48 / 50
《決意》……家族として
しおりを挟む
手当てを終えた穐斗は、両親と醍醐の車で帰っていく。
その後ろを追いかけ、走っていく。
盆地であるこの町は周囲が山々があり、日が沈むのが少し早く、その代わりと言うように、山並みを赤く染める。
次第に暗くなるものの、先の車を追いかけて戻っていく。
そして、学校ではなく、その横を通り抜けていくのを、宇治が、
「どこに行くんかいな?」
「観月が待ってますよ。さっき、電話で連絡しておきました」
「観月が?」
「昨日は私たちと見たのですが、今日はおじいちゃんと見るんだとはしゃいでいましたよ」
「蛍……言うてたなぁ。タクシーの運転手はんも」
思い出す。
すると運転席の嵯峨が、ちらっと父を見て、
「えぇ。源氏蛍だけでなく平家蛍も見られます。昔、4人で行きませんでしたか? おとうはんが珍しく仕事がのうて、あてらも甚平はんを着せてもろて、おかあはんと」
「あぁ、行ったなぁ……でも、ちいそうて、弱々しかったなぁ……」
「ここは本当に昔から多いので有名だったそうですよ。で、それからも祐也くんや醍醐たちが、荒れた山を整備して川を綺麗にして、増やしていったんだそうです。今年は特に綺麗で……観月は目をキラキラさせて笑ってました。もうすぐですよ」
醍醐の車が停まっている隣に、停めた嵯峨は、
「薄暗いので気を付けて下さいね」
と、柚月を下ろし、そして父に手を差し出す。
「あ、あぁ……わぁぁ! な、何や?」
スゥッと横を通りすぎた小さい命に、目を見開く。
「おとうはん。源氏蛍やがな……」
「いや、それに驚いたんやない、あれや! そ、空の星なんか? 蛍か?」
「ここは結構空気が澄んでいるので、星も良く見えますが、森から降りてくるんですよ」
「おじいちゃん!」
テディベアを抱いた観月が駆け寄ってくる。
「おじいちゃん! こっち、一杯いるよ!」
「じいちゃん、気を付けて。足元暗いからさ」
少年から青年になりつつある、だが凛とした眼差しが印象的な少年が迎えに来る。
「あてはまだ若い!」
「あははは! じゃぁ、おっちゃんって呼ぼうか? あ、そっか、初めましてでした。俺は不知火祐次と言います。母を助けて戴いて、ありがとうございます。観月と同じ学校です」
「はぁぁ! あの不知火の息子か?……余り似とらんな? 体型もほっそりしとるし……」
「母に似てるんです。妹の方が父に似ていると思います。でも本当に、母をありがとうございます。先生のお陰です」
「それよりもものすごい剣幕で、あてに説教した柚月にお礼を言いなはれ。的確な判断のお陰や」
「まぁ……お父さん……」
頬を赤くする柚月に、宇治は笑う。
「あれは凄かったわ……ん?」
フワリフワリとほのかな灯りが、宇治の回りを舞う。
そして、肩にそっと留まった。
「……恋人を探しにいかんかいな……」
告げるが、蛍は留まったまま優しい光を放つ。
「何か、じいちゃんにまっとったよって言いよるんやろか?」
「あてを?……美園か? 伏見やろか……?」
宇治は手を伸ばし、そっとすくうようにすると、手のひらに乗っている命の灯火に囁く。
「心配せんでかまへん……傍におるさかいに。おいきや」
手の中でチカチカと光った蛍は小さな羽を広げ、川辺へと飛んでいき、他の蛍と紛れていった。
「……綺麗やなぁ……お墓の美園も伏見も見とるやろか?」
「……そうやなぁ……今年は一番綺麗よって、おかあはんは喜んではるやろ……」
「おじいちゃん。こっちこっち! 昨日一番綺麗だった場所。祐次くんと三人で見に行こう?」
「おとうはんらは?」
「二人で見てるもの」
いつの間にか手を繋ぎ、空や川辺を見ている両親を示し、祖父と手を繋ぎ歩き出した。
が、
「ウワッ! 観月! またこけよる!」
「そそっかしいと言うか、おっとり嬢はんやなぁ、おばあはんに似とるわ」
「ご、ごめんなさい」
転びかけた観月のもう片方の手を握り、祐次は笑う。
「じゃぁ、一緒に行くか」
祖父と孫たちは、良く見えるその場所まで歩いていくのだった。
その後ろを追いかけ、走っていく。
盆地であるこの町は周囲が山々があり、日が沈むのが少し早く、その代わりと言うように、山並みを赤く染める。
次第に暗くなるものの、先の車を追いかけて戻っていく。
そして、学校ではなく、その横を通り抜けていくのを、宇治が、
