君のことを本当に……?

刹那玻璃

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祐次から……《声》

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 祐次ゆうじが初めて出会った……入学式の当日に見たのは、妹の葵衣あおいよりも小さい女の子が人の波に押しつぶされそうになっているものだった。
 人波に圧されて、倒れかかる華奢な体に慌てて手を伸ばした。

「おい、大丈夫か?」

 手だけでは無理だと、抱き締めるようにして引き寄せる。

「本当に大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます……人が多くて……」
「あぁ、多いな。時間はあるし、ゆっくりいけばいいと思うぞ」
「あ、そうでした。ありがとうございます。先輩ですか?」

 顔をあげた少女は、4才下の妹並みに童顔……。
 しかし、それを言わず、

「いや、俺も新入生。俺は不知火祐次しらぬいゆうじだよ。よろしく」
「あ、私も新入生で大塚観月おおつかみづきです」

ちょこんとした小柄で可愛い観月の仕草に、実際ツンデレの祐次は、従兄の子供たちを撫でる時のように頭を撫でそうになり、慌てて、

「じゃぁ、大塚。このまま人の間を抜けても大変だと思うし、時間かかってクラスを見られないと思う。俺が大塚を抱き上げるから、見つけてくれるか?」
「へ?」
「あ、スカートをみたりとかじゃないから! 普段の筋力トレーニングでだから、はいっ!」

丁度ウエストを抱え持ち上げると、片方の肩に乗せる。
 そして危険がないように支えながら、

「見える?」
「し、不知火君の漢字は……不知火だから、1組です」
「じゃぁ、大塚は?」
「えっと……」

不知火という珍しい名字なら兎も角、大塚はある程度多い。
 周囲の視線もあり、慌てるが、ようやく見つけ、

「ありました! 1組です!」
「やったな! じゃぁ、下ろすから」

ひょいっと軽々と下ろすと、

「よし、スカートとか、荷物とか大丈夫か? 急にごめんな? 恥ずかしかっただろ?」
「いえ、ありがとうございました! 高いところが見えました!」
「それじゃ、一緒に教室に行くか」
「えっ?」
「えっ?って、同じクラスだし、行こうかって……駄目か?」

首を傾げられ、まばたきをした観月は頬を赤くして、

「ありがとう。教室も場所を確認しなくちゃと思ってたから……」
「いや、それじゃ、行くか。あ、み……じゃなくて大塚って呼んでいいか?」
「じゃぁ、不知火君で構いませんか?」
「あぁ」

歩き出す。
 すると、ふと、思い出したように、

「不知火君の名字って、確か……柔道の不知火寛爾しらぬいかんじ選手と一緒……?」
「ゲッ?……な、内緒にしてくれ。父さんなんだ……」
「え? そうなんですか? でも、この県には……」
「ここは母さんの実家があって、仕事のその……選手としては引退したしって、母さんが帰りたいって言うし……帰ってきたんだ」

首をすくめる。

「従兄姉たちもいるし……良いんだけど、この高校は従兄の母校で入学したんだけど、失敗したかな~」
「えっ? 辞めるんですか?」
「いや、違う違う。俺は一応柔道や剣道に空手を習ってたんだけど、勉強実はもう、本当は駄目駄目でさ」

 頭をかく。

「去年の夏に、従兄の兄さんたちに勉強を教わって、何とか入学できたんだけど……大丈夫かなぁと思って」
「だ、大丈夫ですよ! 私も英語ダメなんです! 一緒に補習しましょう!」

 その一言に噴き出す。

「え? え? 変ですか?」

 半泣きになりそうな観月に慌てて、

「いや、普通、欠点まぬがれるように一緒に勉強しましょうだぞ~? 大塚」
「そ、そうなのですか?」
「まぁ、補習もいいけど、その前に何とかまぬがれような? よろしく」
「は、はい!」

あ、ようやく笑った……と、祐次はホッとするのだった。



 一緒に到着して様子を見守っていた祐次の父の寛爾とめぐみは、息子のその行動に、顔を見合わせると、

「祐次にしては珍しいね」
「いやぁぁ! 可愛い! 祐次に彼女!」
「いや、愛。まだ、違うと思うから……」
「いいえ、絶対そうよ! 祐次は可愛い女の子が大好きですもの! もし高校で彼女ができなかったら、もうお隣の苺花いちかちゃんの子供しかいないわ! それ以前に、女の子でありますように……まぁ、男の子でも可愛かったらいいけど。私は偏見はありませんからね?」
「愛……」

 寛爾はため息をつく。

 一応、戸籍上は違うが、義理の息子には子供……つまり孫のいる寛爾夫婦である。
 それでも、愛はポエマーである。
 愛の生んだ最初の子、祐也ゆうやは現在20代後半で、時々嫁と子供たちを連れて会いに来てくれる。
 血の繋がりのない祐也だが、寛爾をお父さんと呼んでくれる上に、おじいちゃんと呼ばれて逆に舞い上がる程、祐也の子供たちは可愛い。

哲哉てつやの子供と16も違うんだから、止めなさい」
「だって、ほたるちゃんのお母さんは、18違うのよ?」
「それはそれ! はい、入学式の会場に私たちは移動しよう」
「えー! 萌え萌えしたい~!」
「祐次が、彼女を連れてきたらにしなさい」

 ため息をつき、引っ張っていく寛爾だった。
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