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第7章

アルフィナとアンネリのお父さんとお母さん

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 この日、アルフィナはセシルと並んで座り、セリアーナはヨルムと一緒に向こう側に座っている。
 そして、初めて見る乳白色の星型のものや色々な柄の小さなものにキョトンとする。
 お祖母様やお母様たちの宝石と違う、色が白くなった青や赤、緑の石……。

「きりゃきりゃじゃにゃいの?」

 サリサとフレア、アルベルティーヌは微笑む。

「これは、小さい貝殻やヒトデという海に生きていた生き物が、砂浜に打ち上げられていたのを拾ったのよ」

 アルベルティーヌは見せる。

「そして、これはシーグラスと言って、割れたガラスが波と石によって削れて安全なのよ。触っても大丈夫」
「でも、アルフィナもセリアーナも、普通の……お家でグラスが割れた時は触っちゃダメよ?」

 アルベルティーヌの義理の姉サリサは、注意する。

「あれは尖っていて、刺さるととても痛いのよ。割れた時には誰かを呼んでね?」
「あい!」
「はい!」
「お利口さんね」

 アルベルティーヌは二人の頭を撫でる。

「お母様達はランプシェードを作るのだけど、アルフィナは何を作ると良いかしら?」
「そうねぇ……」
「あぁ、そうだわ」

 フレアは、シーグラスを細いワイヤーでぐるぐると包み、そして、ワイヤーを切ると革紐で結ぶ。

「わぁぁ! しゅごい!」
「これは、アルフィナにお母様から。そして難しいけれど一緒のものを、お父様とキャスリーンお姉さまに作ってあげましょうね?」
「あい!」

 石を選び、アルフィナは横にいるアルベルティーヌに教わりながら、四つ作る。

「あら。上手ね」
「えっと、おとうしゃまとおばあしゃま、おじいしゃまとリーンおねえしゃまの。べリュおにいしゃまとアンニェリにもちゅくゆ……」

 頑張ると言う少女に、横で何かを作っていたセシルが、

「アルフィナ? 母上に教わって、ベルンハルドにランプシェードを作っているのだけど、手伝ってくれないかな?」
「きりぇい~!」
「本当? 嬉しいなぁ。ほら、ここのあたりに、何を入れたらいいかなぁ?」

アルフィナは広げられたシーグラスに貝殻を見つめ、ヒトデを持ち上げる。

「こりぇ! おほししゃま!」
「じゃぁ、ここに貼ってくれる?」
「あい!」

 手伝って貰いながら、貼り付けると、

「おにいしゃま。おとうしゃま、よこりょんでくえりゅかな?」
「喜んでくれるよ。あ、そうそう」

隠していたものを髪に刺す。
 髪飾りである。

「はい。お兄ちゃんがアルフィナに」
「わぁぁ、おにいしゃま。あいがとう!」
「どういたしまして。でも、アルフィナ? アンネリはまだ小さいから、何でも口に入れちゃうからね? 今回はやめようね?」
「あい!」

 続いて、大好きなフェリシアの為にと、セシルと一緒に同じ形の髪飾りを作っていたアルフィナに、セリアーナはヨルムにランプシェードを渡され、目を輝かせる。

「えっ、えっ、い、いいの? だって……」
「セリアーナにプレゼント。ちょっと頑張ったんだ、僕」
「……あ、ありがとう……」

 目に涙を溜めて、お礼を言う。

「こんな素敵なの初めて……嬉しい」
「な、泣かないでよ! また今度、もっとすごいの作るから! 僕はお兄ちゃんと違って器用なんだから!」
「……だって、これくらいしか……ダメだったんだもの」

 これは、サリサに渡されたフレームの隅に、小さい誰も使わなそうなシーグラスや貝殻をせっせと貼り付けていた。
 サリサたちは何も言わないが、セリアーナは自分の身分をわきまえている。
 この席にいるのですら申し訳ないと思っている。
 しかし、ヨルムの母のフレアを中心として、ヨルムの嫁認定されており、花嫁教育として様々な勉強を受けているのを本人だけが知らなかったりする。

「えっ! 凄い! 綺麗! 僕にくれるの?」
「こんなのでよければ……」
「ううん! ありがとう! 机に置かなくちゃ! 嬉しい!」

 受け取り喜ぶヨルムに頬を赤くする。

「こちらこそありがとう……う、嬉しい! で、でも! こんな豪華なの……」
「セシル兄さんの領地は隣国と海に面しているから、いつでも取れるよ? アルベルティーヌさまの趣味がハンドメイドだから、海に行っては取るの。タダだよ」
「いいのよ。沢山使って頂戴」

 アルベルティーヌは微笑む。

「ありがとうございます!」

 トントンとノックが響き、

「皆様。旦那様とキャスリーン様、ラインハルト様、カーティス様のお帰りです」

ジョン夫婦の息子でアルフレッドの執事のガイの声に、アルフィナはセシルに手伝って貰いながら包んだものをささっと隠せず、何故かガバッと腕に抱えてテーブルに伏せる。
 その姿にヨルムは吹き出し、セシルは頭を叩き、そして、姿を見せたアルフレッド達がギョッとする。

「ど、どうしたの? アルフィナ。お腹が痛くなったの?」
「ちやうの。んーと、んーと……みにゃかったことにして、にゃの」
「ぷっ……」

 サリサがコロコロと笑う。

「アルフィナ? 折角なのだから、隠さないでプレゼントしましょうね」
「えっ? プレゼント?」

 アルフィナは、おずおずくしゃくしゃになった袋を伸ばし、父親とキャスリーンに手渡す。

「おとうしゃま、おねえしゃま。アユフィナ、んっと、おしょわってちゅくったの」
「ありがとう。開けていいかしら?」

 受け取ったキャスリーンは袋を開けると、シーグラスをワイヤーで飾ったネックレス。
 そのシーグラスは、アルフレッドの瞳と同じブルー。
 横に立って同じように中を見たアルフレッドは、キャスリーンやアルフィナと同じグリーン。
 お互いに見せ合って微笑む。

「素敵ね! アルフィナ。本当に本当に嬉しいわ」
「本当に、ありがとう。アルフィナ……」

 アルフレッドは娘を抱き上げる。

「嬉しいよ! ありがとう……」
「私も……」

 二人で頰にキスをする。
 アルフィナは嬉しそうに頬を赤くして、キスを返す。

「おとうしゃま、おねえしゃま、だいしゅき!」
「お父様もだよ。え、えとね? アルフィナ……お父様は、結婚しようと思うんだ。アルフィナ、キャスリーンがお母さんに……アンネリと家族になろうか?お父様とお母様と、アルフィナとアンネリ。一緒にいよう? どうかな?」

 その言葉に、二人を見つめると、

「アユフィナのおかあしゃま? リーンおねえしゃまが、おかあしゃまになってくえりゅの?」
「そうだよ。どうかな?」
「……うえしい……おかあしゃま、アユフィナのおかあしゃま? だいしゅき!」
「アルフィナ……! ありがとう」

キャスリーンは目に涙を溜めて、抱きしめる。
 周囲は家族が幸せになることを疑わなかったのだった。
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