘とは……羨ましい。
「可愛いわ。それに、本当にちゃんとご挨拶できてお利口さんね。お父さまもそんな方だったわ」
近づき頭を撫でる。
嬉しそうに……心底キャスリーンに撫でられて嬉しいと言いたげに、頬を赤くするアルフィナに微笑みかけると、
「失礼致します。大旦那さま、大奥さま。そして若君方、少々……」
入ってきた執事が珍しく険しい顔で入ってくる。
「私は大丈夫よ? アルフィナと遊んでいるわ」
「いえ、実は……」
躊躇いがちに、キャスリーンを見る。
「申し訳ございません。キャスリーン様。こちらの家令イーリアス殿がお越しです」
イーリアスは丁寧に頭を下げる。
「まぁ、イーリアス。お久しぶりです。変わりなく、お元気そうね」
「キャスリーン様、お久しぶりにございます」
頭をあげたイーリアスは、いつになく険しい顔である。
「どうしたの?」
「実は……こちらの国王陛下より、使いが参っております」
「あら、もう関わりのない方ですから、お帰り頂いて」
「実はそう申し上げているのですが、聞き分けがないのです。ご存知の通り、オツムが少々どころかお馬鹿なのは、キャスリーンさまも覚えていらっしゃるでしょう?」
毒を吐くイーリアスの後ろから、ジョンとミーナが侍女と共にティーセットを押してくる。
「ご報告させて頂きました。一応あちらにはお帰り頂くよう、お伝えしておきますのでご安心下さいませ。そして、お嬢様をよろしくお願い致します」
丁寧に頭を下げ去っていく。
つまり、ここでゆっくりして欲しい、昔話でも何でもいいから話を長引かせて、使いを帰らせようという魂胆である。
「キャスリーン様。こちらのお菓子はフェリシア様とアルフィナ様が作られたのです。如何でしょうか?」
「ハーブティは、ケルト様とフェリシア様が、ルシアン様と大旦那様に相談しながら育てたものを、譲って頂きましたの」
瓜二つの侍女は微笑むと、
「リリしゃ! エリしゃ! アユフィナもおてつらい!」
「お嬢様? 今日は、セシル様とユール様とご一緒に、キャスリーン様方をおもてなしですよ?」
「お手伝いは、また今度お願いしますね?」
「あい! がんばゆ!」
アルフィナは、自分の作ったお菓子を説明する。
「えっと、フェリシアおねえしゃまとちゅくりました。おいしくなーれ、元気になーれっていったのでしゅ」
「まぁ、大変ではなかったの?」
キャスリーンは、型抜きで動物の形や花の形にくり抜かれたクッキーを手に取ると、口に運ぶ。
すると、香ばしく今まで食べたクッキーより味が美味しい上に、甘みよりもっと何かが違う……。
「んっと、リーンおねえしゃま。たのしかったでしゅ。おとうしゃまも美味しい美味しいって!」
「まぁ、良かったわね。ってあら? 体がポカポカしてきたわ」
「フェリシアは力を制御できるのですが、まだ幼いアルフィナはできなくて、言葉に出したことが全部叶ってしまうのです」
セシルはアルフィナを抱き上げる。
「キャスリーン様もおじいさまもおばあさまも、長旅でお疲れでしょう? それで、きっとアルフィナは頑張って作ったんだと思います。この子は二人目の聖女です。それが分かって、何度かアソシアシオンから連れ去ろうとする者が来ています。そしてフェリシアもアソシアシオンに連れて来いと命令が……」
「まぁ!」
聞いていなかった事実に、キャスリーンは絶句する。
「アルフィナはアルフレッド兄上の娘。それにフェリシアはケルトと正式に婚約し、今度結婚します。聖女じゃなくていい。家族といたい。それが私達の望みです。そしてフェリシア達を救ってくれなかった教会を、信用していません……いえ、フェリシアではなく周囲の私達がです。キャスリーン様はあの馬鹿を産んだ方です。でも、お気持ちは分かっております」
「私、はっきり言って、結婚は墓場って本当だと思ったわ」
暗い目をして、お茶を口にするキャスリーン。
「あの男……名前も忘れたわ。それに生まれた子供に愛情なんて抱けなかった。周囲は私を化け物のように、鬼のように言い、罵った。アルフレッド様やアマーリエ様に助けて頂かなければ、死んでいたと思うの……心も体も……」
「おねえしゃま、いい子いい子にゃの。おねえしゃま、やしゃしいの」
「ありがとう、アルフィナ。本当に……アルフィナが私の娘だったら……本当に幸せだと思うわ」
本心をつぶやく。
すると、扉をノックする音がして、
「失礼します」
姿を見せたのは、アルフィナの父のアルフレッドと、その後ろには姪を抱っこしたベルンハルド。
「まぁ……お、お久しぶりですね。アルフレッド様。そして……」
「キャスリーンさま、お久しぶりです。紹介します。母の再婚相手……私の義父の息子であり、私の弟のベルンハルドと私の下の娘です。アンネリと言います。ベルンハルド。隣国エメルランドの王妹、キャスリーン王女殿下だよ」
「初めてお目にかかります。ベルンハルドと申します。キャスリーン様、どうぞ宜しくお願い致します」
「初めまして。ベルンハルド殿。宜しくお願いしますね」
キャスリーンはベルンハルドに好感を持つ。
まっすぐな眼差しと瞳は義理の兄弟だというのに、アルフレッドに似ている。
「ところで、キャスリーン様。使いの者が来ております。嫌と拒絶できます。ですが、今、この国の状況を見て、聞いて頂きたいと思う私やカーティス兄上達もおります」
真剣な眼差しに、しばらく躊躇い頷いた。
「分かりました。ですが、王宮には行きたくありません」
「分かっております。キャスリーン様の嫌がることは絶対致しません。そして、必ず私がお守り致します」
「……お願い致しますわ」
「はい」
アルフレッドは弟と共に頭を下げたのだった。
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