君のことを本当に……?

刹那玻璃

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《伏見》

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 お祭りを楽しむ為に食べ物のブースや、子供が大好きな射的や輪投げのブースもあり、一番奥のブースである風遊ふゆや和菓子のブースまで来ることはなく、冷やかしのお客だけかと思ったら、熱心なお客が集まってきていた。

「風遊伯母さんのテディベア、世界的にも有名なの。元々ヴィヴィ姉さんがテディベアが好きで、日本のテディベアのイベントに隠れて行った時に、二人は知り合ったんですって。風遊伯母さん、英語が堪能でしょ? で、仲良くなったのよ」

 葵衣あおいは自慢げである。

「え? じゃぁ、ヴィヴィお姉ちゃんとウェインお兄ちゃんは?」
「幼馴染み。で、ウェインお兄ちゃんのお母さんと雛菊ひなぎく姉さん、ほたるお姉ちゃんが姉妹」
「……美人姉妹ですね! 確か、ウェインお兄ちゃんはお母様に似ているって、聞いたことがあります。でも、余りマスメディアに出てこられないですね?」
「ガラハッド伯父さんが『妻は私の女神! 絶対見せたくない!』ですって。あ、この間来られた時の写真見る?」

 スマホを操作し、ウェインとツーショットの写真を見せる。

「美人、素敵です!」
「でしょう? 白魔女なんですって。地域のハーブを扱うお医者さんなのよ」

 そう二人が話す横では、

「きゃぁぁ! 『fuyu and vivi』のテディベア!」
「『アキト・アンジュ』のベアも可愛いわ!」

風遊たちのテディベアは本当にファンが多いらしい。
 そして、標野しめののお菓子は、地元の人たちが代わる代わる買いに来る。

嵐山らんざんさんも、サキ兄ちゃんもシィ兄ちゃんよう来たなぁ」
「楽しみにしとったで、あぁ、茜ちゃんらもよう来たなぁ。きいっちゃんやはるちゃんと一緒に穐斗あきとたちが向こうでおるよ?」
「本当? おじいちゃん! じいじ! 行ってくる!」

 3人兄弟は、顔見知りのじいちゃんと話しながら出ていく。

「観月ちゃん」
「は、はい」

 振り返ると、標野と瓜二つの青年、そしてその両親らしい夫婦が立っている。

「観月ちゃん。紹介するわ。あての両親の嵐山、そして櫻子さくらこ。で、あての双子の兄の紫野むらさきの。で、媛とおるんがサキの嫁はんの雛菊や。醍醐があてらの8歳下の弟なんや」
「は、初めまして、観月です。よろしくお願い致します。えと、お父さんの……」
「幼馴染みや。嵯峨が今月末に神前式をして、夏休みに披露宴と一月家族旅行に行くんや言うてたわ。紫野……サキて読んでくれるかな?」
「サキお兄ちゃんですか? お父さん、夏休みに家族旅行ですか? えぇぇ? お父さん、忙しくないんですか? それに、お父さんお仕事休むなら、ゆっくりした方がいいと思うのです……」

 義理の父親の体を心配する観月に、嵐山と櫻子が顔を見合わせる。

「嵯峨は暇があったら仕事ばかりや。休み言うたら人間ドックに入って検査位や」
「柚月はんと観月はんとのんびりしたいて、喜んどりましたわ」
「本当ですか? じゃぁ、手を繋いでお出掛けしたいです。あ、お父さんとお母さんが二人きりの時がよかったら……」
「多分、それはほぼないと思うわ……」

 紫野は呟く。
 飛行機の中で、散々娘を自慢していた嵯峨である。
 かなり溺愛……鬱陶しい程の過保護の父親になるはずである。

 ちなみに、毎年このお祭りに来るのがほぼ休暇と言ってもいい嵯峨は、婚約者の柚月と人のまばらな祭り会場で挨拶回りをしている。

「久しぶりやな。嵯峨。綺麗な人を連れとるが……」
「あぁ、おはようございます! 今度、結婚するんです。婚約者の柚月ゆづきさんです。そして、風遊さんのブースにいる観月は娘です。彼女も娘も可愛いでしょう?」
「おぉ、嵯峨が惚気よらい?」
「おめでとう。結婚式は別のところでするんよなぁ?」
「いやぁ……もしできたら、式場は神前式で、披露宴は出来たら、2回したいんですよね。一回はここで」

 のろけついでに爆弾投下に、

「えっ? えぇぇ! 嵯峨さん? 披露宴2回?」
「えぇ、京都で一回、ここで……駄目でしょうか?」
「……あ、アットホームな式でしたら……」
「そのつもりです! 仕事関係も極力呼びませんし、友人知人と、この地域の人たちだけです。それに、どこに住むか考えないといけませんよね……」
「そうですね……あの街にいられませんし、嵯峨さんのお仕事もありますし……」

 はっ!

思い至った嵯峨は、

「そうですね……。それに、観月も学校がありますし……私は個人事務所と言うか独立してもいいのですが……」
「私は、慣れるまで……」
「観月に聞きましょうか? 私たちだけで決めたらダメですね。観月の為に」

夫婦は微笑む。



 午前中と言うよりも、お客が増えるお昼過ぎまで店番をしていた観月は、テディベアや小物を売って、第2弾を運んできた風遊から小物を預かり並べていると、

「観月ちゃんと葵衣ちゃんは交代せないかんねぇ?」
「あ、でも、お客さん……」
「確か、嵯峨が観月ちゃんと柚月さんと一緒に、いきたい場所があるて言うてたわ……手の空いとる、麒一郎きいちろうおいはんたちと」

サキがよしよしと頭を撫でる。

「いっといでや」
「あぁ、観月」

 一回り回ってきた嵯峨は、わたあめや大福餅に蒸しパン、串焼き、焼肉の皿などどっさり手にしている。

「観月。どれがいいですか? ついつい選んでいたら……」
「もう……嵯峨さん? 買いすぎですよ? それにお金は……」
「あ、それは、祐也ゆうやに預けとるんや。チケットをまとめ買いしとるさかいに」

 標野は微笑む。

「やけど、嵯峨が、そのわたあめを買う姿見たかったわ……」
「昔のキャラは解る。でも、最近のキャラはようわからん……いかんかったら買い換えに……」
「いえ、大好きです! でも、風船……?」
「これは……やっぱり駄目ですかね……いえ、二つあるのは、一つはこれから行く所にと思って……」
「いえっ! 私、風船大好きなんです……お母さんに聞いたのかなぁと思って」

 えへへと照れ笑う。

「お父さんありがとう」
「じゃぁ、食べて、少ししたら出掛けましょうか」
「はい!」

 ヘッドドレスとエプロンをはずすと、シンプルだが上品なワンピース姿になった観月に、思い出したようにプチネックレスをつける。

「あの、じゃぁ、お父さんたちと行ってきます」
「あぁ、いっといでや?」

 風船を手にして、手を振って両親と並んで去っていった観月を見送り、

「観月ちゃんは大変やなぁ……」

と標野は呟いたのだった。
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