「どこに行くんかいな?」
「観月が待ってますよ。さっき、電話で連絡しておきました」
「観月が?」
「昨日は私たちと見たのですが、今日はおじいちゃんと見るんだとはしゃいでいましたよ」
「蛍……言うてたなぁ。タクシーの運転手はんも」
思い出す。
すると運転席の嵯峨が、ちらっと父を見て、
「えぇ。源氏蛍だけでなく平家蛍も見られます。昔、4人で行きませんでしたか? おとうはんが珍しく仕事がのうて、あてらも甚平はんを着せてもろて、おかあはんと」
「あぁ、行ったなぁ……でも、ちいそうて、弱々しかったなぁ……」
「ここは本当に昔から多いので有名だったそうですよ。で、それからも祐也くんや醍醐たちが、荒れた山を整備して川を綺麗にして、増やしていったんだそうです。今年は特に綺麗で……観月は目をキラキラさせて笑ってました。もうすぐですよ」
醍醐の車が停まっている隣に、停めた嵯峨は、
「薄暗いので気を付けて下さいね」
と、柚月を下ろし、そして父に手を差し出す。
「あ、あぁ……わぁぁ! な、何や?」
スゥッと横を通りすぎた小さい命に、目を見開く。
「おとうはん。源氏蛍やがな……」
「いや、それに驚いたんやない、あれや! そ、空の星なんか? 蛍か?」
「ここは結構空気が澄んでいるので、星も良く見えますが、森から降りてくるんですよ」
「おじいちゃん!」
テディベアを抱いた観月が駆け寄ってくる。
「おじいちゃん! こっち、一杯いるよ!」
「じいちゃん、気を付けて。足元暗いからさ」
少年から青年になりつつある、だが凛とした眼差しが印象的な少年が迎えに来る。
「あてはまだ若い!」
「あははは! じゃぁ、おっちゃんって呼ぼうか? あ、そっか、初めましてでした。俺は不知火祐次と言います。母を助けて戴いて、ありがとうございます。観月と同じ学校です」
「はぁぁ! あの不知火の息子か?……余り似とらんな? 体型もほっそりしとるし……」
「母に似てるんです。妹の方が父に似ていると思います。でも本当に、母をありがとうございます。先生のお陰です」
「それよりもものすごい剣幕で、あてに説教した柚月にお礼を言いなはれ。的確な判断のお陰や」
「まぁ……お父さん……」
頬を赤くする柚月に、宇治は笑う。
「あれは凄かったわ……ん?」
フワリフワリとほのかな灯りが、宇治の回りを舞う。
そして、肩にそっと留まった。
「……恋人を探しにいかんかいな……」
告げるが、蛍は留まったまま優しい光を放つ。
「何か、じいちゃんにまっとったよって言いよるんやろか?」
「あてを?……美園か? 伏見やろか……?」
宇治は手を伸ばし、そっとすくうようにすると、手のひらに乗っている命の灯火に囁く。
「心配せんでかまへん……傍におるさかいに。おいきや」
手の中でチカチカと光った蛍は小さな羽を広げ、川辺へと飛んでいき、他の蛍と紛れていった。
「……綺麗やなぁ……お墓の美園も伏見も見とるやろか?」
「……そうやなぁ……今年は一番綺麗よって、おかあはんは喜んではるやろ……」
「おじいちゃん。こっちこっち! 昨日一番綺麗だった場所。祐次くんと三人で見に行こう?」
「おとうはんらは?」
「二人で見てるもの」
いつの間にか手を繋ぎ、空や川辺を見ている両親を示し、祖父と手を繋ぎ歩き出した。
が、
「ウワッ! 観月! またこけよる!」
「そそっかしいと言うか、おっとり嬢はんやなぁ、おばあはんに似とるわ」
「ご、ごめんなさい」
転びかけた観月のもう片方の手を握り、祐次は笑う。
「じゃぁ、一緒に行くか」
祖父と孫たちは、良く見えるその場所まで歩いていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~
スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。
何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。
◇◆◇
作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。
DO NOT REPOST.
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる